2010-07-25
仕事が忙しい人と、社内失業者が共存してる現状がある 前編
社内失業 |
仕事がなく暇を持て余す「社内失業者」がいると思えば、一方ですごく忙しくて毎日残業、休日出勤を繰り返してる人もいる。しかもこれが、違う業界や違う企業というわけでなく、同じ会社内で、もっと言えば同じ部署内で共存してたりする。この点に関しては、前から不思議だなーと思っていたんですよ。
私の場合も、上司はすごく忙しそうにしてるのに、僕には仕事がないんです。色々取材をしていても、周りは忙しそうなんだけど自分には仕事が無い、それが辛い、っていう状況がある。逆に社員全員が暇な状態という事例は案外少ない、というかほぼ無いんですね。(ていうかそういう会社は潰れるのかもしれないが)
そんなだから超忙しい人から見れば社内失業者は「あいつらラクしやがって。自発的に仕事を手伝えよ」だけど、暇な人からすれば「どうして仕事を分けてもらえないんだろう」ということになってしまう・・・。ちなみに職場で仕事が属人的になってしまうのには3つの理由があるそうです。
(1)成果主義の浸透により、各個人の仕事が明確化、専門化したので他者が手を出しにくい
(2)仕事外でのお付き合い(飲みニケーションやクラブ活動)が減り、業務関係以外の社内知り合いが減った
(3)終身雇用が機能しなくなり、会社への忠誠心が減って担当外への手出しをしなくなった
上司Aの部署は極めて忙しいとしましょう。上司Bの部署が近しい業務をしていたとしても、部署Bには部署Bの売上予算があり、その邪魔をしてまで「手伝って欲しい」とは言いにくいので仕事を抱え込んでしまう。結果、どんどん部下Cが忙しくなります。
一方、上司Bがそこまで忙しくない状態だと、部下Dにまで渡す仕事がなかったりする。仕事量がある程度ある場合でも、上司自身がプレイングマネージャーで忙しくて教育時間がもてなかったり、そもそも教える気がなかったりする場合、部下Dは社内失業しやすくなるようです。
他にも、例えばあなたは、話したこともない相手に仕事を頼めますか?普通は頼めませんよね。仕事外でのお付き合いが減っている状況が影響を与えている部分はありそうです。
こうして、忙しい部署の部下Cと暇な部署の部下Dが、同じ会社内に共存してしまうという事態が発生します。
他部署の例でみていただきましたが、同じ部署であっても忙しい人と暇な人は共存しえます。例えば部下Cが新人で、上司も部下Bも「新人にはまだ無理だ」「教育する暇が無い」と思っている場合です。あるいは退職勧奨などでわざと仕事をあたえない場合や、部下Bが転職を考えていて自らの業務経験を守るために部下Cに仕事を与えない場合もあります。
このように忙しい人と暇な人が断絶した状況で、「無能だから暇なんだろ」「あいつは仕事する気がない」などの偏見がさらに仕事を割り振らないサイクルを生み、忙しい人はずっと忙しい、社内失業者には仕事が与えられないという状況が加速してしまうわけです。
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仕事が忙しい人と、社内失業者が共存してる現状がある 中編
社内失業 |
部下が社内失業するとき、多くの場合で上司との関係のこじれが原因となっています。しかも、厄介なことに上司は自分の部下が社内失業していることにあまり危機感をいだいていません。「部下に仕事がない状態は、人件費・教育機会の損失だ」と考えて解決に向けて動こうとする上司は、私がインタビューした中では少なくともいませんでした。実はこの心理は、ある心理学用語で説明することができます。
例えば混雑した電車の中では、誰もお年寄りに席を譲らないということがあります。他にも野球で、センターとライトのちょうど中間にボールが来て、”お見合い”状態でボールを落としヒットになってしまうことがありますよね。想像できますでしょうか。
実はこれらは「社会的手抜き」といって、人は集団で行う作業が発生すると一人でやるときよりも努力量を減らすという法則です。簡単に言えば「誰かがやってくれるだろう」という心理状態に陥ることです。社内失業している部下を持つ上司の心理を、社会的手抜きという側面から説明する理論をいくつか紹介しましょう。
