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[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー : vsリリカルなのは追加しました 3/23再編(オリジナル SF? 短篇集)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/26 04:27
「左腕、パージ」

コマンド入力後、左肩部の爆裂ボルトが作動。破壊された左腕を切り離した。
直後に敵のファイアーボールが飛来。
2時方向へ機動マニューバ、ファイアーボールをかわす。エアブレーキ。急減速、12時方向俯角30度へ加速。再減速、翅を畳む、真下へ向かって降下ダイヴ。傷口が開かぬよう血液が急速に酸化。肩の断面を素早く焼灼。
敵竜騎兵、自機の後を追い降下ダイヴ。サンダーボルトを詠唱。

100ミリ秒ほどの瞬間、思考が頭を過ぎる。自機の左腕を破壊したのはこんな引っかかり易い間抜けだっただろうか? 端整な眉が僅かに顰められる。

加速、地表がせまる。タイミングを計る。サンダーボルトの詠唱が完了する。翅を展開する。急上昇、メイン・スラスターを吹かして全力加速。背後をサンダーボルトが通り過ぎる。
上昇、加速、上昇、上昇。敵竜騎兵も釣られて上昇。

「馬鹿め」

背面翅を畳む。両脚翅を展開。エアブレーキによるモーメントをしなやかに受け流す。瞬間的に前後が反転。脚部・肩部の制御スラスターを噴射。前後反転状態を維持。左眼が敵機を索敵。画像認識で竜騎兵をロックオン。M-FCS統合火器管制システムにデータ入力。生体ミサイル選択。データ転送。両脚部にマウントされたケミカル化学AAM対空ミサイルをヘッドオンで発射。
敵機、意表を突かれて思考が停止する。その隙にミサイルが突っ込む。スマート信管が最適距離で作動。強腐食性粘液が殺傷散布界の網を広げる。飛び散った腐食液の水滴に突っ込んだ竜騎兵、マジックシールドを張る間もなく散々に強酸の雨に打ち据えられる。

「ぴぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!! 」

竜騎兵、直ちに治癒魔法を詠唱。しかし、その隙を突いて右腕にマウントされたガス圧式ニードルガンを照準、発射。竜騎兵、頭部・胸部がハリネズミになる。ニードルに仕込まれた化学物質が竜騎兵の生体成分に反応。劇烈な反応と共に風船のように膨らんだ肉体が爆砕、血の雨を降らせた。

「敵竜騎兵の撃墜を確認」

成果確認の後再び周辺索敵に移行しようとしたその瞬間、11時方向仰角70度から飛来したエアカッターがその首を切り落とした。
それが自機の左腕を破壊した敵機だと理解した瞬間。

(リプログラム開始)

切り落とされた頭部がスリープモードに移行する直前、顔面が胴体に向いた瞬間に右眼から胴体の光学センサーへレーザー通信。
脊椎及び腰部の肥大化した副脳に最後の命令を上書き。

見敵自爆サーチ・アンド・スーサイド

胴体に残された光学センサー・音響センサー・電磁センサーが瞬間的にバーストし全天周索敵。光学センサーが上方10時方向に不自然な光の歪みを確認。大気の乱流と判断。観測された乱流を逆演繹。光学的に隠蔽された竜騎兵の姿シルエットを逆算して捕捉。
突撃。
捕捉されるはずがないと高を括っていた竜騎兵、反応が遅れる。
翅を折り畳む。制御翼だけ突き出す。全身のスラスターを展開。酸化剤を使って化学ブースト。一気にMAXスピードへ。
竜騎兵、回避運動に移ろうとするがそれより早く接近。右腕・両脚・背面補助腕・腰部補助腕を全て展開、竜騎兵に組み付く。

「げぇえ゛え゛え゛え゛!! 放ぜっ! 放ぜえ゛え゛え゛え゛えぇぇぇぇぇ!! 」

≪自爆シークエンス開始≫
≪音声メッセージ解凍≫

「断る。死ね」

自爆シークエンス進行。
骨格に内蔵された超音波発振兵装、全力発振。
ホメオスタシス維持機能、暴走開始。
主肺・副肺及び各関節の気門から外気を導入。体内の化学燃料を始めとした反応性化学物質を酸化剤・酸素と混合、超音波をスターターとして反応開始。
そのエネルギーを使って電磁兵装を最大出力で暴走。
化学反応のエネルギーも併用して自機を最大温度一万度に達するプラズマ爆弾へ。

「ぎぃやぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」

起爆。
プラズマ化に巻き込まれた竜騎兵、断末魔の叫びを上げながら爆散。血と内臓の蒸気を撒き散らしながら蒸発。消滅した。



機体の蜻蛉や蜂に似た透明に黒のコントラストが入った飛翔翅が花弁の様にはらはらと舞い落ちる。僅かに焼け残った漆黒のアーマーや装甲コートが紅葉の様に夕陽の中を落下して行く。



なお、自爆した機体[識別子L-68432846:種族ホモ・サピエンス-兵士階級]は頭部だけとなったが、ただちに自閉状態へ移行。後に救出レスキューチームによって回収されて蘇生した。



その様子を冷徹に観察する存在があった。

「敵竜騎兵、撃墜2。友軍、大破1」

「IFF確認。回収班編成開始」

「データ回収完了。解析開始」

空中空母の管制室では電子化されたやりとりがせわしなく飛び交っている。
肥大化した人間の脳が管制パーツ、解析パーツなどとして生体兵器の一種である空中空母の脳幹に連結されている。情報処理機能を向上させるためだが、冷却に費やすエネルギーは決して無視できるほど小さくは無い。しかし、得られるメリットは大きい。
現に今も……

「偵察隊より空母へ。方角173゜高度7000よりDドラゴン接近。タイプはD-85。速力4700に増速。警戒されたし」

「了解。飛行中の全航空部隊に通達。現空域から撤退する。直ちに撤退行動を開始されたし」

次々と了解のサインが飛び込んでくる。それらを処理しながら最適な撤退プランを立案し検討し実行する。それに修正を加えながら自身も撤退する。撤退中も今回の戦闘のデータを整理、解析・分析を続ける。

「…敵の基本性能は今回も変化無し」

「戦術も進展無し」

「では何故L-68432846は撃破された? 」

「隠形の術を使った奇襲はただでさえ感知しにくい」

「その上L-68432846は戦闘経験も薄い」

「左腕を失ったことで残心が少々疎かになったものと思われる」

「自動警戒システムに改良の余地ありか? 」

「検討して見よう」

「敵魔法使いとのキルレシオは年々向上しつつある。だが、単機当たりのコストも高騰しつつある。戦術で代替出来ないか? 」

「…検討して見よう」





あとがき

ここまで書いて燃え尽きました。
続くかどうかは未定です。

3/23
(オリジナル SF? )
(続きました)
(また続きました)
(読者の皆様方へ謝罪)
(バイク特集)
(ネタバレ編)
(ドラゴンハント・前日譚)
(if編)

分かりやすさを考慮して
(オリジナル SF? )
(if編)
(ネタバレ編)
(続きました)
(また続きました)
(ドラゴンハント・前日譚)
(読者の皆様方へ謝罪)
(バイク特集)
に再編しました。

読者の皆様には度々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (if編)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/26 14:08
「地球」という概念は一つではない。
異なる時間軸。
異なる物理法則。
異なる次元。
そういった様々な地球がカラーフィルムを重ね合わせるようにして貼り合わされ、そこで初めて総合的な「地球」と言う概念が立体的にホログラムの様に浮上してくる。





遥かな未来、かもしれない時間軸。

ある地球のバリエーションの一つ。
まるで神のような力をもった存在が造り出した世界。

通称「無限宙域」

月軌道と同じか、それより少し大きい位の風船を想像して欲しい。
その風船の皮膜は物質ではなくある種の場、フィールドで構成されている。
その中は地球では一般的な大気で満たされている。
それ以外にはほとんど何も無い。
無重力で大気だけが存在する。そんな世界だ。
決して墜落することが無い、あるいは永遠に墜落し続ける、翼持つモノたちにとっての楽園。

もちろん例外は存在する。
兵器工廠と局所重力場だ。
少し大きめの隕石の周りを自動生産工場リングがグルグルと回っている。隕石自体にも工場設備が貼り付いている。そこでは全自動で機械兵器・生体兵器や弾薬が生産され、当てどなくばら撒かれている。これが兵器工廠だ。無限宙域に隕石や彗星が突っ込むたびに何処からとも無く自動ロボットたちが取り付いて自動的に兵器を生産し始める。
局所重力場はある種のブラックホールだ。ただし、エネルギー放射も強力な引力もどうやってか制限されており、無限宙域内を複数の局所重力場がぐるぐると巡回しては水槽を攪拌するように大気を攪拌していく。

地球と月を砕き、本来地球があるはずの座標に無限宙域を創造したのがどのような存在なのか、それは今もって分かっていない。





無限宙域に他の地球から来訪者がやって来た。

その来訪者は涙滴型の滑らかな流線形の体型だった。手足は無く、簡略化された顔が凹凸の無い胴体に埋め込まれていた。全身を鏡のように綺麗に磨き上げられた金属で鎧っており、継ぎ目一つ見えない。
端的に言って、とても美しかった。
3人の来訪者は無反動推進でフィィィィィ、フィィィィィィィと風を切りながら無限宙域を気ままに飛翔していた。
時折自動兵器が襲ってきたが、ちょいちょいっと軽くひねってしまった。



そうしていると、無限宙域で自分達以外の来訪者にばったりと遭遇した。

まったくの不意打ちでのファーストコンタクト勃発である。



その来訪者は一般的なホモ・サピエンスらしく四肢と頭部と胴体を備えていた。
全身黒尽くめで、皮膚は白く虹彩だけが血のように深紅であった。

服装は、上半身は黒のインナーの上からいかにも軽そうな黒塗りの薄装甲をバイタルパートに貼り付けており、動きを阻害しない洗練されたデザインを台無しにするように装甲のあちこちにホルスターやらフックやらが後付されていた。
その上から見るからに硬そうな黒い装甲コートを羽織っており、こちらもそのシンプルながら洗練されたデザインをポケットやら追加装甲やらで野暮ったくしていた。
両腕には流線形のごつい籠手を嵌めていたが手は剥き出しであった。

下半身は関節部を覆うプロテクターと一体化した黒い装甲ズボンで、ベルトとバックルは飾り気の無い頑丈そうなものであった。もちろん何やらじゃらじゃらとぶら下がっていた。台無しだった。

顔は東洋系の彫りの深い顔立ち。どこか中性的で幼いが、きりりと引き締まっている。
最大の特徴は右目に黒い装甲眼帯をしていること。
それと、東洋系らしい丸耳がぱかりと展開してアンテナやセンサーがにゅっと伸び出していた。

無限宙域内で飛翔する時は、背中から生えた4枚の昆虫類のものそっくりの長大な翅を使うようだ。透明で虹色のグラデーションが掛かっており黒い葉脈様のラインが走っている。両脚のそれぞれのふくらはぎからも2枚のやや小ぶりな翅が生えており、全て合わせれば8枚の翅が生えていることになる………





そうやって鏡色の来訪者が観察していると、突然黒尽くめの来訪者がくるりととんぼをうった。

鏡色の来訪者、地球出身ホモ・サピエンス→汎拡張オーグテット人類ヒューマン→冥王星統一政府はレネマクモコ地域所属の”%’?_<=*$は、はて? と疑問符を浮かべた。
じっと見つめていると、今度は別の個体がゆっくりとダンスのように回転し始めた。コートの裾がふわりと広がる。
何だか分からないが、取り合えずこちらもとんぼをうって錐揉みしてみる。

首を傾げられてしまった。

突然こちらにレーザーが照射された。低威力で害は無いが、一体どういうつもりだろう?
照射した個体は右のこめかみのレーザー照射レンズを仲間へ向けると、そちらの個体がさっきのようにゆっくりと回転し始めた。その個体をレーザーで上から下へ、下から上へ順繰りに照射していく。一通り照射し終わった後、自らを指差したあと、こちらを指差すということを何回か繰り返した。

……走査サーチしろということかな?

