目の前で苦しんでるのに“400億円の善意”渡せないワケ

2011.03.28


善意の義援金は異例のスピードで集まっているのだが…【拡大】

 東日本大震災の被災者に向け、全国からこれまで400億円超の義援金が日本赤十字社(東京)に寄せられた。ところが被害の全容が把握できないため、配分の見通しが立っていないことが、28日までに分かった。受け皿となる各県では被災者支援や遺体の処置に追われ、とても手が回らない状況なのだ。

 日赤や「赤い羽根共同募金」で知られる中央共同募金会などに集まった義援金は、被災した都道府県が設置する「義援金配分委員会」に全額渡される。委員会には市町村や日赤なども加わって分配対象や金額を検討し、被災者に行き渡るようにするという。

 95年の阪神・淡路大震災では、発生2週間で日赤に義援金約164億円が集まった。これに対し、東日本大震災では25日までに約401億円もの善意が寄せられた。阪神・淡路を2倍以上も上回るペースだ。

 ところが、今回の震災後、義援金の受け皿となる配分委員会を立ち上げた自治体は、まだない。被災の全容が分からず、配分を決められないためだ。宮城県庁の担当者がこう訴える。

 「なるべく早く被災者の元に届けたいが、公平に渡すことも重要。把握できない被害もあり、今分かっている方々だけに渡すのは難しいことも理解してほしい」

 被災地が広範囲にわたっていることも問題を複雑にしている。08年6月の岩手・宮城内陸地震では、両県がそれぞれ委員会を立ち上げ、義援金は被害状況に応じて両委員会に渡された。ところが、今回は被害が甚大な岩手、宮城、福島の3県以外にも、被災者が複数の道県にまたがっている。茨城、千葉でも避難所生活をおくる被災者が多数いるだけに、宮城県庁の関係者も「08年のケースはまったく参考にならない」と頭を抱えた。

 ある自治体の担当者が明かした。

 「被害が甚大な岩手、宮城、福島の3県が協力、調整してまず委員会を立ち上げる。そこへ他県の自治体が加わり、義援金を受け取る方向で調整が進められています」

 阪神・淡路大震災では最終的に1793億円の義援金が集まり、被災状況によって1世帯当たり平均で約40万円が配分された。東日本大震災ではどうなるのか。

 

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