(1)自己の貢献度評価理論→人は自分の努力がどれだけ組織に影響を与えるか考えるが、組織が大きくなると貢献度が曖昧になり手をぬいてしまう
(2)他のメンバーとのマッチング理論→自分が所属する組織の他のメンバーと同レベルの頑張りしかしなくなる
一見、上司は部下にたいして責任を負う立場のように見えます。しかし多くの人が同時に作業する職場において、上司自身が忙しくなかなか部下に仕事を教えられない状況が続いたり、「彼自身でなんとかするだろう」と教育を部下自身の責任にしてしまうことがあります。結果的に誰も部下を教育しなくなってしまう社会的手抜きの状況に陥ってしまうのです。
社内失業は会社組織の中で、構造上どうしようもなく起きてしまうことだ、ということを認識すべきです。そして長い目でみれば将来の戦力の教育機会、モチベーションを奪うものであり、短い目で見ても人件費を無駄にかけてしまうことだと知るべきです。そうすればこの問題は、部下のモチベーションでなんとか解決するものというよりは、上司が業務の再分配という形で解決していくべき、マネジメントの問題ということがわかります。
個々の資質によって起きるものではないという認識が広がれば、彼らに「仕事は自分で探せ」とか「さぼってんじゃねーのか」とか言う上司が少しは減るんじゃないでしょうか。
参考URL:http://www.geocities.co.jp/WallStreet/4716/loafing.htm
仕事が忙しい人と、社内失業者が共存してる現状がある 後編
社内失業 |
さて、社内失業は組織の構造的な問題であり、その解決を部下にまかせるよりも、管理職が業務の再分配で対応すべき、というところまでお話しました。最後に、管理職向けに再分配時に気をつけること3点を提案したいと思います。部下に「何か仕事ありませんか」と良く聞かれるようになった、あるいは担当業務がほとんどないようだと気づいたときに、あなたたち管理職が気をつけるべきことです。ちなみにこれは、私がいままで見てきた事例をもとに考えたものです。
(1)雑務ばかりを振り分けない
「郵便物をだしてきて」「データをCDに焼いておいて」「いま忙しいから手を貸して」という雑務(仕事というよりも用事)ばかりをお願いするというのは、実は最もやってしまいがちなミスです。雑用は大抵、短時間で終わるので社内失業の本質的な解決になりませんし、いくらやってもスキルにならないので部下は「ここにいると雑用しかないし、お先まっくらだ」と思ってしまいます。
また、業務には一連の流れがありますよね?「A」→「B」→「C」→「D」という流れを切って「C」ばかり任せてしまうと、たとえ「C」が重要だったとしても、部下はその仕事の意味を全体の流れの中で理解できません。その場で思いつきで仕事をふる=雑用と考えて間違いありません。
(2)放り投げない
蜜にコミュニケーションを取るのが面倒なので「新企画を考えて。できたら見せて」「何がしたいの?とりあえず君から提案して」などの放り投げをやってしまいがちです。これは自由すぎて部下も何をしていいかわからず、結局、上司の意図をうまく汲み取ることができません。結果、部下から見れば「何を提案しても否定されてしまう」上司から見れば「的外れな提案ばかりしてくるなコイツ」な状態を繰り返すことになります。私が見てきた事例では、結局、部下は提案することを諦め、社内失業への道を再びひた走ることになります。
逆に言えば、ただしい業務の再分配とは、自分の仕事も含めて抱えている部下全員の仕事を一覧してから行うべきということです。繰り返しになりますが、部下が難儀して解決しようとするよりも、上司がちょちょいと再分配すれば素早く解決に導くことができるということです。
(3)隠蔽しない
社内失業状態であることを告白すると、その部下は無能の烙印を押されるおそれがあります。しかし同様に、上司も「部下をうまく使えない」奴として無能の烙印を押されるおそれがあります。なので上司は、さらに上の上司や同列の管理職に相談することがほとんどないようです。
しかし、社内失業が個人の資質によるものでなく、会社組織内の構造の問題として捉えられれば、社内失業は恥でもなんでもないということになります。自部署で持て余しているのなら、むしろ積極的に「彼はこういうスキルを持ってるんだけどそっちで活かせないか?」と他部署やさらに上にたいして提案して異動をサポートすべきです。そのことは社益にも、部下のスキルアップにも繋がります。
