'11/3/26
広島市長選あす告示 明確な都市戦略を示せ
広島市長選があす告示される。3期務めた秋葉忠利市長が既に今期限りでの退任を表明しており、12年ぶりに新しいリーダーを決める選挙となる。
秋葉氏は「たすきを引き継いでもらいたい」としている。ただ向かうべき肝心のゴールが、市民に見えているだろうか。
中国地方の中枢都市として、どのように人やモノを呼び込み、にぎわいをつくり出していくのか。2週間の選挙戦を通じて、広島の都市戦略をはっきり打ち出してもらいたい。
一方で現市政が積み残した数々の懸案も引き継ぐことになる。
その一つが広島五輪の招致問題だろう。地元では賛否が分かれ、いまひとつ論議は盛り上がりを見せない。県外などから歓迎の声が上がる一方で、二元代表制の一翼を担う市議会がブレーキをかける形になっている。
そこに起きた東日本大震災で、五輪招致はいよいよ先行きが不透明になってきた。深刻な被害を受けた被災地に対し、国を挙げて支援に取り組むのは当然である。復興には巨費が必要だ。「そんな折に五輪どころでは…」といった声が出てきても不思議ではない。
今回の選挙では防災のまちづくりを求める声が強まりそうだ。
地震や台風の備えに、もはや「想定外」は許されない。手薄な感が否めない津波対策の再点検はもちろん、政令市でワースト2の56%にとどまっている小中学校の耐震化も急がれる。
平和行政も転機を迎えているといえよう。平和市長会議の加盟都市が4500を超えるなどヒロシマの訴えは広まった。半面、その足元は揺らぎかけている。被爆者の高齢化が進んでいるだけに、体験の継承は待ったなしだ。
地盤沈下が著しい都心の活性化はさらに喫緊の課題といえる。頓挫している県営広島西飛行場の市営化。旧広島市民球場の跡地利用計画もこのまま凍結状態が続けば、広島大本部跡地の二の舞いとなりかねない。
執行部と市議会がぎくしゃくしていては、市政に対する不信感が増すばかりだ。関係をしっかり立て直すためにも、互いに歩み寄る姿勢が求められる。
県との連携をめぐる火種もくすぶり続けている。
例えば、福祉医療費の補助率問題だ。県は「福祉行政で政令市は同等の権限を持つ」として市に対する補助率引き下げの構えをみせている。
かねて指摘されてきた県と政令市との「二重行政」をどう解消していくか。大阪や名古屋の動きが大きくクローズアップされる中で、今回の統一地方選でも焦点の一つになっている。広島も決して無縁とは言い切れまい。
地に足の着いたまちづくりの針路が定まれば、民間の投資意欲を刺激することにもつながろう。「新しい公共」など協働の呼び掛けに市民も進んで応えるはずだ。広島の底力を引き出す明確なメッセージを論戦に期待したい。