実際に壊れるまでSSDに書き込み続けて、SSDの限界を調べてみよう。

仕様 SSD耐久テストのプログラムについて
第1回 MLCの書き込み回数はどれぐらいなのか テスト結果
第2回 空き容量はウェアレベリングに影響するのか テスト結果
第3回 Win7のTrimコマンドは寿命を延ばすのか 最新記事
第4回 東芝製SSDは壊れる前にリードオンリーになるのか テスト結果
第5回 安物SSDは短命なのか 最新記事

第4回 東芝製SSDは壊れる前にリードオンリーになるのか

2010.4.7
東芝製SSDは物理的に壊れるのを防いでくれるらしい。書き込み続けることで徐々に予備領域が失われていくが、これがSSDの実容量に影響を与える前にリードオンリーにして(以降の書き込みを禁止して)、ファイルが破壊されるのを防ぐ仕組みだ。


右側2列が予備領域。これがあるからといって、SSDの実容量を超えて保存できるわけではなく、ウェアレベリングを分散させるために使用される。製造不良による破損が、この予備領域の範囲内であれば正常品として出荷されるため、同じ型のSSDでも予備領域の大きさが若干異なるようだ。


書き込んでいるうちに1箇所が壊れた。しかし予備領域があるので実容量に影響はないし、ファイルが破損することもない。


2箇所目も壊れた。これ以上壊れると実容量に影響を与えるので、リードオンリーにしてファイルを保護することにした。恐らく初期不良のようなケースは防げないだろうが、この仕組みがあれば安心して使い続けられそうだ。


べつに東芝を疑っているとか信用していないとかではないが、本当にリードオンリーになって破壊を防ぐのか調べてみよう。使用するのはI-O DATA SSDN-ST64Hだ。



2010.4.20
1TBに到達した。


現在1034回、合計60.2TB書き込めた。


CrystalDiskInfoで見てみたが、メディア消耗指標(E9)や利用可能な予備領域(E8)はわからないようだ。壊れる前にリードオンリーになるんだから、寿命なんて気にしなくて良いということなんだろうか。それとも結構早めにリードオンリーになってしまったとき、本当はまだ書き込めるという事実を隠すためなんだろうか。



2010.5.2
2TBに到達した。


現在2052回、合計119.5TB書き込めた。



2010.5.15
3TBに到達した。

20100515-01.jpg (26298 バイト)
現在3084回、合計179.6TB書き込めた。



2010.5.27
4TBに到達した。

20100527-01.jpg (26405 バイト)
現在4113回、合計239.5TB書き込めた。



2010.6.9
5TBに到達した。


現在5127回、合計298.5TB書き込めた。



2010.6.21
6TBに到達した。


現在6152回、合計358.2TB書き込めた。



2010.7.2
7TBに到達した。


現在7173回、合計417.6TB書き込めた。



2010.7.14
8TBに到達した。


現在8218回、合計478.5TB書き込めた。



2010.7.26
9TBに到達した。


現在9243回、合計538.2TB書き込めた。


リードエラーレート(01)が100から98に減っていた。



2010.8.6
10TBに到達した。


現在10244回、合計596.5TB書き込めた。



2010.8.18
11TBに到達した。


現在11303回、合計658.1TB書き込めた。


リードエラーレート(01)の最悪値が98から56へ急激に下がった。現在値のほうは上がったり下がったりするようだ。そろそろ壊れるのを期待したいところだが、書き込み速度は211.2GB/hで快適そのもの。



2010.8.22
リードエラーレートが下がっていく。


リードエラーレート(01)の急降下が止まらない。



2010.8.23
リードエラーレートが1になったが……。


今日の朝、リードエラーレート(01)の最悪値が1になっていた。夜までには壊れるかなと思っていたのだが、今でも元気いっぱい書き込んでいる(211.5GB/h)。現在値のほうは、37まで上がったり1まで下がったりと、なんとなく馬鹿にされてるような気がしないでもない。これはあまり寿命には関係ないんだろうか。



2010.8.29
12TBに到達した。


現在12295回、合計715.8TB書き込めた。今回も見事にS.M.A.R.T.に騙されてしまったが、もうリードエラーレート(01)なんて信用しないことにした。



2010.9.10
13TBに到達した。


現在13315回、合計775.2TB書き込めた。



2010.9.21
14TBに到達した。


現在14338回、合計834.8TB書き込めた。


数日前から、リードエラーレート(01)の現在値に動きがない。ずっと1のまま固定されているようだ。



2010.10.4
SSDが壊れてしまった。


妙にファンが静かだなと思ったら再起動されていた。しかもOSが見つからないようで、起動できずに止まっていた。何度か再起動してみたが、一瞬だけOSが起動しそうになって止まってしまう。少々疑問に思いながらも、これがリードオンリーの動作なんだと納得し、USBドライブにして他のPCに接続したのだが、それは想像とは大きく異なった世界だった……。