僕がこの本を通して伝えたい事は、「社内失業は個人の資質によるものではなく、会社組織、ひいては社会の構造上の問題である」ということです。それは「部下の資質によらない」ということももちろんありますが、「上司の資質にもよらない」ということでもあります。
上司がダメだから部下が社内失業するわけじゃない、ということになれば、上司は自分の部下の社内失業を他部署に相談できるようになります。自分がダメだからではない、ということになれば、部下は上司や周りに現状を伝えやすくなる。人材配置の適正化が進めば企業が元気になるのです。企業が元気になれば、そこで働く人にも影響を与えます。あなたが元気になるのです。
20代、SEをしている夫は部署移動をしてから仕事がない、誰にでもできる雑用をしている、周りは忙しく残業しているのに…不安になるとつぶやいています。資格を取りに行ったりとなんとか状況を変えようとしているみたいなのですが、早く帰れるからいいんだと半ば自分に言い聞かせているようなことも話します。社内失業という状況に陥っているのですね。
以前は仕事の内容や周りの職場の人のことなど楽しそうに話していたので、また仕事に楽しみを感じられるようになってもらえたらと切望しています。
記事のような、上司による仕事の再分配は現状難しいでしょうし、「社内失業者」からのアプローチとして望ましいのはどういったことなのでしょうか?
突然のコメントでこのような質問を申し訳ありません。お時間ありましたらコメントいただけると幸いです。
まず申し上げないといけないのは、私自身も社内失業中の普通のサラリーマンということです。労働相談の専門的な知識を持っているわけではないので、あくまで参考程度に聞いていただければ…と思います。
社内失業者側からのアプローチということで、まず大切なのは「上司や会社に悪意がありそうかどうか」です。もし退職を迫られていたり、いじめ的に仕事を奪われている場合は、上司に相談しても解決は難しいので、専門の機関(http://www.npoposse.jp/)などで専門家に相談することをおすすめします。
旦那さまの場合は、部署異動をされてから社内失業してしまったとのことですので、
(1)全く仕事内容が異なる部署への異動で、教育を受けられないまま放置されてしまい社内失業
(2)仕事内容は前部署と似ているが、部署内の仕事量が元々少なかったり、特定の人物に独占されていて、することがなく社内失業
のどちらかかなぁ、と思われます。
いずれの場合でも、上司は部下の社内失業にたいして、「問題視していない」「たいして気にしていない」あるいは「気付いてさえいない」場合が多いです。なので、上司に悪意がないようなら「異動して以来雑用しかしていなくて困る。このままではスキルアップもできないので、仕事を割り振ってくれないか」とストレートに伝えることで解決することがあるようです。もしそういう上申が許される環境ならば、チャレンジする意義はあるかと思います。
ただ、個別の複雑な事情や、なかなかそううまく行かない場合も多く(私の場合もそうです)、バシっとこれがベスト、という解決案を提示できないのが現状です。こんな感じなのですが、いかがでしょうか。あまりお役に立てず申し訳ないのですが…。
記事を読み、自分が社内失業者であることが分かりました。私は、旧帝大理系、院を卒業し、学生時代は体育会の部活で主将として全国大会チームを率いるなど、平均よりバックグラウンドも高く(本当に失礼な表現、申し訳ありません。)、現在、新卒で1部上場の商社に入り、経理部配属となりました。入社以来、社内での評判は高く、営業部からのお誘いも幾たびもいただき、社内唯一のトレイニーとして、海外トレーニングもさせていただきました。しかし、入社以来常に暇で、特に現在はユーザー名の通り、一日の内3.5%(15分)しか仕事をしていません。仕事がありません。雑務以外は。仕事をくれと言えば、恐らく雑務はもらえますが、スキルアップとは程遠く、恥ずかしながら自ら避けています。