こちらが回転している個体に探索波を照射すると、あちらもレーザーと超音波ビーム、弱いX線を照射してきた。
了承の意としてゆっくりとその場で探査ビームを浴びながら回転する。
走査サーチ情報データを分析して見る。

肺が変形している上に四つもある。しかも吸気口と排気口がそれぞれ別に胴体から肺に直結している。心臓は強力なのが一つ…いや、サブ・システムがもう一つあるようだ。脊椎は肥大化している。おや、脊椎に重なるように3次元梯子状の神経瘤が組み込まれている。骨格は……フムン、情報素子の集合体で構成されているようだ。それでいて強靭なように見える。

体のあちこちに反動推進用のスラスターと思しきものが突き出ている。どうやら身体構造に直接組み込まれているらしい。配置が面白い。
背面は兵装ラックと補助腕で占められている。スラスターはちょうど脇の下から脇腹にかけて配置されており、兵装ラックとスラスターで挟み込むように翅を折り畳んで収納しておく鞘がつんと突き出ている。スラスターの噴射口は前後で重ならないように位置をずらしながら大口径のものと小口径のものを織り交ぜてある。
兵装ラックには二振りの刀が仰々しく納まっている。
ふくらはぎからつま先にかけては柔らかな皮膚が完全にごつごつした装甲に置換されている。内側の踵には陸戦用のホイールエッジが、外側のふくらはぎには独立稼動する飛翔翅の鞘と一体化した高機動スラスターが、ふくらはぎの裏側にはホバー推進用の固定スラスターが組み込まれている。

驚いたことに、これらのパーツは生体パーツであり完全に人体と融合している。おそらく自己修復も可能だろう………





その後もお互いダンスを繰り返したりレーザー通信を試してみたりと試行錯誤を繰り返して見た結果、テレパシーの規格をお互いに擦り合せることでようやく途切れ途切れながら意思疎通が可能になった。



[つまりあなたがたはホモ・サピエンス? ]

≪Ziiiii…ソウダ、貴方タチモほも・さぴえんすデアッタトハ..vuvuvuuu…大変ナ驚キkkk…≫

[たいようけいだい3わくせいしゅっしんであっていますか? ]

≪hMuuu…合ッテイル。シカシ我ラト貴女方ノNnn…認識ハ、未ダ一致シテイルトハ言イ難イiiIi……貴女方ノ肉体ハ機械的美シイィィiii置換?? ≫

[はい、そうです。じかんとくうかんのひみつをときあかせば、てあしなどかざり、です。いしあたまどもにはそれわからないです]

≪@$@……保留。人体ハ芸術ゥゥuu…然ルニ貴女ノ肉体ト精神モ美術的機能的美シイyyy…我ラこんたくとシタ種族貴女方デアッタ事光栄ニeeeee……≫

[こちらこそこうえいです。あなたたちこんちゅうるいとハイブリット? ]

≪zzz近イィ……知的社会性昆虫=>>昆虫ヨリ進化シタモウ1ツノ人類rrr…我ラノ社会ニ於ケルまじょりてぃ……ソノてくのろじーガ使用サレテイル我ラノ肉体q”qq…はいぶりっとト間違ウ仕方無シsss……出来ルダケ遺伝子改変ハ抑エル方針…はいぶりっと少シ違ウ%%###≫

[まあ、びっくり。もっとあなたがたこうりゅうしたいですが、かのう? ]

≪Bfffff……コノ宙域ニ限定スレバ、可能。我dg-61758684再ビ貴女ト会ウ望ムuu***………≫





こうして無限宙域におけるファーストコンタクトは友好的に終了した。
しかし、多数ある地球の中にはイア! イア! なものもいる。
それ行け「人間」たち。
負けるな。挫けるな。闘え。
進化の階段を登りつめろ。





あとがき

描写不足とのことでしたので、できるだけ描写するように心がけて見ました。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (ネタバレ編)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/23 23:45
{むかしむかし、認知症を患った耄碌したヨボヨボの神様がいました。この世の全てを司っているその神様がある日ある時くしゃみをしました。その時飛んだ痰と鼻水が【リスト】に飛び散ってインクが滲んだ結果、全てが、全てが・・・変わりました。具体的には、21世紀日本に住む一人の少年が転移したのです。それが始まりでした………}



「どわぁぁぁああああああぁぁぁぁぁ???!! 」

突如として空中からシダの生い茂る原生林に一人の少年が落下してきた。
(彼の名前に関するデータは破損していて再生できない。ここでは便宜上〈オリジナル〉と仮称する)
柔らかな茂みと土の上に落下した少年は暫く蹲っていたが、ようよう身を起こすとぶつぶつと何事かを呟きながら周囲を見回し歩き出した。
だが、彼はいまだ気付いていなかった。
ここが彼のもといた21世紀ではなく、元いた時代より3億6000万から2億8000万は過去の太陽系第3惑星であることに……



≪せんせぇー。そのくだりはおとといもききました≫

{あら? では彼が我々の祖先である原始的な社会性昆虫たちと出会う所は? }



「ギギィーー! ピュイピュイィィ」

「エエ゛―イ! 好い加減僕の頭から剥がれやがれ! 」

「ピュイィィーー?!! 」

「て、ウボァァアアァァ?! ゴボゴボガボゴボ(ry 」



≪せんせい。オリジナルとさいしょのじょうおうクイーンのなれそめはせんしゅうききました≫

≪そうそう。うっかりえいそうハイヴにおちちゃったオリジナルがうんわるくまほうつかいのしゅうげきにあってたまたまじょうおうクイーンのようせいたいをつれてにげるはめになるんだよね≫

≪かくりつてきにありえないー≫

≪つくりばなしじゃないの? ≫

{こらこら。信じられないかも知れませんがちゃんとした事実なんですよ。オリジナル曰く「フラグ体質」だそうでして……}



ずぶ濡れになりあちこちに傷をつくり走り疲れたオリジナルは頭部に女王クイーンの幼生体を貼り付けたまま朽木の洞の中でそっと横になり眠りに着いた。

夢を見る。
営巣ハイヴの夢。そらから黒い電波が燦々と降り注ぐ。花の香りが七色に輝きシャワーとなって甲殻を洗う。踊りが言語となりメッセージとなって強烈に眼から背中へ焼き付けられる。暖かな土の温もり。六角に区切られた清潔な室の中で仲間と共に夢を語らう。営巣の外にいる大人たちと〈繋がる〉。与えられる食餌。花たちから抽出され濃縮された甘露、天上の美味。否、いつの間にか自分だけ仲間たちと与えられる蜜が違う。そして知る。次なる〈母なる者〉の候補に自分が選ばれたこと。血を分け、親しく語らい、愛し合った姉妹たちと殺しあう運命が決定したことを。

……………違う。これは僕の見ている夢じゃない。これは、頭部に張り付いているこの幼虫の見ている夢だ。

意識が混濁する。

海からの脅威。不景気。就職難。戦争。直立歩行する敵。銃火器による近代戦。敵の用いる不可思議な能力。ネギま/リリカルなのは。陳腐化した核戦争。学校生活。遠い営巣から届く悲鳴と断末魔。オタクとイジメ。繰り返される襲撃と略奪。カツアゲ。材木や石を使った原始的だが殺傷能力のある武器。流される緑の体液と臓物。炎。哀しそうな眼でこちらを見る両親。自らを育ててくれた大人たち/夢を語り合った仲間たち/これから自分が産むであろう子供たち→→その全てを奪われ、喰われると言う運命。
……いいや、そうはさせない。



≪せんせい。ゆめのないようはこうしきじでんにのっていません≫

≪ねつぞう? ≫

{ま、まあまあ……そんなことはとりあえず置いておいて。さて、この後オリジナルは地上に侵攻してきた魔法使いたちと遭遇するわけですが、魔法使いとは何だかちゃんと言えますか? }

≪まほうをつかうくそったれ≫

{違います}

≪まほうをつかうえらとうろこのついたあほんだら≫

{違う…と言いたい所ですが、惜しいですね。あと一息}

≪……かみによってちせいとまほうをあたえられ、ちじょうにおくりこまれたガッデムなにそくほこうするさかな? ≫

{正解です。が、正確を期すならば魚類は魔法使いの一部に過ぎません。地上侵攻の尖兵として魔法使い=魚類が送り込まれ、魚類を魔法使い=刺胞類が統括指揮し、魚類を指揮する刺胞類を「神」の分身体である頭足類が支配しています。これらを総称して魔法使いと呼称しています。分かりましたか? }

≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫≪はーい≫

{宜しい。さて、当時から既に魔法使いたちと社会性昆虫たちは戦争状態にあった訳ですが、この事実を知ったオリジナルはどちらにつくか深く葛藤します。何故だか分かりますか? }

≪どっちがただしいかわからなかったから? ≫

{惜しい。違います}

≪どっちもおいしそうだったから? ≫

{全然違います}

≪どっちもぶさいくだったから? ≫

{まったく違います}

≪どっちがつよそうかわからなかったから? ≫

{半分正解です。正解は、「どっちについたら自分を高く売り込めるか? 」です。当時の状況を鑑みれば、直立二足歩行で四肢を備えた多少なりとも人間に近い魔法使いに味方するのが普通ですが、オリジナルはここで歴史的大決断を下します。その時の迷言がこれです}



【富める者より、真に飢えたる者にこそ、施しを与えよ】



≪? どーいういみですか≫

{当時は魔法を使える魔法使い側が優勢でした。そして未来知識を保有する自分は戦局を左右し得ると考えたのです。しかし、魔法使い達は未来知識無しでも戦争に勝ちかねない勢いでした。そんなところにのこのこ出て行っても重宝してもらえず、最悪殺される。故に、劣勢な昆虫達に味方し、戦局を引っ繰り返し、あわよくばその中枢に食い込み高い権力を得ようとしたのです}

≪そーだったのかー≫

{そして、皆さんご存知の通りその試みは大成功を収めたと言うわけです。私たちの種族の固有魔法とオリジナルの開発した生体工学・情報工学は幸福な結婚を果たし、その結晶として現在の私たちの文明が誕生しました}

≪せんせー。〈にんげん〉もそうなんですかー≫

{その通りです。と、言うより〈人間〉こそが我々【営巣ハイヴ連結体ネクサス】の基礎でありその文明の結晶であると言っても過言ではないでしょう。〈人間〉は全てオリジナルのクローンですが、その製造方法やDNAコードの規格、細胞構造、身体改造技術はこの200年間連綿と進化し続けました。現代では信じられない事ですが、初期の〈人間〉は何と一人につき子宮がまるまる一つ与えられてその中で時間をかけて胚から培養されるという方法で製造されていたのですよ? }

≪えーマジでー≫

≪しんじらんないー。ぜいたくすぎー≫

{さて、次は量産された〈人間〉たちがいかにして劣勢だった戦局を引っ繰り返したのかを………おっと、もう時間ですね。次の授業までにキチンと予習をしておくのですよ}

≪はーい≫

≪かえろかえろ≫

≪もぐもぐはむはむ≫

≪ななんてこった。こんしゅうの「まほうメイド☆ロベルタさん」にまにあわない?! ≫

≪≪な、なんだってーー?!! ≫≫



こうして姦しく触角をさんざめかせながら幼虫たちは帰路に着いた。
教育階級の知性体はその様子を微笑ましく見ながら、下半身の埋め込まれた壁の中へそっと引っ込んでいった。





あとがき

世界観が分かり辛いとの指摘があったので、予定を前倒ししてネタバレ編をupしました。皆様の理解の手助けとなれば幸いです。

気力が続けば裏・ネタバレ編をupするかもしれません。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (続きました)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/22 03:58
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

甲殻を擦り合わせるような軋んだ警戒音が辺り一帯に鳴り響く。

〈(ピチャピチャと舌を鳴らすような音)クソっ! (悪態? )通報された、今すぐ移動(咆哮)〉

〈このクソ蟲(摩擦音)。クソ(悪態? )くたばりやがれ〉

悪態? と共にマジックブレイドが脳天へと振り下ろされる映像を最後に、S-6619FG561の連続意識は消滅した。
ただし、魔法使いたちは知る由も無かったが警戒音と共に局所的な電磁バーストが起こっており、警戒フェロモン化学言語と一緒に最寄の部隊へ自機の入手した情報を圧縮して送信した後であった。



30人隊長#**#*#(チッチッと言う舌打ちと短い吼え声を組み合わせたような音)は不機嫌であった。心地良い泥沼からこのように乾燥した(それでも湿度は60%以上ある)土地に分け入らねばならないし、この土地に蔓延っている魔法の使えない劣等種の存在そのものも不快であった。おまけに率いている部下は神と王国への忠誠心はあれど戦士としては二流・三流な連中ばかりだ。

だが、と頸を振る。それでもこの連中を使って神を信じようとしない劣等種を駆逐せねばならないのだ。それに、神の加護とその恩恵である魔法が自分たちにはある。劣等種に負けるはずは無い。
現にさっきも劣等種の蟲ケラを一匹地獄へ送り込んだばかりではないか。警報こそ鳴らされたが、一匹だけの所を見るに群れからはぐれた奴であろう。何も心配は要らない。もし近くに劣等種の群れがいたとしても、こちらには30人の魔法使いがいる。その火力があれば何者も恐れるに足りない。
この戦いは永く辛いが、最後に勝利を収めるのは神に選ばれし自分たちだ。



