出資法違反の疑いで、5月26日、強制捜査を受けた熱海の岡本ホテルグループの預託金商法は、およそ理屈に合わなかった。
元本保証で預託金は5年後に返還される。100万円から1000万円の預託金額に応じて宿泊ポイントが交付されるのだが、60~75%で買い取ってもらえる。その結果、会員は最大で約10%の利回りが期待できるというふれこみだった。これでは、あまりに条件が良過ぎる。
岡本ホテルグループは、熱海の岡本ホテルを中心に全国11か所で温泉旅館を経営している。今のシステムを確立したのは、2005年に会員制の「岡本倶楽部」を発足させてから。
会員は、宿泊ポイントを使って温泉めぐりをしてもいいし、利回り重視の金融商品と考えてもいいという売り込みだった。しかし、旅館業はそれほど儲かるものではない。
あっという間に11の温泉旅館をチェーン展開できたこと自体、旅館業が不振で"売り物"が数多く、構造不況業種であることの証明だった。
では、不況の温泉旅館を経営、10%もの利回りを会員に供与しながら旅館を次々に買収、業務を拡張できるのはなぜか。それほど優れた旅館運営のノウハウを持っているなら、預託金商法ではなく、もっと低利の銀行借り入れを起こせばいい。そうしないのは、預託金を利払いと経費に回す自転車操業に陥っているからではないか――。
今回の強制捜査は、その疑問に回答を与えるものだった。
捜査にあたっているのは警視庁組織犯罪対策四課を中心とする合同捜査本部。暴力団対策の部署が乗り出していることで明らかなように、岡本倶楽部に集められた預託金の一部は、暴力団とその周辺企業に流れた可能性が高い。それは、岡本ホテルグループのオーナーの"属性"に因るものだった。
「オーナーは、母体である岡本ホテルシステムズ元会長。金融を中心にいろんな事業に手を出しているが、若い時から山口組系組織との関係が深く、暴力団周辺者と位置付けられている。岡本倶楽部が集めたのは約200億円。
犯罪資金が流れ込んだこともあるし、集められたカネが暴力団系金融業者に貸し出されたこともある。そういう意味ではホテル事業が、"ろ過装置"として使われたわけで、全容解明が不可欠だ」(警視庁捜査関係者)
その前兆はあった。今年3月に摘発されたトランスデジタル事件――。ジャスダックに上場していた同社は、「増資マフィア」と呼ばれる連中のおもちゃにされたあげく、増資資金を反社会的勢力に吸い上げられて、昨年8月に倒産した。
警視庁は、民事再生法違反で社長の後藤幸英、副社長の鈴木康平、顧問の峯岸一、金融ブローカーの黒木正博、食品会社オーナーの野呂周介らを逮捕起訴した。
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