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地震保険:どんな損害に、どれだけ補償?

地震保険で補償される損害と支払われる保険金
地震保険で補償される損害と支払われる保険金
地震保険の世帯加入率
地震保険の世帯加入率
津波でめちゃくちゃになったがれきの中を歩く女性=岩手県山田町で2011年3月25日午後3時44分、金澤稔撮影
津波でめちゃくちゃになったがれきの中を歩く女性=岩手県山田町で2011年3月25日午後3時44分、金澤稔撮影

 東日本大震災の被災者に支払われる地震保険の総額は、民間シンクタンクなどの試算によると、1兆円規模と95年の阪神大震災(783億円)を超えて過去最大になる見通しだ。これだけの保険金を保険会社は本当に支払えるのか。加入者は、どのような損害について、どれだけ補償を受けられるのか。仕組みや補償内容をまとめた。【和田憲二】

 地震保険は、地震や津波、噴火などによって住宅や家財(自動車や30万円以上の貴金属類などを除く)が損壊、焼失した場合に保険金を支払う。

 加入は火災保険とセットが条件。日本損害保険協会によると、09年度末の世帯加入率は23%で、阪神大震災後の94年度末(9%)から年々増加している。

 ただ、震災被害は普通の火災や事故に比べ極めて規模が大きいため、保険金支払いについての制約も多い。保険金額は火災保険の契約金額の30~50%の範囲内で、住宅は5000万円、家財は1000万円が上限。例えば、住宅に2000万円の火災保険をかけた場合、最大1000万円までの地震保険に加入できる。契約者の支払う保険料は、建物の構造や都道府県によって異なる。木造は鉄筋、鉄骨などの約2倍。地震が多いと推定されている東京都や静岡県は、岩手、鹿児島県などの約3倍の水準だ。

 実際に支払われる保険金は、損保各社の決めた統一基準に沿って、被害程度に応じて決まる。「全損」は契約金額の100%、「半損」は50%、「一部損」は5%。ただし、住宅の購入額から使用による消耗分を差し引いた「時価」が上限となる。「地震保険の目的は震災後の生活安定で、被災住宅の建て直しではない」(ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさん)ため、保険金を受け取っても、同じ家を建て直せるとは限らない。

 東日本大震災の地震保険の支払い請求は25日時点で、既に阪神大震災の6万5000件の倍の水準に達している。各社の支払い負担も増す見通しだが、支払総額1150億円までは全額を民間が負担▽1150億超~1兆9250億円は官民で折半▽1兆9250億円を超えた分は民間が5%、政府が95%を負担する--仕組み。政府は、地震再保険特別会計に積み立ててある1兆3000億円を活用して、保険金支払いを支援する。ただし、1回の地震による保険金の支払総限度額は、最大5.5兆円まで。これを上回った場合、1人当たり受取額が減らされる可能性がある。

 家ごと失われる今回の震災被害の大きさを踏まえ保険各社は、保険証券がなくなった人も、免許証などで本人確認できれば支払いを受けられるようにした。また、契約者が亡くなり、どの保険会社に加入しているか分からないケースも多いため、日本損害保険協会は28日、契約先を調べる照会センターを開設する。問い合わせは平日の午前9時~午後5時(0120・501・331)。

毎日新聞 2011年3月25日 21時10分(最終更新 3月25日 23時38分)

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