平成22年8月26日
原子力安全委員会
件数1件(2010年7月1日から7月31日までの集計)
お寄せいただいた御意見・御質問のうち、匿名のものや、原子力の安全確保及び当委員会の活動と無関係な事項に関するものについては件数に含まず、回答しておりません。
お寄せいただいた御意見・御質問は、全て原文のまま掲載しております。
2005年11月の回答分からお寄せいただいた御意見・御質問とその回答に整理番号をつけることと致しました。(年毎の通番)
整理番号10年−27
(受理日:7月16日)
低線量の放射線の人体への影響についてお尋ねします。これまでの調査研究で100mSv以上の放射線量域では,線量とがん発症率の関係は直線的であることが確かめられていますが,100mSv以下の放射線量域では,がん発症率の増加などの臨床症状は確認されてなく,線量反応曲線は確定されていません。しかしながら,実際には放射線防護の観点から高い線量域の直線関係をゼロ線量まで外挿した,しきい値なしの直線仮説が採用されています。一方で,低い放射線量域では生物への影響はかえって大きくなるという学説もあります。つまり,この学説では,低い放射線量域においては線量反応曲線は直線ではなく,上方に凸の曲線になるということですが,原子力安全委員会では,低い放射線量域における線量反応曲線についてどのような見解をお持ちでしょうか。
また,原子力発電所周辺の放射線被ばくのような極低線量の被ばくに係る人体への影響については,どのような見解をお持ちでしょうか。(質問者氏名:四反田 昭二)
(回答)
1. 最新の国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告では、低線量の放射線被ばくによる健康影響は不確実であることを踏まえ、しきい値なしの直線仮説を放射線被ばくのリスクを管理する最も良い実用的なアプローチとして採用しており、原子力安全委員会としても、ICRPの同仮説は放射線防護の基準を定める上では適切かつ実用的であると考えている。
2. また、ICRP2007年勧告では、約100mSvまでの線量では、どの組織も臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断していないことを踏まえると、原子力発電所周辺の公衆の受ける放射線量は、100mSvよりもはるかに小さい線量である年間50μSvを超えないように管理されていることから、原子力安全委員会としては、原子力施設周辺の放射線の被ばくにより人体に有意な健康影響はないものと考えている。