一方その頃、魔法使い達の部隊から300m離れた窪地ではS-6619FG561から受信したデータを基に奇襲攻撃の準備が着々と進められていた。



30人隊長は部隊を林の中へと進めていたが、何か奇妙な感じフィーリングを覚えた。何か、そう、何だかいやに静かな気がする。この林はここまで静かだっただろうか?
それに………薄暗い。気に入らない暗さだ。完全に暗すぎず、かといって先を見通せるほど明るくない。何だか、とても気に入らない。



魔法使いたちの頭上、樹の枝が張り出して日光を遮っている辺り。そこで影が蠢いていた。枝のしなる音一つせず、幹から幹へ、枝から枝へ、無音で移動しながら布陣を整えつつあった。移動は魔法使いたちの呼吸、脈拍、視覚の盲点を突いて隠密に行われた。
魔法使い達は、未だ気づかない。



林の中を進んでいた時、ふと鼻を水の匂いが掠めた。先頭の何人かをそちらの方角に差し向けると、ここから少し行ったところに窪地がありそこに泉が涌いていると言う。
ありがたい! 乾燥した土地での行軍で疲れていた所だ。少し休憩と行こう。
30人隊長は部隊を窪地へと進軍させると小休止させた。もちろん泉は自分が一番最初に使った。



魔法使い達は観察されていた。
30人全ての呼吸、脈拍、視線を合わせるタイミング、その人間関係の不和を。全て。
乾燥した土地で疲弊していたのも観察されていたし、部隊を纏めるために隊長が高圧的な態度を取っているのも観察されていた。
だから、部隊の近くで人工的に泉を再現してやれば、部隊の不満を和らげるために一も二もなく飛びつくだろうと言うことも判っていた。
そして、隊長が真っ先に泉に飛びつき、結果として一時的に部隊の統率が失われるであろうことも。全て。



30人隊長が泉から新鮮な水を飲んでいると、部下が不平を言い始めた。怒鳴りつけて黙らせるがブーイングは中々収まらない。苛々しながらもう一度怒鳴りつけようと息を大きく吸ったその瞬間。
それ・・が起こった。

30人隊長は怒鳴りつけようと息を吐き出そうとしたが、何故か声が出ない。
その瞬間、グルリと視界が反転した。
驚愕と困惑に襲われている30人隊長が最後に見た物は、真っ赤な血を噴き出す自分の胴体と、紅い隻眼が爛々と輝く黒い影であった。

前衛戦士長は驚愕に襲われていた。
すっくと立ち上がった30人隊長の頸が突然切り落とされたのだ。
頭が地面に落ちるのと同時に何処からとも無く飛来した火球が四方八方から部隊に降り注いだ。いや、火球ではない。噂では魔法を一切使わない爆発物、確か、ばずーか、と言ったか、そのような物が存在すると言う。だが、魔法も使わずにこのような威力が出せるはずが無い!

次々と煙の尾を引きながら窪地に飛び込んできた火球が大爆発を起こし、辺りはたちまち火の海となった。爆発音と閃光で戦士たちが一時的に前後不覚になる。その時、煙の向こうから矢が飛んできた。一つ二つではない。それこそ雨のように降り注ぐ。

(クソっ! だがこの程度で!! )

〈(鋭い咆哮)落ち着け! シールドを張るのだ! (再び咆哮)戦士たちよ〉

その命令に我を取り戻した一部の戦士たちが速やかにマジックシールドを詠唱、展開する。
たちまちの内にマジックシールドが強固な防御壁となり、降り注ぐ矢尻や火球を跳ね返す。
その様子を見ながら前衛戦士長は素早く残った人数を数え上げる。

(…10人ほどやられたか。うん? )

相変わらず矢が雨のように降り注いでいるが、それは全てマジックシールドで跳ね返している。あとは射手のいる場所を突き止めて魔法を叩き込むだけだ。必要なら辺り一帯を焼き払ってもいい。
だと言うのに。

〈(蛙を踏み潰したような音)ゲェェェエエエエェェェ!! 〉

〈(ゴポゴポと泡立つような音)グハァァァアアアアアァァァァアアア! 〉

何故、戦士たちがやられている?!!
いや、良く見れば黒い影がカサカサと動き回り戦士たちに襲い掛かっている!
だが爆発の閃光と爆音に紛れて気付いていない!

〈中に入り込まれているぞ! 応戦しろ!! 〉

そう咆哮した瞬間。
地面が爆発した。



察知された事に気付いた奇襲部隊はそれまで身を潜めていた地中からその全部隊を地上の敵へと襲い掛からせた。



魔法使いたちがマジックシールドで足止めしてその間に後方の者たちが攻撃魔法を詠唱しようとするが。しかし。

〈シ、シールドが切り裂かれる?! 〉

マジックブレイドでも何でもないただの黒い刀に、突破不可能なはずのマジックシールドを喰い破られるという理不尽に恐慌に陥りながらその戦士は斬殺された。

マジックシールドを展開している術者を突破した影は次々と攻撃魔法を詠唱中だった無防備な魔法使いたちに襲い掛かっていく。その様は例えて言うなら、まるで弱った動物にゴキブリが殺到して食い荒らすかのようであった。



G-0249645096は戦士長と思しき人物へ襲い掛かった。
素早くマジックシールドを展開する敵機。しかし焦らない。

P事象N正常化フィールド。前方に集中≫

魔法という不自然が正常な自然へと矯正されていく。物理法則に反したシールドはその存在が維持できなくなり弱体化、消滅した。
咄嗟にマジックブレイドを展開する敵機。だが遅い。

≪抜刀≫

背面補助腕によって抜刀に最適な角度に移行された鞘から主刀を抜き打つ。
一合目は防がれる。しかし予測のうち。
二合目、敵機は上段に大きく振りかぶる。こちらも鏡に映したように上段に振りかぶる。
主腕に握り締めた刀にM-FCS統合火器管制システムを通じてデータ入力。
主刀内部の機構が作動。能動的に重心が移動し、最適な角度・速度に微調整。
振りかぶった瞬間は慣性を相殺し、斬撃の瞬間にインパクトが最大になるように。
互いの剣が交錯する。がっき・・・と噛み合うかと思われたが。

「予測通り」

敵機のマジックブレイドは見事に切り落とされていた。
呆然とする敵機に対してメイン・スラスターを吹かしての踏み込み。
左下段からの切り上げが敵戦士長を両断した。



前衛戦士長はショックで朦朧とする頭で周囲を見回した。
部隊は散り散りになった。しかも、樹の上から矢と火球を射掛けていた敵部隊が降下して掃討戦に加わっている。これでは生き残れる者はいないだろう。
戦士長は最後の力を振り絞って、自分を斬り殺した影へ向かって罵った。

〈こ、の…忌々し、い………”人間”、め……〉




あとがき

サイバーパンクのほうが好評だったので続けて見ました。
ちなみにオチはあるSFから取った物です。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (また続きました)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/23 23:42
戦略Strategicネットワーク、異常無し≫

戦術Tacticsネットワーク、異常無し≫

≪全回線チェック終了≫





≪D-3000G60シリーズ全機に通達。覚醒せよ≫





意識が連続性を持つ眼を醒ます
非連続意識において自らが選んだ選択がフラッシュバックする。

≪知る/知らないでおく≫

知る

≪生きる/消える≫

生きる

≪創り出す/闘う≫

闘う

etc.etc…

≪今作戦に、志願する/しない≫

志願する



入力インストールされたデータがまだ馴染んでないのか、少し頭がクラクラする。
反射的に頭を振ろうとして、現段階では未だ頭部が組みあがっていない事にD-3000G63[種族:ホモ・サピエンス-兵士階級]は気付いた。
少し思考してから戦略ネットに接続。自機の状況を俯瞰して見ることにした。

莢を連想させる培養ポッドの中に大脳パーツが浮かんでいる。左脳、右脳、海馬、視床下部、脳幹などがバラバラの状態で互いに緩く神経線維で接続されている。どれもホモ・サピエンスDNA遺伝子から慎重に培養され構築された物だ。現在の自らの意識は各パーツの演算結果を戦略ネット上で統合して仮想的に構築されたものであると理解した。

と、次の瞬間。自意識が自機に吸い込まれるような錯覚を覚えた。咄嗟に戦略ネットにアクセスして俯瞰状況をモニターとして挿入する。モニターの中で見る見るうちに中枢パーツが組み上がっていく。完全に組み上がる前に頭蓋パーツが挿入管でポッドに送り込まれてくる。なるほど、頭蓋骨は強度を上げるために一体成形で造り、モジュール毎に分割した脳を頭蓋骨の内で組み立てるのか。

感心している間にも次々と機体を構成するパーツが挿入管から送り込まれてくる。一体成形された骨格パーツ。密度の高い筋線維パーツ。ダメコン仕様の内臓パーツなどなど。その全てに入念にタグ付けが成されていた。タグの情報によれば、全てホモ・サピエンス因子が丁寧に織り込んであるらしい。

最初に骨格パーツが仮組みされ、血管や神経線維が3次元的に張り巡らされる。その後内臓や筋線維、感覚器官その他器官のパーツが骨格の隙間から適宜配置される。そこで一旦戦略ネットから信号が送られ、各器官が蠕動し自身を最適位置へと調整すると共に各パーツの間に空いた隙間を埋めた。

手術用の蟲たちがわらわらと群がると、素早く各器官を連結し始めた。齟齬が出ないように全てが一度に行われた。連結が完了すると仮起動テストだ。蟲たちが潮が引くように退避する。全身に電子データや化学言語、戦略ネットのデータが奔り相互補完の様子を見る。どうやら異常は無いようだ。

それから、最後の骨格パーツとして装甲骨が運動性能を下げないよう配慮されながら連結されていく。後は各種コネクター・ハードポイントと表皮装甲、幾つかの備品を連結するだけだ。

そこまで思考したところで、戦略ネットから控えめな呼び出しコールが鳴っている事に気が付いた。
臍の燃料注入口に注入ホースがドッキングするのを横目で見ながら意識の片隅に置きながら戦略ネットに没入ダイヴした。

≪おはようございますD-3000G63≫

≪おはようございます≫

≪新規データをインストールします。承諾しますか? ≫

≪承諾します≫

≪インストールを開始します≫

それから、新規データの奔流にしばし溺れた。
必要な事だけピックアップして内面化する。
戦況は芳しくない。敵の領土は広大すぎる。制空権の奪取。失敗。障害。ドラゴン? 駆逐、失敗。? ドラゴンのファイルが幾つかに分かれている? こちらのファイルではドラゴンの撃破率は70%を超えたとされている。『自軍の航空戦力は旧来の竜騎兵を戦術的に上回っている』おかしい。何故制空権が取れない? ドラゴンという単語には幾つか別の意味があるようだ。制空権奪取の障害となっているドラゴンを検索。………我が軍の脱走兵?
サーチ・エンジン・パーツを呼び出しコール

≪サーチ・エンジンに質問。回答を要求。我が軍の種族はどの分類か? ≫

≪回答。我が軍は多種族の複合型です。主に人類と昆虫類、甲殻類に分類されます。質問は正確にどうぞ≫

≪再質問。70年前に自軍から集団脱走した兵士階級の種族は何か? ≫

≪回答。それが正しい質問です。70年前に我が軍から集団脱走した兵士階級はその全てがホモ・サピエンスです。現在もまだ≫

≪回答に感謝する≫

≪どういたしまして≫

思考する。培養ポッドから呼び出しコール。応じると同時に機体スペックと設計目的が自動インストールされる。
特殊空戦目的の特化型試作シリーズ。それが自機か。しかし自機の航空能力そのものは低い。情報処理能力は高い。指揮管制用か。だがそれにしては機体剛性がいやに強化されている。全身に連結された接続コネクターは一体何のためだ?
関連データがハイパーリンクされているので接続して参照しようと意識を差し向けた瞬間、強制呼び出しコールを受けた。

≪D-3000G60シリーズへ通達。連続意識実体をスペース領域H-9662.K-6643.V-2535.へ集結せよ≫

≪了解≫

意識実体を指定された空間へ転送する。





≪D-3000G60シリーズに告ぐ。諸君らが設計された目的は唯一つ。ドラゴン狩りである≫
≪未だドラゴンについてのデータに習熟していない者は後で参照するように≫

≪諸君らが相手にするドラゴンは竜騎兵などと言う火を吹くトビウオ*などではない。ましてや未開拓ゾーンをぶんぶん飛び回っている凶悪無比な重武装の飛行性昆虫類**でもない(ハイパーリンクを参照しますか? )≫

*竜騎兵の使うドラゴンは一般的にはトビウオが進化したものが使用されている。

**代表的なものは誘導飛翔体生体ミサイルと筋圧式ダート、それに強靭な格闘戦用の大顎と六肢を持つトンボドラゴンフライである。

≪どうやら事前にデータを参照して来た者もいるようだな。その通り、諸君らが相手にするのはあの悪名高いドラゴン現人龍なのだ。難攻不落、予測不可能、会敵即死の三拍子揃った悪夢の産物だ≫

