医師不足に悩む大田市は、島根大医学部への寄付講座の形で、地域医療に不可欠な総合医の育成機能を市立病院に誘致する構想を進める。大学は病院を臨床の拠点として活用。市は長期的に専門医を養成しながら、常駐する同大学の医師に診療に当たってもらう“共存共栄策”だ▲次世代の地域医療の担い手確保は、地方にとって緊急の課題だが、若い医師に専門医志向が強く、多忙な“何でも屋”の総合医は人気が低いという。内科医2人が新年度着任する公立邑智病院(邑南町)の石原晋院長は「若い医師の自己実現と社会貢献の道に、かい離があり過ぎる。地域のためだけにキャリアを犠牲にしろとは、同じ医師として言えない」と苦悩を語り、地域医療の維持が医師の苦心で何とか支えられる現状を批判する▲大田市の試みは、自治体が積極的に総合医を養成することで、地域医療を盤石にしようというものだ。国を挙げてこの種の仕組みが定着すれば、地方の医師不足解消の第一歩になると期待する。【鈴木健太郎】
毎日新聞 2011年3月26日 地方版