平成19年度(第39回) 高松宮妃癌研究基金研究助成金 研 究 業 績 抄 録 |
|||
受領日 | 09.3.19 | 受領者氏名 | 富田 真理子 |
和文 | 成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染を原因とするリンパ系悪性腫瘍で、九州・沖縄地方に多発する。極めて悪性度が高く、発症の分子機構に基づく新規治療法の開発が切望されている。最近の研究で、マイクロRNAの発現異常と癌の発生・進展との関連が示唆されているが、マイクロRNAとATL発症との関連を検討した報告はほとんど無い。そこで我々は、HTLV-1感染T細胞株および非感染T細胞株におけるマイクロRNA発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析し、HTLV-1感染T細胞株で発現に異常の見られるマイクロRNAを約20種類同定した。そのうち、HTLV-1のトランスフォーミングタンパク質Taxによって活性化される転写因子NF-?BおよびAP-1結合配列をプロモーター上に持つmiR-146aおよびmiR-155に着目し、その発現誘導機構およびHTLV-1感染細胞の増殖におよぼす影響について解析を行った。その結果、miR-146a発現はTaxにより誘導され、これにはmiR-146a遺伝子プロモーター上のNF-κB結合配列が重要であった。同様にmiR-155発現もTaxにより誘導され、これにはmiR-155遺伝子プロモーター上のNF-κBおよびAP-1結合配列の両方が重要であった。HTLV-1感染T細胞株におけるmiR-146aおよびmiR-155発現はNF-?B阻害剤により減弱し、HTLV-1非感染T細胞株にTax遺伝子を導入するとmiR-146aの標的配列を3’-UTRに持つ遺伝子発現を抑制した。さらに、miR-146aもしくはmiR-155の機能を特異的に抑制するマイクロRNA阻害剤を導入すると、HTLV-1感染T細胞株特異的に細胞増殖が抑えられた。以上の結果から、miR-146aおよびmiR-155はHTLV-1感染においてTaxにより発現が誘導され細胞増殖を促進していることが明らかになった。 |