≪だが今回は勝算がある。遂に開発部に特別予算が降りたのだ。これによりあまりの高コストに建造を断念してた対ドラゴン兵装がやっと完成した≫

≪ドラゴンを倒すにはこちらもドラゴンを投入するしかない≫
≪ドラゴンだ。諸君らはドラゴンに成るのだ! ≫

≪これが、あまりにも採算が合わないために封印指定されていた対ドラゴン用追加兵装。D-3000だ≫

それまで黙って話を聞いていたD-3000G60シリーズの所に、戦略ネットを通じてファイルが転送されてきた。到着と同時に自動解凍される。
どうやら動画のようだ。
暗闇の中、何かが蹲っている。そこに光が差し込む。
逆光の中、禍々しいシルエットが浮かび上がる。
生物的、というか恐らく生体兵器なのだろう。艶消しの流線的なフォルムにミスマッチな巨大な吸気口エアインテークと、推力ベクトルの軸線に合わせる様に突き出された幾つもの長大な武装が特徴的な機体であった。
だが、最大の特徴は、生物であれば頭部が存在する筈の場所が大きく抉り取られる様に切除されていることであった。

その瞬間、D-3000G63は自機の設計目的を正しく理解した。





あとがき

感想を頂いたのが嬉しくて続けてしまいました。
ドラゴン・ハントを描くかどうかは未定です。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (ドラゴンハント・前日譚)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/23 06:43
絶叫スクリーミング円環サークル切断波カッターが発動! 全機回避! ≫

双胴型カタマランのドラゴンの特徴的な胴体のあちこちの装甲がぴしりとひび割れ、その隙間から無数の攻撃用スピーカー声帯がずらりと露出する。
フィフィフィフィフィフィフィというチャージ音と共にドラゴンの周囲の空間が揺らめき出す。

≪重力波、光波共に限りなく零に近づいて行きます! ≫

≪事象改変を確認! 来るぞ! ≫

ドラゴンの攻撃用スピーカー声帯から衝撃波の絶叫に翻訳された確率改変コードが、ドラゴンを中心として円環状に放たれる。
それも一つではない。幾つもの円環が重なり合わない様に全天周に向けて放たれた。
空を死の絶叫が幾重にも満たす。
その周囲をステルス化して飛び回っていた〈人間〉たちは即座に回避運動に移ったが、運悪く一機が円環に衝突してしまった。
その瞬間、衝撃波に内包されていた確率改変コードが解凍。数フェムト秒だけ量子的重ね合わせの状態になった後「切断」という事象を強制的に確立。基底現実に顕現。
運の悪かった一機は綺麗に十七分割されてしまッた。

≪F-63924がやられた≫

≪クソ。別働隊はまだか? ≫

≪この化物め≫





70年前、営巣連結軍は大きな過ちを犯した。とても大きな過ちを。
それ以前から兵士に対して感情抑制手術は行われてきた。
だが、それは不完全なものだと当時の上層部は考えていた。
だから、完全に感情を除去可能な施術方法が確立された時、一も二も無く飛びついてしまった。それが何を意味するかも考えずに。
折りしも、前線では魔法使いたちが攻勢を強めており、兵士一人一人の戦闘能力を100%引き出すことの出来るこの施術は、同じく当事開発されたばかりの初期のフライト・ユニットと共に新規生産された兵士全てに対して実装された。

後の調査では、実戦配備を急ぐ余り試験運用の項目を幾つか省略して試験期間を短縮したらしいことが分かっている。

急遽戦闘プログラムと飛翔プログラムだけ流し込まれた〈人間〉たちは前線へと増援として送り込まれ、一斉に起動させられた。その数およそ5万。

それが悪夢の始まりだった。





キィィィィィィィとガラスを引っ掻く様な甲高い音が彼方から迫ってきた。

≪別働隊か?! 遅いぞ! ≫

高速で此方へ音源が迫ってくる。途切れ途切れの思考ノイズと共に、一切の減速無しで。

≪おい、どうし…≫

≪どけどけぇ! 退避しろぉ! ≫

戦闘宙域へ、もう一体のドラゴンが乱入してきた。
こちらのドラゴンは脊椎に沿って無数の飛翔翅が生え揃っており、両脚は完全に脊椎が延長した尾と統合されている。肩部と胸部は大きく発達しており、腕部は胴体内部に格納されているようだ。飛翔翅は一番前の翅が最も大きく、後ろに行くに従って翅のサイズは少しずつ小さくなっている。発達した肩部と相まって上空から見下ろすと逆二等辺三角形が飛翔している様に見える。

≪標的αか?! ≫

≪標的βはどうしたぁ?! ≫

≪この宙域だ。予定通りだな≫

≪こっちはαを誘導するために半数が墜とされた! そっちは? ≫

≪監視中に一人堕とされた。頃合いだな、距離をとるぞ≫

さっ、と蜘蛛の子を散らす様に〈人間〉たちが距離を取るために離れていく。
標的β、双胴型カタマランドラゴンを監視していた部隊の隊長はじりっと戦闘宙域の中心へと視線を注いだ。
そこでは、双胴型カタマランドラゴンと逆二等辺三角形型ドラゴンがちょうど互いを認識し戦端を開いた所だった。
その様子を見ながら標的αを誘導していた部隊の隊長は呟いた。

≪化物には化物か……≫

ドラゴンの頭部、巨大な胴体に不釣合いに埋まっている自分達と同じ右眼をくり抜かれた〈人間〉の顔を見つめながら標的β担当部隊の隊長は小さく返した。

≪そうだな。ドラゴンに勝てるのはドラゴンだけだ。70年前からずっと………≫





暴走。
事態は当初そのように考えられていた。
前線で起動した兵士たちが突如としてこちらのコントロールを離れれば、部隊が何らかの理由で暴走しているのだと考えるのは当然の成り行きであったし、それは半分ほど当たっていた。
ただちに従来の旧型で構成された予備部隊が暴走した部隊へと向かい、その間も司令部が兵士たちに対して呼び掛けを行っていたが、新型の兵士たちは何の反応も返さなかった。

…現場に到着した予備部隊が目撃した物は、引き留めようとした旧型を殲滅し敵へと突撃している新型たちの姿であった。
随伴していた電子戦機が彼らへのクラッキングを試み、その結果を解析した司令部より”手出し無用”の指示があり、予備部隊はそのまま事態が収束するまで戦場を監視し続ける羽目となった。





標的βが全身から絶叫スクリーミング円環サークル切断波カッターを放つ。死の絶叫が標的αに直撃する。標的α、P事象N正常化フィールド、確率ジャマーを展開。絶叫スクリーミング円環サークル切断波カッターを無効化。
ただの衝撃波となった絶叫スクリーミング円環サークル切断波カッターの残滓が装甲表面にぶつかり虚しく拡散する。
標的αの胴部、背面、肩部、尾の装甲にぴしりと亀裂が走る。と、装甲がぱたぱたとめくれ上がるようにしてレーザー照射機構が顔を覗かせる。全身から全方位に向かって一斉に対空レーザーが照射される。レーザーの波長が紫外線→X線→赤外線へと目まぐるしく変調される。その変調パターンが確率改変コードを記述。レーザーは直進するという事象を捻じ曲げレーザーが歪曲するという事象を強制的に確立。基底現実に顕現。
全身から照射されたホーミング・レーザーが標的βに殺到する。
標的β、空間無効化フィールドサプレッサーを反転。空間歪曲場でホーミング・レーザーを防御。
蜃気楼のような空間歪曲場に衝突したレーザーが光の華を散らす。

互いに小手調べは終了。
P事象N正常化フィールド、空間無効化フィールドサプレッサー、時間整流フィールドレクティフィケーター、全て展開。確率ジャマー、異相空間妨害干渉波インターフェアエンサー、出力最大。

激突。





結局の所、感情は戦闘兵器に無用などと言う考えそのものが浅はかであったと言う事、ただそれだけに尽きる。

外部からの強制コントロールは早々に否定された。コントロールを敵に奪われると言う失敗が何度も続いた為だ。だからこそ最後の判断は兵士個人に委ねられた。IFFが味方を示していようと司令部が友軍であると示唆していようと、引き金を引くかどうかは兵士一人一人の判断に任された。
その事実をもっと尊重するべきだった。

開発部はやり過ぎた。
兵士を完璧な戦闘機械に仕立てるために、まず死の恐怖を切除した。
敵の砲火の中へ突撃させるために生への欲求を切除した。
どんな時も冷徹になるように怒りを切除した。
目的を見誤らないように憎しみを切除した。
進む足が鈍らないように悲しみを切除した。
敵地に置いて常に臨戦状態でいるために夢を切除した。
部隊の連携を崩さぬよう戦闘の高揚/快楽を切除した。Etcetc……
戦闘に必要無い感情と言うノイズは全て外科的に削除されていった。
そして最後に、故郷を、家族を想わぬよう愛情を切除した。

確かに完璧な戦闘機械が完成した。
だが、何故兵士が命を掛けて戦うのかもっと考えて見るべきだった。
国家のために。すなわち忠誠心によって。
家族のために。すなわち愛情によって。
仲間のために。すなわち友情によって。
報酬のために。すなわち欲望によって。
戦闘それ自体のために。すなわち快楽のために。
兵士が命を掛ける理由は情であり欲望であり何かを手に入れるためだった。それは報酬かもしれないし国家の平穏かもしれないし家族の安全かも知れなかった。
そして、5万人の兵士の脳からは全ての感情と欲望が削除された。兵士が命を掛けて戦うその理由が。全て。
生存本能が削除された彼らには生きるべき理由は何も無かった。
忠誠心も、戦闘欲求も削除された彼らには戦うべき理由はナニモ無かった。
故に、5万人の兵士たちの行動原理は今もって不明である。



結果から言えば。
5万人いた兵士のうち2万人が敵への無謀な突撃を繰り返し、自機が破壊されるまでひたすら盲目的に戦闘を続けた。
残り3万人は戦闘へは参加せず、フライト・ユニットを使って当て所なく飛翔。
敵味方とも戦力を大幅に損耗し、戦線が膠着状態に陥った2年後にようやく再発見された。
そして、それが最初のドラゴンの目撃例でもあった。





人転じて龍と成す。

魂無くば人にあらず神にあらず魔にあらず。

これ現人龍なり。





異相空間潜航、異相空間妨害干渉波インターフェアエンサーによって不可。
確率改変攻撃、確率ジャマーによって不可。
自機加速・時間停止攻撃、時間整流フィールドレクティフィケーターによって不可。
空間転移・空間歪曲、空間無効化フィールドサプレッサーによって不可。

≪と、くれば通常兵器による攻撃は当然だと思うんだが? ≫

≪甘いな。奴らの脅威は量子兵装とそれを支える演算パワーだ。隠し玉の一つや二つ、無い筈が無い≫

≪……ノイズの存在しない、純粋理性の怪物か。一体何を考えているんだか≫

≪そもそもだな、感情や欲求が無い存在が我々が言うところの「思考」をするのか? 私としては甚だしく疑問だな≫

≪フムン。確かに70年間ずっと巡航飛行を続けて、その間やったことと言ったら決まった高度の決まったルートを飛行するのと自分以外の飛行物体を攻撃することだけだったからな。だが連中は我々には想像もつかないほどの自己改造・自己進化を遂げている。それでは思考の証明にはならない? ≫

≪いや。高度な対応能力は確かにある。だが、我々のような思考は恐らくしていない。我々は過去→現在→未来と線状リニアな思考を行っているが、それでは量子兵装を理解できない。しかし、感情という錨の存在しない自由な理性は………複数の過去と未来を同時に認識しているのかもしれない。だとしたら、それを理解することは感情を備えた生物には不可能だろう≫

≪かつての同胞も、いまでは3次元生物かどうかさえも怪しいと言うわけだ。ム、動きがあったぞ≫



グルグルと背後を取り合っていたαとβが、ばっと離れて距離を取る。
示し合わせたかのように対称的に旋回。ブルファイト。

≪標的β機首より重力波確認! ≫

≪標的αのP事象N正常化フィールド消失! 仕掛けるつもりです! ≫

標的βの双胴型カタマランの機体を砲身レールとして、重力波がその間で渦を巻く。

標的αの胸部が虹彩が開くように展開。黒々とした穴をβへと向ける。

≪何だか分からんがヤバそうだぞ≫

≪総員距離を取れ! ≫

旋回終了。互いに向き合った状態になる。
βが先に仕掛ける。
ギリギリギリと渦を巻いていた重力波が収束レールによって加速して発射される。

重力渦動砲撃グラビティブラスト?! ≫

てんでバラバラの出鱈目な重力ベクトルで周囲の空間を引き裂きながら重力渦動砲撃グラビティブラストがαに激突。
爆炎に包まれるα。

≪やったか?! ≫

≪あ、バカ≫

爆煙の中からボロボロになったαが躍り出てくる。
肥大化した脊椎はひしゃげ、綺麗に生え揃っていた飛翔翅は障子紙のようにズタズタだが、胸部の砲口は辛うじて無傷。
そのまま突進したαがβに激突。
その瞬間、αの胸部砲口から”闇”が迸った。