BIOSやデバイスマネージャーではSSDを認識しているのだが、エクスプローラーではドライブ名までしか表示されず(D:とE:がSSDN)、SSDの中が見られなくなっている。確かにフォルダーやファイルが見えなければ、書き込むことが不可能になるわけだが、これではリードオンリーではなくてアクセス拒否のような気がする。

テストを始める前に想像していたのは、ファイルの作成や上書きをするとエラーが表示され、書き込みは一切できなくなるが、USBメモリへのコピーやファイルの表示など、読み込みは問題なくできるというものだった。つまりSSDが物理的に壊れる前に、ROMのようになってファイルを保護してくれるのだと思っていた。


CrystalDiskInfoのほうは正常に表示されているが、不明(A9、AA、AF)に変化があった。朝見たとき下がり始めていたので(どれも90以上だった)、夜になったら記事にしようかと思っていたら、そのまま壊れてしまったようだ。とくに不明(AA)が19まで急降下している。この3つは初期値が100だが、少しでも下がり始めたら注意したほうがいいんだろうか。それにしても左上の「正常」が輝いて見える。


SSDの中身が見えなくなってしまったので、どれぐらい書き込めたのかわからなくなってしまった。仕方ないので朝のバックアップのを記録として残しておく。15197回、合計884.8TB。ちなみにCrystalDiskInfoの不明(A9、AA、AF)が下がり始めたのは、860TBを超えたあたりだった。

残念ながら15TB到達ならず、Trimコマンド有効なX25-Vに負けてしまった。東芝はTrimコマンドがなくても性能に自信があると言っていたので、こちらは無効になっている。X25-Vには負けたが、この世代のSSDが3000〜5000回という寿命の中、3〜5倍の15197回は文句なしの耐久力だと思う。


XPのほうに接続してみたら、懐かしいメッセージが表示された。BitMapというファイルは無かったような気がするが、正常ではないのは確かだ。Win7と同じくエクスプローラーにドライブが表示されたので、中を見ようと思ってクリックしたら応答がなくなり、タスクバーが初期化されてサウンドデバイスが消えてドライブも外せなくなって大騒ぎだった。


Win7ではディスクの管理で応答がなくなってしまったが、XPでは普通に表示された。冗談半分にOSが入っているD:をフォーマットしてみたら、動き出してしまった。もしかしてまだ書き込めるのかと思って待ってみたが、最後にエラーが表示されてフォーマット失敗。どうやら本当に書き込めないようだ。

とにかく疑問がいっぱいな終わり方だ。リードオンリーへの切り替えタイミングが間違っていたのか、使えるはずだった予備領域に問題でもあったのか、まったく別なところが壊れて中身が見られないだけなのか、東芝に送って中身を取り出してもらうため見えなくしてるのか、単なる個体差不良なのか。

この結果は東芝が想定していたものと一致しているのだろうか。どう考えてもリードオンリーではなくて、何かが壊れたとしか思えない。それにしても884.8TBも書き込めて故障となると、なんだか悲しくなってくる。リードオンリーが見たかったのに、こんな終わり方なら安い他社製SSDでも同じだった。いったい今まで何してたんだろうか。



2010.10.5
リードオンリーについて問い合わせ中。



2010.10.6
Puppy Linuxで調べてみた。


少々マウントに時間がかかったが、無事にSSDの中身を見ることができた。ファイルは正常なようで、表示させても壊れているものはなかった。試しに他の正常なSSDにコピーしてみたが、これも問題なく処理を終えた。どうやら本当にリードオンリーになって、ファイルを保護しているようだ。


肝心のSSD耐久テストの結果も取り出せた。15197回、合計886.1TB。こうしてみると、最後までほぼ同じ速度(211.2GB/h)で書き込んでいたことがわかる。速度的な劣化がないまま、突然リードオンリーに切り替わったのだろうか。1分ごとにログを保存しているが、こちらも破損もなく全て正常に書き込まれていた。


SSDをマウントするときに、リードオンリーの警告が表示された。やっぱりこの状態が正常なリードオンリーなんだろうかと思ったが、何度かマウント/アンマウントを繰り返したところ、警告が表示されないこともあった。


リードオンリーの警告が出たときは、当然ながらファイルは書き込めなかった。


警告が出なかったときはファイルが作成できたので、もしかして書き込めるのかと思ってアンマウントし、再びマウントしたら綺麗さっぱり消えていた。このときエラーらしきものは何も表示されなかったので、やっぱりSSDそのものがリードオンリーになっているようだ(SATA接続でも確認)。いろいろ調べた結果から考えると、リードオンリーは正常なのかもしれない。

