ICRP(国際放射線防護委員会)ってご存知でしょうか。

実質的にNPO団体ですが、その勧告文の影響は絶大で、日本の法律IAEAの基本安全基準の基準ともなっています。日本以外にも主要国は法律の準拠としています。いわば世界基準なんです。

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テレビでこういったグラフを見たことがあると思いますが、「一般市民の線量限度は1mSv/年」というのは、ICRPの勧告文と全く同じです(ちなみにSvというのもICRPが定義した単位です)。「一年に浴びていい量の何分の一だから安心してください」という類の文章は、全てICRPの勧告文に基づいていたわけですね。

"ICRPの勧告"の欠陥

しかしやっぱりというかなんというか・・・このICRPの勧告にも欠陥があります。

最近でもアメリカが湾岸戦争やイラク戦争で劣化ウラン弾を用いました。この原爆以来の残虐非道な爆弾を落とすことを「正当」たらしめたのはICRPの勧告です。どうです、キナくさいでしょ?もちろんアメリカはICRPの重要なスポンサーです。

何が欠陥なのかは、琉球大学の矢ヶ崎克馬教授の報告書「内部被曝についての考察」に詳しいです。

僕も素人なので、わかる範囲でまとめさせていただきます。簡潔に言うと、内部被曝と外部被曝がごっちゃになっているのが問題です。

無題

上のは同報告書を元に僕がまとめた(トレースした?)ものです。

実際に放射性物質が、内部被曝によりα線を放出した場合が左です。α線は半径40マイクロメートルまで飛びます。この間に420万eVものエネルギーを放出していくのですから、細胞は極小範囲でものすごい影響を受けます。

一方で、ICRPモデルでは局所的な影響を認めません。必ず臓器・組織単位になります。ですから、"α線がその周囲数μm"を"非常に甚大に"影響を及ぼしたとしても、ICRPモデルでは1kg中にどれだけの線量が出たか、しか考えません。

これはX線のようなγ線を・一様に・照射する場合には適用できますが(図の右)、内部被曝のα線の影響を考える場合では不十分なのがわかりますでしょうか。1kgの臓器で同じ量のエネルギーを受けた場合。質量辺りのエネルギー(eV/kg)を比べると、"ICRPモデル"より"現実の被曝モデルの方"が、なんと10億倍も高くなります。

 

この差が何を生み出すのか?

現実とICRPのモデルでは、被曝による線量は変わりませんが、被曝の"密度"が変わることがわかりました。

放射線の影響は主にイオン化です。放射線が分子にエネルギーを与え、イオン化を促すのです。このイオン化作用はDNAを傷つけます。

傷つけられたDNAは、生物学的・物理学的に修復されます。「放射線はゆっくり浴びれば問題ない」とたびたびテレビで聞きますが、これはDNA修復作用を考えてのことなんですね(図右)

無題

では局所的に、あるいは急速に大量の放射線を浴びたら、どうなるか?(図左)DNAは高密度で損傷を受けます。そしてDNAの修復が起きるのですが、人体はこのような緊急事態に対応仕切れません。このとき同様に傷つけられたDNAとくっついて、異常なDNAが発現する危険性があります。

このDNAが増殖した場合、ガンのもととなることがあるのです。

ICRPの盲点"低線量被曝の危険性"

さて、この記事の最初の画像を見てどう思ったでしょうか。あなたはきっと「大量に被曝すると危ないんだな」と思ったでしょう。これはある意味で正しく、ある意味で正しくありません。"少量の被曝だからこそ"悪影響を及ぼす場合があるからです。

被曝し、分子を傷つけられた細胞は、二通りの反応を起こします。損傷が小さい場合は、さきほどのように修復することで生き延びようとします。一方で大量の放射能で著しく損傷した場合、細胞はアポトーシス(細胞死)を起こします。ガンになるくらいなら死んでしまえ、という細胞の自殺です。前者の場合で、さきほど述べたように異常再結合が起こり、発ガンを引き起こすんです。

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参考:上図はこちらからの引用(P.11)  

さて、微弱にα粒子を放出し続ける放射性物質には、劣化ウランがあります。先ほどアメリカで劣化ウラン弾が用いられた、と書きました。気になるのはWHOの発言です。"劣化ウランはほんの弱い放射能だから、大量の(数グラムの程度の)劣化ウランの埃を吸い込まないならば、被曝したグループで、検出できるだけの肺癌の危険は高まらないだろう"とWHOは見解をしめし、劣化ウラン弾の使用を正当としました。これはICRPの基準を根拠とした意見です。しかし現実はどうでしょうか?現場では奇形児・白血病の発症が増加し、発ガン率が10倍にもなったのです

そして、福島原発の3号機には高濃度のウラン燃料があります。

国、東電、全てのメディアがICRPの勧告を基準にしている

何より恐ろしいのは、全てのメディア、そして国、東電が"ICRPの勧告を元に安全基準を語っている"ことなんです。考えてみれば、どのテレビでも口を揃えて同じことを言いますよね。X線より小さいから・・・1年に浴びていい値より小さいから・・・だから安心しろと言うわけですけど、これらの大元は全てICRPだったんです。

あるニュースサイトで、アメリカの教授までもが日本の専門家と全く同じ回答をしているのには驚きました。政府が口封じしている、というよりはICRPの影響が絶大なのが理由だったのかもしれませんね。

ではICRPの勧告が間違っていたら・・・?

これ以上は頭が痛くなってきたので僕はもう考えません。

ブラックユーモア

この"不完全な"ICRPの勧告にもっとも忠実な国はどこだと思いますか?

「クリーンな爆弾」として原爆を落とし、方々を劣化ウラン弾で汚染したアメリカでしょうか?原発回帰の流れの強いヨーロッパでしょうか?答えは全く逆で、原爆を落とされた日本の方なんです。日本は「ICRPの最優等生」と、国際的に評価されているんです。

僕はこれを聞いたとき、吹き出してしまいました。全く馬鹿げた、皮肉な話だと思いませんか?