≪なんだあの攻撃は?! ≫

≪判りません! 重力波、電磁波、素粒子、一切検出されず! 全く不明です! ≫

“闇”がαの砲口内へ引いた後、そこには全身のあちこちが”消失”したβが残された。
そう、切り裂かれたのでも焼き切られたのでも叩き潰されたのでも無い。綺麗に”消失”しているのだ。

βは致命的な損害を負ったのか急激に高度を落として行く。
よろめきながらその後を追うα。恐らく止めを刺すつもり。

≪2機とも損傷を負っているな? よし、状況は理想的だ。本隊に通達、ドラゴンを鹵獲可能。繰り返す。ドラゴンを鹵獲可能、直ちに出撃されたし≫

≪了解。我が部隊は既に出撃。後0011で到着。貴部隊はドラゴンを足止めせよ≫

≪了解≫

≪全機、突撃せよ! ≫







結論から言うと。

標的βは死亡。入手した死骸の状態は比較的良好。現在は装備されている兵装、使用されている技術のサルベージとその解析の最中。

標的αは活きたまま鹵獲。頭部は念のため切り離し、複数の生体演算システムで修復した胴体を起動。兵器運用できないか模索中。



標的α、βをそれぞれ監視していた両部隊はドラゴンの足止めのため突撃し時間を稼いだ後、全滅。生存者無し。交戦データはサルベージされ次回の作戦のために保存。



状況終了。





あとがき

この世界は両棲類登場以前なので、トカゲのような爬虫類のドラゴンは登場しません。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (読者の皆様方へ謝罪)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/21 18:26
自機、F-485426[種族:ホモ・サピエンス-兵士階級]は今日も未開拓ゾーンの密林ジャングルを進む。



F-485426は改造人間である!



……突発的にα世界のサブカルに倣ってみたが、未改造の人間が主流ならば兎も角、非改造・非ブロックビルド・非電脳化ブレイン・マシン・インターフェイスの人間が0.001%を切っている(*1)世界ではうまく機能しない冗句ジョークである。

*1-研究用の試験体や女王種の母体のプロトタイプなどの極少数の人間は例外的に通常の人間のように誕生する。

そも、このような下らない冗句ジョークを不随意に飛ばしてしまうのは全てこの密林ジャングルが悪い。いや、この行軍が悪いと言うべきか。
じめじめと湿っていて薄暗い密林ジャングルを、長距離偵察部隊としてただただひたすら探検と地図マップ製作に費やす日々。脳改造手術を受けていても、退屈だけはいかんともし難い。脳の精神状態を非意識化してしまえば退屈からは開放されるが、今度はこの危険な密林ジャングルから生きて帰れなくなる。
こういうのを何と言ったか。そう、確か、「退屈は猫をも殺す」だったか。”猫”とやらはこのβ世界には未だ発生していないが、さぞかししぶとい生物なのだろうと想像する。

≪F-485426、停止せよ≫

埒も明かない空想を撒き散らしながら進んでいると、突然停止命令が下された。意識野に下方向の注意線が走り、それに釣られてセンサーを下に向けると。

≪Oh…≫

気が付けば、辺り一面がびっしりと焦げ茶色の地雷キノコ(*2)に覆われた群生地へと足を踏み入れてしまっていた。

*2-地雷キノコは内部でピクリン酸やニトログリセリンなどを合成する爆発性キノコ類の俗称。75年前に起こった第一次大規模メガ生物災害バイオハザードの影響で、初期Ver.の先進的アドバンスド免疫イミュニティシステムが自然界に普及したため、生物毒の大半は無効化された。そのため、従来の生物毒で武装していた生物の大半は別の化学物質で武装し始めた。爆発性化学物質はその代表的な物の一つ。

地雷キノコを踏まないように慎重に後退りする。右眼の装甲眼帯を開くと、偵察用の”蜂”を5機の内4機まで出して(*3)地雷キノコの詳細なマッピングを始める。もちろん自機のセンサーもフル活用する。

*3-一般兵では全天周視界を得るために”蜂”が通常3機右眼窩に標準装備されているが、長距離偵察兵は探知能力センシング向上のため、右眼窩を削って”蜂”が5機収納できるように眼窩を拡張している。

無事マッピングとマーカー埋め込みが終了し部隊へと帰還した。もちろん注意力散漫で絞られたのは言うまでも無い。





進軍を再開。
途中、モルフォ蝶と擦れ違う。挨拶代わりなのか、幻惑するような虹色のデコイ幻影ホログラムをさっと投射される。肉食蝿などならともかく人間には効果は無いが、美しい代物だったのでしばし足を止めて見入る。



夕暮れ。
野営地に向いた適当な場所を見つけると、骨格を超振動させて素早く野営用の穴を掘削する。掘削し終わると内部を分泌した化学物質で崩れないようにコーティング。装備一式を収納すると自身も内部に潜り込み、泥と草で出来た網蓋を閉じる。その際、各隊員と連絡を取り合うための有線ケーブルをそれぞれの偽装穴と繋げるのも忘れない。
今日の進軍で溜まった廃液を濾過装置へ排出し、新鮮な生体燃料を腰部の燃料注入口から摂取しながら、しばし夕暮れを眺める。

「あ、流れ星」

ついっ、と光の線が宇宙から地平線に向けて堕ちる。
と。
雷光を纏った光線が地上から流星目掛けて奔る。
発射地点と思しき場所が急に騒がしくなる。雷撃が何度も走り、低い爆発音が連続して轟く。火線が幾筋も宙にラインを描く。

≪腐れ谷が荒れているな。何かあったのか≫

≪腐れ谷? ≫

≪ああ、蔑称だから知らないのか。アサバスカと言えば通じるか? ≫

≪既知範囲内で最大の放射性物質鉱脈の在るあの? 地底怪獣の巣窟の? ≫

≪そのアサバスカだ。あそこに一度でも遠征に行けば、何故腐れ谷などと言う蔑称が付いたのか理解できる。あそこは、放射能の地獄だ≫

≪…理解する日が来ないことを願います≫

腐れ谷のある方向を眺めながら自己修復を開始する。途中、何回か地底怪獣の発射した超ウラン・ビームが見えた。流れ星に興奮しているのだろうか?
宇宙からの侵略者と言う学術階級の戯言を、何故かふと思い出した。まったく馬鹿らしい。しかし、もう少しだけ真剣に考えて見るべきかも知れない。
飛来するとしたら一体どのような物になるだろう。アサバスカの地底怪獣のような重ビーム砲や戦術核で武装した航宙生物だろうか? それとも試作部隊で実験中のピコ0.000000000001・ウィルスのような極微小知的生命体だろうか? ひょっとしたら、理論上の存在である電磁的なソリトン波生命体かもしれない。
そのような空想をつらつらと弄びながら、ゆっくりと自機の大脳を休眠状態スリープ・モードへ移行させていった。周辺警戒は脊椎に沿って組み込まれた3次元梯子状神経網が自律して行ってくれる。明日に備えて、今日はもう眠ろう。




一方その頃、アサバスカは腐れ谷では意気揚々と地球を侵略しにやって来たエイリアンたちが地底怪獣たちにおいしく頂かれていた。




あとがき

他の文章もちょくちょく改訂しているので、宜しかったら読み返して見てください。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsファンタジー (バイク特集)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/02/20 21:57
≪気を付けろ。この辺りには凶暴な肉食獣が出没する≫

その言葉を受けて、甲殻類の一種である”彼”はデータを探って見た。
……データ参照中。

≪警戒レベル3? 8mクラスか? ≫

≪いや、2mクラスだ≫

≪レベル3は過剰では? ≫

≪8mクラスしか検索していないのか? それなら納得行かないのも無理は無い。今データを…待て。来たぞ! 敵襲! 群狼ウルフパックだ!! ≫

音響センシング警戒網に複数の排気音エグゾーストが感知された瞬間、輸送車輛コンボイを護衛していた護送戦闘部隊が迎撃体制に突入。

≪後方より排気音エグゾースト複数接近! ≫

≪D-3、H-6、両機は輸送車輛コンボイ後方に移動。迎撃布陣を展開せよ≫

≪了解≫

その瞬間、緩い丘陵を飛び越えて黒い影が空中に躍り出てきた。

≪あれは?! ≫

影を認識した瞬間自動的にハイパーリンクが展開。情報が流れ込んできた。

*ダンゴムシZX012R-肉食性ダンゴムシヴュルガーレ一輪単車モノバイク型。群性狩猟生物。推定最大速度320km/h。吸気口エアインテーク数4。可変吸気管システムV-MAX。生体モーター内蔵超伝導ホイール。キチン・セラミック複合外殻フレーム。武装-ジャイロジェット短ロケット弾マシンガン。生体対装甲貫徹ミサイル。生体対人マイクロミサイル。近接格闘肢。突撃衝角。etcetc...





逃げる輸送車輛コンボイに対し後方からZX012Rが追い上げてくる。車輛の前に壁になるように装甲車がその四脚を軋ませながら滑り込む。2機のZX012Rがジャイロジェット短ロケット弾マシンガンを射撃開始。残りの5機のZX012Rは迎撃部隊を迂回するコースに機動マニューバ。そうはさせじとジャイロジェット短ロケット弾ストーム*を装備した攻撃肢を振り上げる装甲車。

*-メタル・ストーム・システムをジャイロジェット短ロケット弾に応用した兵器。面制圧能力に優れ、単射、連射も可能。

しかし攻撃中の2機のZX012Rがその隙を突いて一輪単車モノバイク特有の小回りを活かして弾幕を回避しつつ吶喊。

≪しまった≫

ZX012Rの衝角が紫電を帯びる。古典的な対装甲肉薄攻撃、即ち衝角突撃。
弾幕と脚部をくぐり抜けた1機が電磁衝角を軽装甲の脇腹に突きたてそのまま切り裂く。その際機体後部から黒い物が幾つか零れる。同時にもう1機が装甲片で覆われた関節部の腱を鎌状の格闘肢で切断する。たまらず攪座する装甲車。無事な方の攻撃肢を大きく振り上げ後方に抜けたZX012Rを狙おうとするが。

爆発! 爆発! 爆発!
ZX012Rが残して行った置き土産、対装甲小型爆雷が攪座した装甲車の下で爆発。甲殻と内臓を撒き散らしながらたまらず絶叫する装甲車。
迎撃部隊を片付けた2機はそのまま追撃に移った。



≪D-3、H-6がやられた≫

≪死んではいない。が、行動不能だ≫

≪もう少し進めば丘陵を抜けて草原に出る。それまで持ち堪えろ≫

輸送部隊は草原に出るべく速度を上げた。遮蔽物の無い草原なら火力を活かせるからだ。



一方その頃草原からは獲物の臭いを嗅ぎ付けた別働隊のダンゴムシヴュルガーレたちが続々と丘陵地帯に集結していた。



≪警報! 小型飛翔体多数接近≫

丘陵を飛び越えて対人マイクロミサイルが降り注ぐ。直ちに迎撃する護送部隊。ジャイロジェット・ロケットとニードルが雨の如く噴き上げる。迎撃されて爆発するマイクロミサイル。と、次の瞬間。激しい閃光と電磁バーストが護送部隊を襲った。

≪フラッシュバン?! 不味い! ≫

センサーを潰された護送部隊を嘲笑う様にZX012Rたちが次々と丘陵を越えて出現。空力制御ウィングを展開。スパイクと相まって丘陵の側面に張り付くようにして輸送車輛コンボイと並走。
盲目となった護送部隊が兎に角めくら撃ちして確率的に命中させようと躍起になる中、冷静に照準レーザーを照射。超音波ソナー、磁気センサーで誤差修正。
下部甲殻カウルが筋力によって展開。機体に比して長大な対装甲貫徹ミサイルが出現。発射筒に射出用の圧搾ガスが充填され始める。

≪げっ?! ≫

前方の丘陵地帯の出口からもZX012Rたちが出現。こちらは既に対装甲貫徹ミサイル射出準備完了。

輸送車輛コンボイの盾になれ。急げ! ≫

後方から追撃してきたZX012Rたちもようやく追いついて来た。こちらも既に射出準備完了。

そして、終わりの鐘が鳴らされた。

前方・側面・後方から同時に対装甲貫徹ミサイルが斉射。
センサーが遅蒔きながらようやく復帰した護送部隊が最後に捉えた物は自身の急所目掛けて殺到してくるミサイルの群れだった。
タンデム弾頭の一段目、装甲侵徹弾が防御兵装を突破して装甲を穿つ。二段目の焼夷HEAT弾が穿孔痕から内部に飛び込んで起爆。ダメコンが意味を為さなくなるほどの熱量と運動エネルギーで柔らかな内臓を蹂躙。弾薬や生体燃料に引火した機体は内部から爆散した。

