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地震、津波、原発…かつてない災害、ボランティア手探り

2011年3月26日9時46分

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写真:「体は大丈夫ですか」。手をもみながら、被災者に話しかける田井治尚さん(左)=山形県米沢市、宋写す拡大「体は大丈夫ですか」。手をもみながら、被災者に話しかける田井治尚さん(左)=山形県米沢市、宋写す

 扉が開くたびに、雪が残る屋外から冷たい風が吹き抜ける。津波や原発事故で家を追われた約500人が身を寄せる山形県米沢市の市営体育館。寒さと不安に満ちた避難所の一角に、ふわふわと湯気が立ちのぼった。

 「足湯、始めます」。地元の学生らでつくるボランティアが段ボールで作った看板を立て、被災者に声をかける。神戸のボランティア団体「被災地NGO恊働センター」の吉椿(よしつばき)雅道さん(43)が指導する「足湯隊」だ。

 退屈していた子どもたちが真っ先に集まってきた。お年寄りも遠慮がちに続いた。一人ずつパイプ椅子に腰をかけ、湯をはったたらいに足をつける。ショウガ入りのお湯が、足の裏から体を温める。

 福島第一原発の半径20キロ圏内にある福島県楢葉町(ならはまち)から避難してきた関本吉一さん(63)は指先や手のひらのマッサージを受けながら、ポツリポツリと漏らした。「つらいよ。家があっても帰れない」

 足湯隊の一人で、通信制高校で学ぶ田井治尚(たいじ・しょう)さん(21)=米沢市=はじっと耳を傾けた。「僕たちができることをやりますから」。約15分のマッサージが終わる頃、そう励ました。

 田井治さんは地震の後も、アルバイト先のコンビニ店で夜勤を続けていた。すると、福島から次々と被災者がやって来た。けがをしている人、着の身着のままの人……。せっぱ詰まった表情に、テレビで見ていた大災害が自分の中でも現実になった。「何かしたい」と、山形県庁でボランティアを始めた高校の先輩を訪ねたら、米沢入りした吉椿さんらを紹介された。

 足湯を始めて25日で1週間。常連さんもできた。でも足湯のさなかに被災者がうかがわせる恐怖感や喪失感には返す言葉が見つからない。

 「今僕たちにできるのは、ストレスやマイナスの気持ちを受け止め、痛みを分けてもらうこと」。そう心に決めて寄り添う。

 足湯隊の学生らは約10人。指揮する吉椿さんは、被害が大きい宮城、岩手両県などに入って若いボランティアが活動できない現状に、もどかしさを感じている。2008年の中国・四川大地震でもがれきの片づけに取り組むなど、数多くの被災地を訪れてきた。だが、今回の状況はどこよりも過酷だと感じる。

 それでも、できるだけ早いうちに現地での安全を確保し、米沢で育てたボランティアを宮城などに送り込みたいと考えている。

 「地震、津波、原発。二重三重の災害に苦しむ人たちを決して見捨てない」

      ◇ 

 個人のボランティアは通常、各市町村の社会福祉協議会が設置するボランティアセンターに申し込み、割り振られた仕事を担当する。全国社会福祉協議会(全社協)によると、24日までに岩手、宮城、福島3県の計57市町村にボランティアセンターが設置されている。

 ボランティアをしたい、という希望は多く寄せられている。たとえば東京ボランティア・市民活動センターの、被災地のボランティア募集情報をメールで配信するシステムには、1500件を超える希望者が登録した。しかし、紹介できたのは支援物資の都庁での仕分けなどわずかだ。

 大半のセンターがボランティア登録の条件を、地元住民や自転車で被災地に通える人に限っているためだ。人手は足りないが、ガソリンが不足し、ボランティアを遠方から運べない。避難所に物資が十分に行き渡っておらず、食料も確保できないし、宿泊施設もないという。

 壊滅的な被害を受けた沿岸部では、遺体の収容が続いている。余震も収まらず、満潮のたびに道路がひざ上まで冠水するところもあり、二次災害の危険が残る。福島第一原発の事故に収束の兆しが見えないことも、受け入れが進まない要因になっている。

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