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「高校合格したのに通えない」 原発事故で県外避難

2011年3月23日21時2分

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写真:福島県立高校の合格発表があり、合格したことを避難所で家族に報告する同県南相馬市の八島優香さん=22日午後0時48分、新潟県三条市の市総合福祉センター、遠藤啓生撮影拡大福島県立高校の合格発表があり、合格したことを避難所で家族に報告する同県南相馬市の八島優香さん=22日午後0時48分、新潟県三条市の市総合福祉センター、遠藤啓生撮影

 福島第一原発の半径20キロ圏内にある福島県立高校6校の合格発表が22日にあり、県教育委員会は「答案などが校舎から持ち出せず合否判定ができない」として、374人の受験生全員を合格にした。20キロ圏内は政府から避難指示が出ており、合格者が決まっていた1校を含む計7校は校舎が使えるめどが立たない。合格が決まった新入生たちは、せっかく受かった高校に当面、通えない。

 新潟県三条市の市総合福祉センターに身を寄せる八島優香さん(15)は正午すぎ、ロビーのパソコンで福島県立浪江高(福島県浪江町)に合格したと知った。「合否判定が不可能となったため、全員合格」とあった。自宅から近く少人数のところが気に入って受けた。「行きたいから受けたのに行けないかもしれないなんて」と語る。

 浪江町からさいたまスーパーアリーナ(さいたま市中央区)に避難している浪江中3年の田村凜さん(15)も22日朝、第1志望の浪江高に合格した。「合格はうれしいけど、そこに行けないので不思議な気分」。受験前は1日5時間勉強し、仲の良い友達と一緒に受験に臨んだ。「早くみんなで通えるようになってほしい」

 福島県双葉町の双葉中3年男子生徒(15)も、スーパーアリーナに避難中。双葉高(同県双葉町)への合格を知り、「うれしいけれど、この先どうなるのかわからない」と不安げだ。一緒に避難している親族からは福島県内の別の高校への進学を勧められたが、「できれば双葉町に戻り、双葉高に通いたい」。

 福島県富岡町の中学3年佐藤東(あずま)さん(15)は、同県郡山市の「ビッグパレットふくしま」に身を寄せる。土木建築の仕事がしたくて土木の科目がある双葉翔陽高(同県大熊町)を受験し、合格したが、通学のめどがたたない。「ここ(郡山)の高校に通ってしまったら二度と富岡に帰れなくなってしまう気がする。ふるさとで土木の勉強がしたい」

 在校生たちの表情も曇りがちだ。テニス部の部活動中に被災し、スーパーアリーナに来ている双葉高(同県双葉町)1年の伊澤希さん(16)は、当面の間休校すると聞き「心に穴が開いたような感じ」と話した。「避難所でも友だちには数人しか会えない。いつか『双高』の仲間と一緒に机を並べたい。せっかく入ったあこがれの高校を失いたくない」

 双葉町の井戸川克隆町長は22日、スーパーアリーナの次の避難先となる埼玉県加須市を視察。報道陣に「こちらに移住する家庭の高校生については、近隣の高校に入学させてもらえないか、加須市長にお願いした」と話した。

 福島市で避難生活を送る双葉高1年の佐山慎平さん(16)は各地に散った野球部の仲間やクラスメートとは、携帯電話でメールを交換する。「双葉高の友だちと一緒に高校に通いたい。避難者が埼玉県内に多いのなら、そこに双葉高校を作ってくれれば通ってもいい。新たな学校への編入は不安。双高の友だちと卒業したい」

 スーパーアリーナにいる双葉翔陽高2年の大住雅人さん(17)も「編入には抵抗感がある」と語る。「3年生は就職に大事な時期。友だちがいないところで環境も変えて過ごすなら、通信教育の方がいいかなと思うけど、お金がかかりそう」と心配している。

 高校は卒業生の心のよりどころでもある。双葉高校OBの男性会社員(47)は「双葉高校は昔からある地区の伝統校。廃校にしないで残してほしい」。双葉高をめざして勉強中の双葉町の中学2年の西内理奈さん(14)は、双葉高出身の両親に育てられ、「絶対、双葉高が志望」だった。「目標がなくなっちゃって、ぼうぜんとしているけど、今やれることは勉強だけ」と、埼玉県に来てから買った参考書を段ボールの上に開いて自習を続ける。

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