断末魔と共に次々と炎上・爆発していく護送部隊。
自らが仕留めた相手には眼もくれずにZX012Rたちは鈍重な輸送車輛コンボイに殺到し、衝角や鎌で節足を破壊し下腹部の走球ローラーボールの駆動部位を電撃で麻痺させていった。
そこからはもはや”戦闘”ではなく”食餌”であった。

大顎から牙を剥き出しにしたZX012Rに齧り付かれて弱々しく悲鳴を上げながらもがく輸送車輛コンボイ
戦闘に参加していた全ての機体がぞろぞろと集まり、滴り落ちる熱い生体燃料や、滋養のたっぷり詰まった湯気を立てる内臓にむしゃぶりつく。強靭な筋肉にかぶりつけば深い旨味の肉汁が溢れ出し、中枢神経は味噌の様にこってりとした味わい。何よりも、カーゴスペースに不活性化状態で搭載され輸送されていたクローン培養された人体パーツときたら、アンミツアブラムシや似我蜂の幼虫にも勝るとも劣らぬ珍味であり、装甲化甲殻をベリベリと剥がしたZX012Rたちは先を争ってこの積荷に殺到した。




#未完成ですがせっかく書いたのに肥やしにするのももったいないので一応投稿しておきます。



もし、現代人の感性を持った者がこの場にいれば、スズキのハヤブサやY2Kなどのモンスター・バイクを更に大型化した上にバッタやゴキブリ、クワガタムシなどの意匠を盛り込んで流線形に再設計した怪物、とでも表すかもしれない。

夜の闇に紛れる様な漆黒に深紅に輝く眼、流れる様な青いラインが特徴的な機体であった。

機体の左舷に沿うように半ば露出した超伝導-二重反転フライホイールがその回転数を上げる。右舷に突出している重ビーム砲(*1)が砲撃モードに移行スタンバイ。背鰭にも似たスタビライザー安定装置が次々と立ち上がる。砲身バレルが自己診断。チェック終了。砲身沿いに並んだチェックランプがオールグリーンを示す。

*1-試作対地重ビーム砲。プルバック式。使用するビームは酸化超ウラン元素溶液をイオン化したものを投射する。弾倉は肉厚のリボルバー・タイプで大口径シリンダーが5つ並んでいる。電力供給方法の問題から連射は出来ず、また機体に半ば固定されているため射界が狭い。しかし、それらの問題を補って余りあるほどの威力と射程を持つ。

標的ターゲット確認インサイト。ロックオン。超伝導フライホイールが火花を散らすほど回転数を上げる。予備電圧上昇ハイボルテージ。レーザー、超音波ビームで走査サーチ。誤差修正。砲撃準備完了。

「発射」

フライホイールのギアが重ビーム砲に接続ドッキング。蓄えられていたエネルギーが瞬時に膨大な電力に変換される。事前に臨界寸前までカンカンに圧縮され荷電されていた超ウラン溶液が狭苦しい薬室チャンバーから開放される。薬室チャンバー砲身バレルが供給される莫大な電力で嬌声を上げる。その黄色い悲鳴の中を灼熱の重ビームが亜光速に加速されて行く。背鰭状のスタビライザー安定装置から僅かに青白い放電が漏れる。砲口から重ビームが飛び出す。

網膜を灼き切らんばかりの閃光!
鼓膜を突き破らんばかりの爆音!

灼熱の光軌が敵巨大ゴーレムに突き刺さり、そのエネルギーを開放し地獄の業火となって巨大ゴーレムを土くれへと破壊し尽くした。爆炎の奔流はゴーレムの質量を天高く吹き飛ばすのみならず、その周辺を嘗め尽くし術者をも焼き尽くした。





あとがき

何か未完成な感じ。
もっと精進しなくては。



[25944] 【習作】 サイバーパンクvsリリカルなのは (番外編)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/26 21:48
#-以前とあるスレで「アルカンシェル最強! 」「アルカンシェル最強! 」としつこかった事があったので、ついカッとなってやってしまいました。そろそろ本気で反省するべきかもしれない。
(注 : ここの管理局は話の都合上少し改変してあります。こうしなければ話が進まなかったとは言え、不快に思われたら申し訳ありません)




もしかすると、あり得たかもしれない遥かなる未来……

そう、これもまた「人類」と言う概念を立体的に浮かび上がらせるために必要な選択肢。



「提督! 大質量物体が転移してきます! 」

「なにぃ! 」

時空管理局第3艦隊旗艦「クシュリナダ」にて驚愕の叫び声が上がった。

「奴らも次元航行船を所持していたのか?! 」

「はい、いいえ、お待ちください…………ち、違いますッ。生体反応確認! あれは生物です! 」

「なんだとぉぉお?! 」

「そんな馬鹿な! 」

「何かの間違いだッ。確認しなおせ! 」





強襲空母型航宙生物【レギオン群なす者級Ver.73-D5】はその400mにも達する巨体をギャリギャリと転移ゲートから引っこ抜いた。
転移ゲートが次々と開き、【レギオン群なす者級Ver.73-D5】が、機動砲艦型航宙生物【モス・バトラ雷焔の黒蛾級B-6型】が、突撃殲滅戦艦型航宙生物【ゼクトール・デストロイヤー角兜の剣皇級0079/96】がその威容を現す。
最終的にその総数は3000匹近くに達した。
数千、数万の人造ドラゴン【Mk-609】がその周囲を羽虫のように飛び回る。
羽虫と言っても、一人一人が60mから80mはあるが。

≪こちら人造ドラゴン/フラグシップ、ネオ・ドラゴン。Mk-609全機に告ぐ。P事象N正常化フィールドを戦闘宙域に展開せよ≫

≪こちら先遣艦隊旗艦【ホワイト白きバング破烈のドール人形】。時空管理局へ勧告を行う。各電子戦機は全帯域にて発信せよ≫



≪こちらは汎多重地球連邦加盟知性集団、【営巣ハイヴ連結体ネクサス】。貴文明は違法な魔力エネルギーを用いた文明を連邦の許可無く発展進歩させている。これは連邦法に於ける重罪である。直ちに魔力エネルギー及び魔導テクノロジーを破棄せよ。繰り返す、貴文明は違法な魔力エネルギーを用いた文明を連邦の許可無く発展進歩させている。これは連邦法に………≫





「提督! 」

「分かっておる! 戯けおってぇぇ……!! 返信! 」

「了解! 」



「こちらは時空管理局である。貴世界は危険な質量兵器を所持している。これは次元世界法に於いては極めて違法であり厳罰に処せられる。直ちに質量兵器を放棄し時空管理局の管理下に入れ。繰り返す、貴世界は危険な質量兵器を所持している。これは次元世界法に於いては………」





≪予想通りとは言え、遣る瀬無い≫

≪魔法使いは皆、敵だ。あの保守派どもを排除しなければ、改革派である我々拡張オーグテット人類ヒューマンに未来は無い≫

≪侵略の手先としていい様に使われている気もするがな……≫



≪基幹艦隊へ通達。交渉は決裂。艦隊決戦要請≫





「転移反応確認! 」

「奴らまだ増援が?! 」

「違いますッ。せ、戦艦ではありません! 全長50000m?! 」

「なにぃぃ?! 」



次元を押し割り円筒形の巨大な物体が莫大なエネルギーを浪費しつつ転移してきた。
その数93!!



「あ、あれはシリンダー型スペースコロニーですッ」

「違います! 高エネルギー反応検出。装甲、武装を確認。あれは、アサルト戦闘要塞化コロニー群巣とでも称すべきものです! 」

「馬鹿な! 聖王のゆりかごより巨大な戦闘兵器だと言うのか?! 」

「全艦隊へ通達! アルカンシェル発射準備! 」

「提督?! 」

「うろたえるな! 見掛け倒しだ、アルカンシェルで時空の果てへ吹き飛ばせ! 」





GooooooooooooOOOOOOOOOOOOooooooooooooooOOOOOOOOOOOooooooooooooooooo

時空域に不気味な重低音の波動ウェーヴが響き渡る。
その波動ウェーヴは木霊し幾重にもさざ鳴り宙域に響いて行く。

ネオ・ドラゴン。戦闘宙域のP事象N正常化フィールド強度が安定しません≫

≪仕方無い。あの御方・・・・が来られる前にけりを付けよう。Mk-609第1~第112大隊に通達。合体せよ! ≫



藪蚊のように艦隊の隙間を飛び回っていたMk-609人造ドラゴンたちが艦隊前方に集結し始める。
やがてそれらはある一つの形を取り始めた。

≪集結! 集結! 集結! ≫

変形トランスフォーム! ≫

Mk-609たちの肉体がギヂギヂと変形し出す。
パズルのピースのように変形した人造ドラゴンたちが次々と連結。各々がある種のパーツとなって一つの生命体へと変貌していく。
やがて、中心にエネルギーコアが形成され脈動を始める。
エネルギーラインが縦横に奔り、咆哮を上げる。
ここに一人のドラゴン、否、一つの生命体を一つの細胞とした全長150000mにも及ぶ超マクロサイズの巨大生命体が誕生した。

合体チェンジ! トゥルース・ドラゴン・Mk-609!! ≫



トゥルース・ドラゴンがその膨大な出力を用いてP事象N正常化フィールドを安定させていく。

≪頃合や良し。トゥルース・ドラゴン、全アサルト戦闘要塞化コロニー群巣。空間無効化フィールドサプレッサー、時間整流フィールドレクティフィケーターを展開せよ≫





「ててて、提督ぅ! 大変ですぅ! 」

オペレーターが動転して口ごもりながら報告を上げる。
眼前の光景に自らの常識を破壊され、反射的にヒステリックに返す提督。

「今度は何だッ?! 」

「しゅ、周辺宙域から魔力素が消失していきますぅ! 」

「………………………………何? 」



『こちらL級次元航行艦77号「アレサ」! 魔導炉心が不調、今にも止まりそうだ! 』

『こちらL級次元航行艦63号「シェスタ」! 艦内から魔力素消失! デバイス、艦内機器共にコントロール不能! 指示を、指示を願います! 』



艦隊の周辺に陣取っている艦から次々と悲鳴のような報告が上がってくる。

「バカな……AMF対策は全艦に施されているのだぞ、一体…」



彼らは知る由も無かったが、P事象N正常化フィールドとは物理法則の異常を正常に戻すフィールド。故に魔力結合を分解するAMFと違って、不自然である魔力素を消滅させて空間を自然な状態に戻しているのだ。



「こちらは旗艦「クシュリナダ」である! アルカンシェル発射可能な艦船は直ちに全艦とも「クシュリナダ」と発射タイミングを同期、アルカンシェルを一斉砲撃せよ!! 」

「提督! 艦船の2割が戦闘不能に陥りました、後退させるべきです! 」

「黙れ! こうしている間にも次々と船が脱落して行っている! 戦闘可能な船が残っている内に敵を叩くのだ! 」

「提督ッ! 転移反応が?! 」

「ぬぅッ! 」




脈打つ赤黒いオーラを発しながら、巨大な、何か途方も無く巨大な何か・・がゆっくりと転移してきた。

≪早過ぎる。もう来られたのか?! ≫

アサルト戦闘要塞化コロニー群巣各群は位置を空けろ! 親王殿下の御前ぞ! ≫



営巣ハイヴ連結体ネクサス】が第170代女王の姉、レメラニク親王の旗艦。
難攻不落
強大無比
絶対暴力
戦闘惑星ダハク・ゾマ要塞フォートレス形態モードが7機の近衛アサルト戦闘要塞化コロニー群巣群を引き連れて戦闘宙域に降臨した。



≪親王殿下! 何故殿下がここに?! ≫

≪何、戦闘惑星ダハク・ゾマが退屈しておってな。折り良く暴れられそうな戦場いくさばを見つけたから乗り込んで来ただけのことよ。のう? ≫

≪…はッ! 了解いたしました! 全艦隊に通達! 至急戦闘惑星ダハク・ゾマの射線を空けよ! これは最優先命令である!! ≫

≪ふふ、命が惜しければ、我が戦闘惑星ダハク・ゾマと敵との間には立たぬ事だ……≫





「な、な、何だあれはぁッ?!! 」

「信じられませんッ。少なくとも質量センサーはアレが同サイズの惑星の2倍から3倍の質量を持っていると計測しています! 」

「ハッタリだ! 幻術魔法に決まっている! あんなものが存在する筈が無い!! 」

「提督! 残存艦隊128隻のアルカンシェル発射タイミング同期しました! 」

「良し! セーフティ解除! 」

「セーフティ解除! 」

「セーフティ解除! 」

アルカンシェルの発射キーが箱状の火器管制機構ファイアリングロックシステムに差し込まれる。
さっと紅く染まっていく火器管制機構ファイアリングロックシステム
ほぼ同時に残存艦隊全てで同じ動作が行われ、未だに作動している制御機器、デバイスがタイミングを同期させていく。

