[事件]ニュース トピック:東日本大震災
【東日本大震災】「冷たい所から出してあげたい」持ち主不在のランドセル
2011.3.21 07:51
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もう声を張り上げて名前を呼ぶことはない。それでも必死にがれきをかき分ける。母親(43)は息子の姿を捜し続けていた。東日本大震災から1週間が過ぎた18日。「だめなことは分かっている。早く冷たいところから出して抱き締めたい」
津波の被害が大きかった宮城県石巻市立大川小学校のすぐ近く。小3の長男(9)がまだ見つからないという。108人いる大川小の全校児童のうち、生存が確認されたのは24人だけ。2階建ての校舎は崩れて土砂が流れ込み、窓枠にはがれきが突き刺さったままだ。
学校はもはや避難所の役割を果たすことができず、遺体を運び込む場所もない。屋根のない高台のアスファルトの路上が、仮の安置所になっていた。ブルーシートがかけられた遺体のそばに、10から20ほどの色とりどりのランドセルが並ぶ。
「今日も見つからなかった」。別の母親(46)は夕方5時に捜索が終わると、長男(11)の青いランドセルを背負って力なく帰っていった。「学校は避難所にもなる安全な場所だと思っていたのに、何でこんなことに…」。地震発生時は石巻市内に働きに出ていた。子どものそばにいてやれなかったことを悔やむ。「いつも親を困らせる子どもでした。変わった子で、虫に詳しいから学校では『虫博士』って呼ばれていたみたいです」
ほかにも教科書やノート、学校の遠足で記念撮影したとみられる写真…。「見つけたよ。もう、名前のところが消えかけてるけど」。小1と小2の孫娘2人が見つかっていない遠藤喜一郎さん(63)は、びしょびしょにぬれたノートを手に取った。小4の妹(10)を捜していた高1の兄(16)は「ランドセルと体操服を見つけました」と持ち帰っていった。
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