March 24, 2011

「それでも原発は必要」と思われますか?

 被災地の人は言うまでもありませんが、計画停電の影響で、東日本の人々も不便な生活を強いられていることと思います。

 そのためか、「原発が止まったから電力不足になった」と勘違いしている人が結構いるのではないでしょうか。

 「原発停止で電力不足」は間違いです。今回の計画停電は、原発だけでなく、火力発電所(広野・常陸那珂・鹿島など)もストップしているためなのです。

 では、中長期的に見るとどうなのでしょうか? やはり原発をやめると電力が足りなくなるのでしょうか?

 それも間違いです。

 次の4点で、順に説明していきます。

【1】 2003年、原発が止まった夏

 2003年は、事故や不祥事続きの点検のため、東京電力が保有する17基の原子力発電所すべてが、長期にわたって停止しました。

  • 福島第一原発
     1号機( 46万キロワット) 停止
     2号機( 78万4,000キロワット) 停止
     3号機( 78万4,000キロワット) 停止
     4号機( 78万4,000キロワット) 停止
     5号機( 78万4,000キロワット) 停止
     6号機(110万キロワット) 停止
  • 福島第二原発
     1号機(110万キロワット) 停止
     2号機(110万キロワット) 停止
     3号機(110万キロワット) 停止
     4号機(110万キロワット) 停止
  • 柏崎刈羽原発
     1号機(110万キロワット) 停止
     2号機(110万キロワット) 停止
     3号機(110万キロワット) 停止
     4号機(110万キロワット) 停止
     5号機(110万キロワット) 停止
     6号機(135万6,000キロワット) 停止
     7号機(135万6,000キロワット) 停止

 つまり、その期間は、東京電力では原子力発電が全く行われていなかったのです。このとき、大規模な停電や、生産・生活に多大な影響がある計画停電はありませんでした。夏のピーク電力でさえ乗り切っています。関東の電力は、原発なしでも賄えるということです。

【2】 「原発が3分の1」のカラクリ

 よく「電力の3分の1は原子力でまかなわれている」という人がいます。原発を停止すべきだと言うと、「原始時代に戻れ」と言われます。原子力時代と原始時代とだったら、原始時代も悪くはないかな、なんちゃって。

 「原発が3分の1」っていうけど、実際はどうなんでしょうか?

 京大の原子力研究者・小出裕章先生のコメントを引用します。

 原発は我が国の発電の30%を占めており、原発抜きでは電力不足に陥るといわれます。日本の発電設備の量と実績を比較した図があります。発電設備の18%を占める原発は構造上フル稼働しかできないため、70%が稼働していますが、水力は20%火力は48%の稼働でしかありません。原発を止めても火力発電の稼働率を70%にあげればまかなうことが可能です。

 また小出先生は、やはり「今回の災害で電力供給に支障をきたしたのは福島原発だけでなく、火力発電所が停止したことも原因」と述べています。

【3】 「原発不要」は東電も知っている

 「原発を止めて再生可能エネルギーにせよ」という意見には、「非現実的だ」という人がたくさんいます。それなら水道から放射能が検出される「現実」を直視したほうがいいと思うのですが、それはさておき。

 はたして再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマスなど)で電力はどのぐらいまかなえるのでしょうか?

 ミュージシャンの小林武史氏が、未来バンクの田中優さんと興味深い対談をしています。

田中 (前略)東京電力が東京大学に委託して、犬吠埼に風力発電を建てたらどれだけ発電するかを調べたそうです。そうしたら出てきたデータが「東京電力がまかなっている電気が全部作れます」というものだった。犬吠埼の沖合だけで、だよ。
小林 すごい。
田中 そうしたら東京電力は「そのデータは公表しないでください」と言った。だけど、こっそりとインターネットに公表されていたのを僕は検索して見つけてさ。

*エコレゾ ウェブ
  http://www.eco-reso.jp/index.php

 つまり東電自身が、電力をすべて再生可能エネルギーでまかなえることを知っているのです。知ってて隠すのは、今に始まったことではないようです。

【4】 無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ

 では、どうすればいいか。これは「環境エネルギー政策研究所(ISEP)」の適確な提言を見てみましょう。

短期的な電力需給
 今春から夏の需要ピーク時(1日最大電力予想=発電端で5,755万kW)にて、とくに需要側への適切な措置〜特に大口需要家との需給調整契約の戦略的活用〜を行えば、短期的にも無計画な「計画停電」を実施しなくても、十分に対応可能であることが明らかになった。

中長期的なエネルギーシフト
 地域分散型の自然エネルギーを中心とするエネルギー政策に転換すれば、短期的には震災復興経済の柱となるだけでなく、中長期的には自然エネルギーを2020年に電力の20%・2050年には100%を目指し、電力安定供給・エネルギー自給・温暖化対策の柱とする大胆かつ戦略的なエネルギーシフトができる。

*レポート『「無計画停電」から「戦略的エネルギーシフト」への提言』
 http://www.isep.or.jp/images/press/ISEP_Strategy110323.pdf

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