「発射準備完了! 」

「発射準備完了! 」

「アルカンシェル、発射ぁッ!! 」





≪敵艦隊、相転移砲斉射! ≫

≪ハハ。さて、どうするかね? ≫

≪こういたします、殿下≫



時空管理局最大火力であるアルカンシェルがその名の由来通り虹色に光り輝きながら、時空管理局残存艦隊の夢と希望をのせて【営巣ハイヴ連結体ネクサス】へ迫る。

だが、しかし。

ああ、なんということか。

トゥルース・ドラゴン、アサルト戦闘要塞化コロニー群巣群が予め展開して置いた空間無効化フィールドサプレッサーによってまず空間歪曲が封じられ。
時間整流フィールドレクティフィケーターが相転移反応を掻き乱し引き裂き。
最後にトゥルース・ドラゴンの暴力的なまでのP事象N正常化フィールドがアルカンシェルを構成していた魔力を消滅させた。

結果、128発のアルカンシェルはその名の通り、時空域に盛大かつ華麗に虹を咲かせただけに終わった。



≪ほほ、何と美しい華か。良い物を魅せて貰った。これはお返しをしなければいかんのぅ≫

≪…? ………!! 戦闘惑星ダハク・ゾマ砲撃ジェノサイド形態モード変形トランスフォーム?! 全艦対ショック防御! ≫

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

Vovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovovo

戦闘惑星ダハク・ゾマが電子の叫びを上げながら変形トランスフォーム。惑星コアが露出。ハイパー大規模メガ量子クァンタム時間子タキオン機関エンジンが惑星コア直接ダイレクト接続リンク。装甲化地殻プレートが捲れ上がり展開。灼熱のマントルが合成ダークマターと共に噴出し砲身を形成。

Xyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy

形容し難き轟音で空間をつんざきながら砲身がライフリング開始。エネルギー充填。あまりのエネルギー圧力に戦闘惑星ダハク・ゾマ周辺の時間流が歪み始める。

≪エネルギー充填率67%で御座います。殿下≫

≪ふむん。まぁ今回はこのようなもので良かろう≫

≪では? ≫

≪うむ。戦闘惑星ダハク・ゾマ砲撃ジェノサイド形態モード、撃てェ! ≫

ハイパー大規模メガ量子クァンタム時間子タキオン機関エンジンと直結した惑星コアが充填した全エネルギーを開放。
マグマとダークマターの砲身が雷光を走らせながら灼熱。閃光と共に砲口から凄まじいまでの破壊的エネルギーが発射された。



宙を駆ける閃光。
切り裂かれる時間。
それは、次元そのものを破壊しながら突き進むエネルギーの奔流。



時空管理局残存艦隊は最初空間歪曲場で防御しようとし、次に回避しようとした。
だが、破壊エネルギーは防御も回避も許さぬほどの破滅を艦隊にもたらした。
描写するほどのことは起こらなかった。何も。光に飲み込まれた艦隊は灼き尽され破壊し尽くされ、完全なる無、0次元へと消滅していった。

後に、この攻防戦で生き残ったのは、たまたま直前になって故障して後方の次元世界で修理を受けていた数隻だけだと正式に判明した。





≪ふ、口ほどにも無い≫

≪それは酷と言うもので御座いましょう。この戦闘惑星ダハク・ゾマに並び得るのは、かの時空管理局本局だけかと≫

≪ハハハハハハハ。ならば早く時空管理局本局とこの戦闘惑星ダハク・ゾマをぶつけて見ねばならぬなぁ。今から楽しみで仕方無いわ! ≫

≪ははッ。仰せのままに≫





あとがき

ネタに詰まってパロディに走るのはマズいと思いつつ筆が止まらない今日この頃。
お眼汚し申し訳ありませんでした。

……ダハクとゾーマって分かる人いるのかな?



[25944] 【習作】 魔法少女試作一号機 (オリジナル)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/03/14 02:02
「あっ♥ あっ♥ もう駄目ッッ、逝くッ♥♥ イッちゃうぅぅーーーーーー♥♥♥!!!!! 」

『敵』の嬌声と自らの血飛沫を浴びながら、彼は落下していった。
彼の脳裏に走馬灯がカラカラと巡り出す。





守護竜である彼、ヴァールハイトは今日も今日とて丘の上に立つ、領主の城の中庭で惰眠を貪っていた。
最近はこの地域の住民が「王国」と反発しており、小競り合いが頻発していたが守護竜である自分が出るほどのことは未だ無かった。
だが、その日は違った。

ザワザワと兵士たちが騒ぐので鎌首をもたげて門の前の広場を覗き見る。
そこには、マントを羽織った長身の女性が二人と案内役らしい原住民が一人立っていた。
女性のうち一人は髪を短く切り揃え、両目を包帯でグルグルと覆っていた。
もう一人は包帯の女性より背が高く、背中まである髪を頭の後ろで一括りにしていた。
竜特有の優れた聴覚で聞き耳を立てる。

「ほ、本当に二人だけで……? 」

と原住民が聞くと、

「出来る。巻き込まれないように下がっていろ」

と長髪の女性が答える。

「あら、もしかして異世界の人間は信用できない? 」

包帯の女性がからかう様に問う。

「い、いえ。そのようなことは…」

「なら、見物していなさい」

原住民が下がるのと同時に二人の女性はマントを脱ぎ捨てた。
マントの下はヴァールハイトが見た事も無い服装であった。
(ヴァールハイトは知らない事であったが、それは異世界ではブレザーと呼ばれている服装であった)
二人は何かアクセサリーのようなものを懐から取り出すと、頭上高く掲げて呟いた。

「「変身」」

アクセサリーから光が溢れ出ると、兵士たちは思わず目を瞑った。
だが、ヴァールハイトだけはその優れた視力で一部始終を目撃していた。
女性たちの服が光の帯となって解け、その下の裸身が光の粒子となって分解したのだ。
同時に、アクセサリーから黒い影が飛び出てくるとこちらも黒い粒子となって分解。
光の粒子と闇の粒子が複雑に交じり合い人型を成すと、たちどころにそれが物質化。
新たな人影となって大地に舞い降りた。

それは、異様な風体の人型であった。
長髪の女性だったとおぼしき者は、顔まで含む全身がアメジストから削り出したかのような鎧で覆われている。否、関節部から僅かに内部が露呈しており、パイプや金属の骨格がそこから覗いている。あの者は鎧を纏っているのではなく、鎧そのものになったのだ!
もう一人の女性は真っ当に鎧を纏った人間となり、露出した肌も人間のものであった。ああ、だが、しかし! その眼。瞼を開いたそこには本来ある筈の眼球が無かった! 虚ろなる虚無の眼差しがゆっくりと周囲に視線を彷徨わせる。

「魔法少女No.02、山崎 京香である。突然ですまないが、この城塞には壊滅してもらう」

「魔法少女No.05、藤森 瞳よ。ねぇ京香、早く始めましょうよ」

と長髪と包帯の二人だった人物が言い放ったときには、ヴァールハイトも城の兵士たちも唖然としてしまった。
突然変身したこと。たった二人でこの城を堕とすと言ったこと。全てが彼らの理解を越えていた。
そして、次の光景を目撃した瞬間にはあまりのことに思考が停止してしまった。

「んっ♥ やっぱり追加装甲は私には合わないわ」

と盲目の女性が呟くと、頭部・腹部・大腿部・上腕部を覆っていた鎧が次々に脱落。しっとりと汗に濡れた柔肌が露になった。

「あん♥ 感じるわ、私のことをねっとりと嘗め回す視線を♪ ああ、そんなに見られると、私、んぁぁ♥ 」

「ほう、見られるとどうなるんだ、瞳? 」

「んぅ♥ 京香の意地悪ぅ。ほら見て」

盲目の女性の右手と左手にそれぞれ空間から滲み出すように武装らしきものが顕現する。
右手にはまさかりの刃に直接太い鎖が付いたような武装。左手にはなにやらカラクリのついた小型の盾が装着される。

「私のココも♥ 」

すると、鉞が蛇のように独りでにその鎌首を持ち上げた!

「アソコも♥ 」

ぶるり、と身を震わせると、その背中から棘で構成された蛇のようなものが四本這い出てきた。

と、鉞と見えた物が突然二つに割れ、獣のようにガチガチとその顎(あぎと)を咬み鳴らし始めた。
棘でできた四本の触手が激しくスピンしながらのたくりだした。

「はぁぁぁぁ♪ ほらぁ、もうこんなにエレクトしてるのぉ♥ あのむさ苦しい男どもの嫌悪と恐怖の視線を浴びると、私、私ぃ♪ 」

「まったく、どうしようもないな。瞳? 」

「あぁ、そうなのよ。私、見られるだけでこんなに感じちゃうの♥ 実際に闘って血を流すと考えちゃうだけで、あひぃ♥
あぁんもうだめ♪ 京香ぁ早く闘わせてぇ♥ 私の純粋ピュアな殺戮衝動がもう痛いくらいギンギンにエレクチオンしてたまらないのぉ♥ 焦らさないで早くらせてぇ♥♥ 」

「ふふん? よくもそこまではしたなくおねだりできるものだな? いいだろう」

アメジストの戦士の右手に機械仕掛けの槍のようなものが空間から滲み出すように収まった。
二人の鎧の各部が展開し何か筒状のものが顔を出した。
剣呑な武装を見た兵士たちがようやく我を取り戻し、剣を抜き放ち槍を振りかぶり二人に殺到する!

「闘いのゴングは鳴った。殺せ」

その時、まるで地面が爆発したかのように二人が急加速した。
地面を蹴っているのではない。鎧の各部から突き出した筒状の物から炎が噴き出し、それで加速しているのだ。ヴァールハイトは驚愕した。一体こいつらは何者なのだ?!



京香は右手に構えた機甲槍ヴュシールをメガ・ランチャー・モードに変更。魔力チャージを開始。レーザー/魔力照準波でロックオン。ヴュシールが三叉に展開、内部のエネルギー場が砲身を形成。チャージ完了。

「メガ・ランチャー発射」

ヴュシールの砲口から魔力が破壊意志そのものへと変換されて発射される。射線上にいた兵士たちがジュッと音を立てて蒸発する。閃光が閉じられた城門へと突き刺さりこれを爆砕、勢い余ったエネルギーの奔流はその内部をも焼き尽くし蹂躙し尽した。

シャァァアアァァァァアアアアァァァァァァァ!!! 」

瞳が砲撃で抉じ開けられた城門から城塞の内部へと侵入したのを確認した京香は、ヴュシールを携行サイズへと縮小させると腰にマウント。新規に小型ガンポッドとマイクロミサイル・ランチャーを召喚。
各部のスラスターを盛大に噴かすと城塞の中へ飛び込んでいった。





城塞内部は阿鼻叫喚の地獄となっていた。

「あぁぁっっっはははははははははははははあああああぁぁぁぁぁ!!!!!! 」

飛び込んできた盲目の魔法少女が巨大な鎖鉞であるガルムガンを縦横無尽に振り回すと、そのたびにプレートメイルが紙屑のように切り裂かれ兵士たちが案山子のように切り飛ばされていく。
怯えて逃げ出す兵士に対して、小型の穿孔機ドリルの連結体であるドリル・センチピードがその背後から容赦無く襲いかかり、その名に恥じず戦闘能力を喪失した兵士に巻きつき穿孔ドリルし挽肉に変えていった。

「ほらほらぁ! どうしたのよぉ私を殺して見なさいよぉ!! 剣を突き立てて槍で抉って噛み付いて引き裂いてズダスタの八つ裂きにして見せなさいよぉぉぉ!! あなたたちが私を殺せないなら…私があなたたちを殺してあげる! 抉って潰して引き裂いてズタズタにして八つ裂きにしてハラワタを撒き散らしてあげるぅ!!♥ 」

狂乱のままに鎖がジャラジャラと振るわれ抵抗するものにも降伏するものにも逃げ出すものにも等しく刃が振り下ろされる。
ドリル・センチピードがチュイィィィンと歯医者のドリルさながらの音を立てながら獲物を求めて鎌首をもたげる。