結論は東芝からの返信を待ってからにしよう。



2010.10.7
Puppy LinuxのPuddを使ってSSD全体をコピーしてみた。


昨日の夜から始めて今日の朝には終わっていたが、問題なくコピーできただろうか。コピー先のSSDを接続して電源を入れてみると、エラーが表示されることなく起動できた。そうするとリードオンリーになったSSDは、書き込みができないせいで起動失敗したんだろうか。原因はよくわからないが、とりあえず復旧可能なことは確認できた。

チェックディスクをしてみたが、とくにファイルが破損している様子はなかった。念のためUSBドライブにして他のOSでも確認したが、XPでもエラーが表示されることなく認識できたし、Puppy Linuxでも素早くマウント/アンマウントできていた。


バイナリで見てみたら、SSD全体に書き込んだ回数が0x0000になっていた。昨日は最新のログしかコピーしなかったので、データが抜けてる部分は朝のバックアップ側を読み込んでしまったが、ここだけ1つ前のログを参照して、15219回、合計886.1TBに訂正。何かの間違いで初期値に戻る可能性は低いので、上書きするときに失敗したんだろうか。


リードオンリーに切り替わる瞬間に書き込んだファイルは、いったいどうなるんだろうか。一番最後に書き込んだと思われるファイルを開いてみたが、全部0になっていた(ファイルは壊れていない)。本来ならば何らかの数字が入っているはずだが、データの書き込みを終えないままリードオンリーになったのだろうか。

まだ書き込まれずにキャッシュに残っていたものは、恐らくそのまま破棄されたと思われる。このため複数のファイルで構成されるデータは、整合性が失われるかもしれない。運悪くOSの重要なファイルがそうなったときは、もう少し違う結果になった可能性もある。流石にこれを防ぐのは不可能だろうから仕方ない。

まだ東芝からの返信がない。



2010.11.10
1ヶ月待ってみたが、東芝から返信はなかった。

先月の5日、東芝にリードオンリーについて聞いてみたのだが、残念ながら一切答えてくれなかった(ちなみにこの返信は恐ろしいほど速かった)。問い合わせフォームに個人・企業という区分があったので、個人でも何らかの対応をしてもらえるのかなと思ったら、購入先窓口に相談するよう言われてしまった。

もちろんそれは当然の対応ではあるが、I-O DATAのサイトを見ても、製品仕様にはリードオンリーについて一切書かれておらず、こういった情報は伝わっていないような気がする。

仕方ないのでI-O DATAに聞いてみたが、翌日の6日に返信があった。まずは「Webサイトやパッケージの仕様にない情報はわかりかねる」ということだった。確かにリードオンリーは製品仕様に含まれていないのだから、知らなくて当然だ。次に「寿命が尽きたのか故障なのかは判断致しかねる」とのこと。これも最後がどうなるのかなんて販売メーカーが知るわけもなく、まだまだ未知数なSSDなら当然の対応。

最後に「保証書に記載されていない状況については責を負いかねる」と。製品としてはリードオンリーは保証されていないのだから、リードオンリーにならずにファイルが破壊されてしまっても、I-O DATAは一切の責任を負わない。これも当然のこと。これらはI-O DATAに限らず、販売している全メーカーが同じことを言うだろう。

再び東芝に問い合わせたが(6日と9日)、返信がないまま1ヶ月が過ぎてしまったので、残念ながらリードオンリーの真実は謎のまま終わることに……。

1日あたりの書き込み量
SSD容量 1GB 2GB 4GB 10GB 20GB 40GB 100GB
30GB 97年 48年 24年 9年 4年 2年 11ヶ月
64GB 207年 103年 51年 20年 10年 5年 2年
128GB 414年 207年 103年 41年 20年 10年 4年
256GB 828年 414年 207年 82年 41年 20年 8年
512GB 1657年 828年 414年 165年 82年 41年 16年

SSD容量ごとの寿命を表にしてみた。1日にどれぐらい書き込むのかは、用途やOSの設定で大きく変わってしまうが、普通に4〜20GB/日の範囲で使うのならば、寿命がくる前に新しいSSDに買い換えているだろう。ちなみにこれは空き容量50%での結果なので、たとえば10%しか空いてないSSDでは、相対的に寿命も短くなると思われる。


書き込み速度がどのように変化したかグラフにしてみたが、あまり意味のないものになってしまった。書き込む様子を見ていても妙な息継ぎがなく、とにかく安定しているので、体感で寿命を知るのは難しいだろう。5TBのところが少し下がっているが、これはDIABLO2で遊んでいたからであって、SSDに何か問題があったわけではない。

長い寿命、安定した速度、最後はリードオンリー。気軽にSSDしたいなら、東芝。