上述のような状況で、多少自分に自身もありましたが、既に5年目に入った今、自分の問題解決・発見能力が足りないのではないだろうか、と非常に不安になっています。いろいろなサイトを見ると、仕事は自分で創るもの、とあり、まさにそれは、私の目指す姿でもあります。しかし、所属する部署の性質(管理系の為、PL責任は無し)や、部署の方向性が示されていない事、自分に権限委譲はなされていないこと、を鑑みると、個人の能力ではどうする事もできないのではないか、という思いもあります。会社を興すようなスーパーマン程、自分に知識も能力もないことは分かっており、となると、ある程度組織のマネージメント能力に頼らざるを得ない、むしろ、組織はマネージメントをするべきだ、と考えます。
とは言いましても、このような受動的な態度では何も変わらない事は承知しており、何か抜け出すためのきっかけをご教示頂きたく、書き込ませていただきました。
1.営業部へ異動、2.転職 以外で、何でも結構ですのでご教示ください。以外で、と申しますのは、状況を打破するため・もともとの目標として、1年内のMBAを考えており、現在準備中であるため、移動先に迷惑がかかるため避けたいためです。なので、現実的には留学までの1年間、ここを耐えるための方法を知りたいです。
この暇な状況が既に1年以上続いており、あと1年間耐えられそうにありません。
自己主張の強い文章であること、心からお詫び申し上げます。状況を少しでも具体的にお伝えしたいがための事、どうぞご容赦いただけますと幸いです。
>ろう」と教育を部下自身の責任にしてしまうことがあります。結果的に誰も部下を教育しなくなってし
>まう社会的手抜きの状況に陥ってしまうのです。
私はギリギリ社内失業ではありませんが、上記の部分にとても深く×10000共感してしまいました。
それと記事となってるということは自分だけじゃないことに少し安心しました。
SEの業界で技術者派遣というものご存知でしょうか?最近はSW以外の部署でも派遣されているそうで自分もその一人です。大手メーカーの社内で人手が足りないから派遣されているのに、上司が忙しくて部下に仕事を教えられない。自分で考えて行動しても教えられていなかったり経験がたりないから決定できず結果無意味なものとなってしまったり、いらない確認作業が増えて上司の仕事が増える。なのでさらに上司がやってしまったほうがうまくいくので仕事が部下に振られない。なのであまり仕事ができない人と思われるという悪循環になる。
これで社内にいられればいいですけど派遣ゆえに会社の人ではないので部署の人にどうしたらよいか頼りにくいのが悩みです。なんとか仕事を盗もうという気持ちが続く限りがんばろうと思います。
技術者派遣の方の問題に関しては、私も一度インタビューさせていただいたことがあるんです。他社にぽつんと配置されることになって相談しにくいし、周囲に仕事くれと言おうにも契約以外の仕事はさせられない、かといっていなくなると万が一の時に困るので手放せない……という方でした。
会社だけでなく、社会全体で新人を育てていこうという発想が必要だなぁと思いますが、不景気の昨今、簡単に解決できる問題じゃないことは確かだなあと思っています。ありがとうございました(^^
こうした意識の欠けてきた業界(企業)が衰退していく。
こうした業界(企業)が増えていくにつれて社会全体の景気も悪くなっていく。
そして、社会全体が殺伐としていく、、、
『習うより慣れよ』
こんな言葉があります。勉強でもそうですが仕事においても言えることでしょう。しかし、 『慣れる』場所がなければ『習う』ことも『学ぶ』ことも『習得』することができません。
、、、冒頭に戻る。
社会に先に出ている側の人間にゆとりがない。だから、人を育てることもできないし、人にチャンスを与えることもできないでいるんだと思います。奇麗事をいうならば、これは『おごり』でしかないと私は思います。
『仕事は見て覚える(覚えようとする)ものだ』という精神論はわからなくもありませんが、経済全体のパイはもちろん仕事のパイも大きくない以上、少しでも広く多くの人間で分かち合っていかなければならないでしょうし、人が育たないことには自分達(社会に先に出ている側)の今ある生活も保つこともできなくなるのは明々白々じゃないでしょうか。
青臭い考えかもしれませんが、どうしてもこう思えてならない。