2011年3月22日6時54分
東日本大震災による福島第一原発で起きている危機的状況は、地震や津波による停電がそもそもの原因だ。現在、電源を復旧させるための作業が日夜続けられている。電源の復旧は危機的な状況を打開する唯一の手だてだ。原発を安全に止めるために不可欠な「冷やす」作業ができ、原子炉内の核燃料の状態を監視できるようになる。
■冷却用ポンプ稼働
核燃料は運転を停止している間も常に熱を出し続ける。このため、燃料を入れた原子炉圧力容器や、使用済み燃料を保管するプールの水は常に循環させて、海水で冷やし続けなければならない。地震による停電で、冷却装置が止まってしまい、原子炉やプールの水が蒸発、核燃料がむき出しになって発生した水素が爆発を起こしたとみられている。
電源の復旧により、停止中の原発の核燃料を冷やす残留熱除去系の循環装置が使えるようになる。この装置は、一つの原子炉に三つあり、大量の水を原子炉やプールに送り込んで、核燃料を冷やし続けることができる。
仕組みはこうだ。原子炉建屋の地下にある圧力抑制室の水をくみ上げて、海水で冷やして原子炉に戻す。同じルートで使用済み燃料のプールの水も冷やしている。
地震の発生で、この水を循環させるポンプや、冷却用の海水をくみ上げるポンプが止まってしまった。ポンプを動かすための動力は、外部からの電源に頼っているが、変圧器などが故障して停電。さらに、停電した場合に使うはずの非常用ディーゼル発電機が壊れた。
ただし地震や津波で壊れた機器の損傷の詳細はまだわかっていない。ポンプや水を送り込むための配管、弁などが正常に作動するかどうか点検しなければならない。電源の復旧後に、すぐに装置が作動するよう点検も始めている。ポンプなどが壊れている場合を想定し、復旧作業に手間取らないよう、仮設用予備ポンプも数十台用意している。
■点灯、計器回復も
電源が復旧すれば、原発の運転を操作する中央制御室で原発の状態を監視できるようになる。今は停電によって計器類が動かず、原子炉の状態がよくわからないままになっている。消防用の配管などから水を注入して、ただ「冷やす」ことを続けている状態だ。
原発の運転は原子炉の状況をじかに目で確かめることができない。圧力容器内の圧力や温度、水位、核反応を制御する制御棒の位置などを、24時間、運転員が監視している。定期検査で運転停止しているときも圧力容器内の水を循環させているので、監視する必要がある。
原子炉の状態を監視するのは、すべて電気的な信号で行われ、近くの管理施設にある中央制御室でさまざまな計測値を一目で監視できるようになっている。ところが、今回の地震や津波による停電で、中央制御室の照明さえつかない状態だ。復旧作業は暗くてよく見えない状態で進めざるを得ない。
さらに、原子炉の状態を示す電気信号も送られてこない。予備の電源で動いていた計器類もバッテリーの電気の量が次第に減り、いまは正しい値を示せていないという。
電源の復旧で、さまざまな監視システムの機能を回復させることができる。原子炉の状態を正確に把握することができれば、どこに異常が起き、どの装置が正常に作動しているかを判断することができる。それによって、復旧作業が効率良くできる。圧力容器内の温度を100度以下にし、安定して停止している状態にするのが当面の目標だ。
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