兵士が絶望の呻きを上げる。

「悪魔……」

「化物め…」

「この、人殺しめ……! 」

生き残った兵士たちの憎悪と嫌悪の篭った罵声を浴びても魔法少女は怯むどころかむしろ何か感じ入っていた。

「あぁぁ凄いぃ♪ 私への憎しみと怒りと嫌悪がビンビンに突き刺さってくるぅ♥ そんなに憎まれて蔑まれると私、わたしぃぃ♥ んほおおぉぉぉぉ♥♥ 」

その瞬間、魔法少女の姿が消えた。
否、眼にも留まらぬ高速で移動したのだ。
次の瞬間、魔法少女の立っていた場所にヴァールハイトの鋭い尾が突き刺さっていた。

「無事か?! 」

「ああ、ヴァールハイト様…」

「ヴァールハイト様が来てくれた……」

「助かった、俺たち助かったぞ! 」

頼もしい援軍の到着に生き残った兵士たちが歓声を上げる。

「皆、こいつは私が相手をする。急いで避難するのだ」

「わ、分かりました」



≪無事か? 瞳≫

≪あら京香♥ 私は無事よ。それより…あのタフガイさんの相手は私が勤めたいのだけれど♪ ≫

≪……10分以内に片を付けろ。出来るな? ≫

≪10分も楽しませてくれるなんて………京香、愛してるわ♥ ≫

≪私もだ。生き残りはこちらで片付ける≫

≪……え、ちょっと待って。今私もって…≫

≪もう切るぞ≫

≪あ、ちょっとまっ…切れちゃった。もう、京香のバカ! 鈍感! …素直クール♥ ≫



中庭にて両者は対峙していた。
ヴァールハイトは戦慄していた。敵の恐るべき残虐さに。そして決意した。このような悪辣なる者を生かしておくわけには行かない。
瞳は興奮していた。血が滾り吐息が艶かしく色を帯びる。召喚した武装が瞳の精神状態を反映して活発化する。

先手をとったのはヴァールハイト。口吻から十八番のドラゴンブレスを放射、敵を焼きつくさんとする。
対して瞳は右手のガルムガンをドラゴンブレスに向けて振り被ると魔力を注入。ガルムガンに注入された魔力が熱量に変換される。

「ギシャアアアァァァァァ!! 」

気合一閃。
振り抜かれたガルムガンがドラゴンブレスを真っ二つに引き裂くがヴァールハイトに至らない。一方ドラゴンブレスは僅かに剥き出しの瞳の肌を焼いたが、同じく致命傷には至らない。
だがその時、ドラゴンブレスの残滓を突き破って伸びてきたガルムガンがヴァールハイトに切り掛かった。

「むうっ?! 」

さっと鋭い爪で切り弾くが、ざっくりと爪の付け根を切り裂かれてしまう。
顔を上げて宙を見上げると、魔法少女がスラスターで浮遊しながらこちらを見下ろしていた。

(急上昇して転回する事で第二撃を繰り出したのか?! )

両者、しばし睨み合った後再び互いの牙と刃で激突する。



その激突の音を聞きながら生き残りの兵士たちは避難して仲間と合流しようとしていた。
だが。
爆発音と共にガラガラと前方の壁が崩れると、滑らかな円筒形の外殻カウルに包まれた3銃身ガトリング・ポッドを持った京香がぬっと現れた。

「後は貴官らが最後だ」

その言葉を証明するかのようにアメジストの装甲のあちこちには返り血が点々とこびり付いていた。
兵士たちが絶望の叫びを上げるより速くロックオン。引き金を引いた。
ヴヴヴヴヴと連続した低い重低音とともにガンポッドから銃弾の嵐が降り注ぐ。狭い廊下にひしめいていた兵士たちは避けることも出来ず文字通り将棋倒しのように次々と撃ち倒されていった。
銃声が止んだとき、そこにはズタズタに引き裂かれた死体と血の海だけが残っていた。

(瞳の方もそろそろ終わるか? )

ひょいと首を巡らせた京香は中庭へ向けて歩きだした。



「はははははははははは!! いいざまね、タフガイさん☆ 」

「グガァァァァアアアアアアァァァァァァ!!!! 」

ドリル・センチピードで仰向けになったヴァールハイトの両腕を地面に串刺しにした瞳。
そのまま何度も腹部へガルムガンを叩きつける。
絶叫と共に腹膜が切り裂かれ、血飛沫が飛び散り小腸やその他内臓がでろりとはみ出る。

「いいこと教えてあげる。ガルムガンとドリル・センチピードは私と感覚が繋がっているの♪ 」

その言葉と共に傷口へとガルムガンをさらに叩きつける。と、まるで生きているかのようにガルムガンが傷口から内部へと潜り込んでいった。
ヴァールハイトの悲鳴が1オクターブ上がる。

「ちょうど溜まってた事だし、あなたでスッキリさせてもらうわね♥ 」

残りのドリル・センチピードがヴァールハイトの口吻を抉じ開けて潜り込む。

「んひぃ♥ ドラゴンのお口しゅごいいぃぃぃ♥ ぬるぬるで舌長くて♪ んああぁぁ♥ 」

使用者である瞳が興奮するとドリル・センチピードも魔力を供給されて活性化する。回転数を上げたドリルがヴァールハイトの口腔と食道を抉り、引き裂く。

「ひゃあんんん♪ な、内臓も凄ぉおい♥ ギュッギュッって締め付けてきて、ぬるぬるなのにぷりぷりしてて♥ イっ、逝っちゃいそうぅ♥ 」

体内に潜り込んだガルムガンが蛇のようにのた打ち回り、鋭い刃で散々に柔らかい内臓を蹂躙する。

ヴァールハイトは自らの血で溺れながら、ただひたすら絶叫し続けた。

「あっ♥ あっ♥ もう駄目ッッ、逝くッ♥♥ イッちゃうぅぅーーーーーー♥♥♥!!!!! 」

絶頂の絶叫と共に体内深くまで潜り込んだガルムガンとドリル・センチピードが内側からヴァールハイトの肉体を食い破りバラバラに引き裂いた。
引き千切られたヴァールハイトの首は最後まで音無き絶叫を叫び続けていた。





「終わったか」

「あら京香。いつから見てたの? 」

「『んひぃ♥ ドラゴンのお口しゅごいいぃぃぃ♥ 』の当たりからだな」

「いやん、エッチ♪ ……ねぇ、興奮した? 」

「いや、別に」

「もう、京香のバカ! 鈍感! 」

「それほどでもない」

「ふん! 」

「さっさと還るぞ。もう1ラウンド出来るだけの体力は残っているだろう? 」

「え? それって……」

「お前の想像している通りだよ。私だって木石で出来ている訳ではない」

「きょ、京香ぁぁぁ♥ 」

「こら抱きつくな。ああここ火傷しているじゃないか」

「あひぃん♥ 舐めちゃらめぇ♪ そこ敏感なのぉ♥ 」



こうして今日も魔法少女たちは闘いを終えた。
だが、この世界から戦いが止まぬ限り魔法少女たちの闘いもまた止むことはない……





あとがき

サイバーパンクが進まずついカッとなってヤってしまった。
反省はしているが後悔はしていない。

キャラ補足
山崎 京香…女ターミネーター。でなきゃアントン・シガーかハイテク仕様ジェイソン。でも最近は少し丸くなった。
藤森 瞳…昔はドSのバーサーカーで京香を執拗に狙っていた。京香に負けてからは京香専属のドM剣奴(自称)に。



[25944] 【習作】 SF 微ホラー (文章練習)
Name: seleman◆6176b089 ID:bb55c5d2
Date: 2011/02/11 13:11
 異界より凶気/凶器/狂気が来たる。
ゲタゲタゲラゲラと楽しそうに笑いながら来る。

「あぁぁっっっはぁっははははははははははははははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ!!」

 チュュイイィィィィーーーンンンンと歯医者のドリルの様な音を立てて現在が穿孔される。
バリバリガリガリボキボキと現在を噛み砕きながらそれ・・がこちらに侵入してくる。
狂女の様に金切り声で
チンピラの様に下品に
子供の様に純粋無垢に
笑いながら哂いながら嘲笑いながら泣笑いながらそれ・・が此方側にやって来る。

ようやく還って来たと泣きながら
帰って来るべきでは無かったと泣きながら

これから先繰り広げられるであろう狂宴を想いながら、唯只管泣きながら笑いながら、それ・・があちら側からこちら側に侵入してきた。



1.そして、現実がようやく始まった。



 それ・・は初め臭いとして手触りとして感覚された。
それ・・はどこか青臭く、それでいて化学薬品のような人工的な臭いだった。しかし、同時に生ゴミの様な金属臭も漂わせていた。
 それ・・はねっとりとしていた。ねとねとしていた。手に執拗に絡み付いた。それ・・はまるで油泥の様な、固まりかけた血の様な、白濁の様な、不快な感覚だった。
 質量のある実体は未だ無い。しかし、嗅覚と触覚に知覚できる部分においてのみ実体があった。

 それ・・は決して焦らなかった。少しずつ少しずつ自分自身をこちら側に侵入させた。まるで工業廃水が少しずつ河を汚染していくように、害虫が少しずつ家の隙間に潜り込む様に。
 一度に少しずつ、それを気が遠くなるほど何度も何度も何度も繰り返して、その膨大かつ複雑な構造をこちら側に流出させていった

 それ・・は次第に都市に広がっていった。都市と都市の隙間に。下水道と地下ケーブルの暗い隙間に、ビルとマンションの狭い隙間に、屋上と空の茫漠とした隙間に、人と人との間の”存在しない”隙間に。

 それ・・は質量のある実体は流出させなかった。では、何が侵入してきたのか。質量が存在しないならば、そもそも何も侵入してはいないのではないか。
 いや、それ・・は確かに確実に侵入してきている。何が? 異次元の構造体だろうか? しかし、異次元の構造体であるならばこの世界の物理法則と衝突し干渉するはずである。不可視にして不可触の質量の存在しない物体であろうか? しかし、そんなものはそもそも存在していると言えるのか…

 次第に次第に人々の間でそれ・・が意識に上り始めた。「どこからとも無く悪臭が漂ってくる」「ぬるりとした感触があるのに手を見て見ると何も付いていない」…都市伝説にすらならない、日常における唯の思い違い。明確に問題とならない、日常の些細な違和感。それがすこしずつ積み重なっていく。どれほど洗ってもぬっちょりした感触が拭えない。どれほど掃除しても香水をつけても悪臭が鼻を突く。日常を送る上では何ら支障は無い、しかし意識しないではいられない。その絶妙なラインをそれ・・は心得ていた。

 質量は存在しないが明確に存在する物とは何か、そもそもそんな物は存在するのか、それは矛盾ではないのか…
否、存在する。「情報」が存在する。何かが「ある」から「ある」と言うのではない。「ある」と言うから「ある」が存在するのだ。「光あれ」故に「光がある」のだ。
 狂った論理である。少なくともこの世界に存在してよい論理ではない。では、他の世界ならどうか、他の次元なら。

 徐々に都市にフラストレーションが溜まっていった。それは個人と言う単位で見れば些細なストレスでしかない。しかし、それらが都市全体を満遍なく覆いつくし、その総和として見れば、膨大なストレスが都市に対して掛かっていた。
 次にそれ・・は電子情報網及び人的情報網を駆け巡り蝕んでいった。それ・・は電子ネットワークの負荷を重くし、人間同士のコミュニケーションに軋轢を生じさせた。元々些細だがストレスを溜め込まされていたこともあり、それらは容易に不快感・苛立ちへと変化していった。
 道行く人々は皆苛立ち、怒りっぽくなっていった。隣人同士で文句を付け合い、知り合いと些細なことで言い争うようになった。犯罪件数は増加し、その大半は衝動的なものだった。
 都市にエントロピーが蓄積されつつあった。

   「クオリア」
 何故人は赤い光の波長を視覚で認識すると、「赤い色」のあの「感じ」を感じるのだろう。何故人は単なる音波の連なりから、「荘厳さ」や「物悲しさ」と言ったあの「感じ」を感じ取るのだろう。物理科学は赤の波長は何nmか、「第9」は何Hzかと言った答えは返せる。しかし、何故それらをそう感じるのかは答えられない。
 ヒトの脳は生化学及び物理科学によって説明できる。故に脳によって演算される意識、ひいては心も物理的に説明できるはずだ。しかし、脳をいくら解剖し解析しても、心の中枢が見つからない。見つかるのは無数の機能断片だけだ。
 心は脳の何処にあるのだろう?

 その都市は駅を中心に放射状に発展していった。それ故人の流れも情報の流れもまず駅から拡散し、駅に集中していく。
 人々の間にストレスが蓄積されてゆく。だが、その原因を意識することが出来ないが故に発散させることも出来ずに溜まり続けた。理由も無いのにイライラが収まらず、ただ抱え込み続けた。未だ人々の理性と言う名の堤防は保たれていたが、何か切っ掛けがあれば容易く決壊しかねなかった。
 そして、その時は着実に近づいていた。





あとがき

続編の構想はあるのですが、うまいオチが思いつかない。
何かいいアイデアが閃いたら続けます。


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