福島第1も、複数の緊急冷却装置や多数の非常用電源を備え、原子炉を多重的に守っていた。しかし、海にすべて依存する冷却システムという基本構造が損なわれると、たちまち機能不全に陥った。
同原発の建設にかかわった専門家が「冷却塔があれば」と漏らしたという話を人づてに聞いた。仮定の話が許されるなら、福島第1の原子炉のいくつかを空冷にしていたら、事態は違ったかもしれない。もっとも、それは選択の外だったろう。原子炉を効率的・経済的に冷やせる海を前に立地しながら、わざわざ巨大な冷却塔を建てる必要を、事業者も規制官庁も考えなかったに違いない。
冷却が日本の全原発に共通する構造的な弱点であることが、今回の事故でわかった。重要なのは、これをどう生かしていくかだ。
今回の原発事故では「想定外」という言葉が繰り返し使われている。しかし、想定できなかったということは、防災や原子力安全にかかわる行政や事業者、科学者や技術者の能力不足を意味する。原発が津波に弱いのではないかとの指摘も、これまでなかったわけではない。誠実に耳を傾け、想定してみる意欲・能力に欠けていただけだ。
宮城県沖では、繰り返し地震が起きることが知られており、政府の地震調査研究推進本部も30年以内に99%の確率で発生を予測していた。ただし、それはマグニチュード(M)7級であり、東日本大震災を引き起こしたM9の巨大地震ではなかった。
M9巨大地震が、予測の範囲にあったM7級地震を包含するものなのか、別物なのか、地震の本体についての解明はこれから進むだろう。とりあえず現時点で言えば、政府予測はまったくはずれたと断じざるを得ない。むしろ、この海域で起きうる地震の大きさを過小評価し、必要十分な防災対策を講じる妨げになった恐れがある。
日本の地震学は阪神大震災に有効な警告を出せず、今回も世間の目をミスリードした。「想定外」は責任の免罪符にはならない。
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