2011年3月15日
福島第一原発では12日の1号機に続き、14日には3号機で水素爆発が起こり、2号機では一時、燃料が「空だき」になった。地震発生後、一列に並んだ原発3基で異常事態がドミノ倒しのように起こり、3基が同時に危険な状態になっている。14日深夜になってとくに2号機の圧力容器内の圧力が高まった。
枝野幸男官房長官は14日、1〜3号機で「炉心溶融」の可能性があることを認めた。
50年を超える原発の歴史で、炉心が爆発した旧ソ連チェルノブイリ原発事故を別とすれば、米スリーマイル島原発事故(1979年)でしか起きていない。
2度目が、この日本でそれも3基同時に起きる――。現在起きていることの異常さを示すものだ。
原発が自動停止した後、通常なら送電線からの電気でポンプを回して炉心を冷やす。停電の場合は原発がもつ非常用電源を使う。
今回、地震で周辺が停電し、非常用電源も津波で水をかぶって、すべて動かなくなった。「起こりえない」としてきた電源喪失が起きた。
東京電力は電源車を使用。消防車などで炉心に水や海水を送り込み、炉心の冷却を試みてきた。
想定外の状況下での手探りの作業だけに、次々に不具合が重なった。その結果、燃料棒が水面上に露出して、燃料や燃料棒を覆う合金(被覆管)が溶ける炉心溶融に進んだ可能性が強い。炉心溶融は過酷事故(シビアアクシデント)という段階だ。
水素は、溶融した被覆管と水蒸気が反応して発生する。これが建屋内にたまって、1、3号機で爆発が起きた。
2回の水素爆発を許したことは水素を制御するすべをもたないことを示している。今後も大きな不安材料になる。
現在、最も心配されているのは、2号機だ。14日には圧力容器内の水位が下がり、燃料全体が水面上にむき出しになり、空だきになった。さらに圧力容器にある弁が動かなくなった。
ひとことでいえば、現在は、3基すべてが極めて危険で不安定な状態にある。水の注入、水位の管理がうまくいかず、核燃料の一部が水面上に出ている可能性が強い。炉心溶融がさらに進み、水素がさらに発生する。
1、3号機に続いて2号機にも海水が注入された。後で海水を除いても不純物などが残る。廃炉も視野に入れなければならない非常措置だ。
しかし、それでも炉の状態をうまくコントロールできていない。何を試みてもうまくいかない手詰まりの状態だ。
原発の安全設計では、炉心の燃料と大気とを断ち切るために何重もの壁をつくっている。
最も信頼できる壁は分厚い鋼鉄でつくられている圧力容器と格納容器だ。この二つが健全であれば、放射能の大量放出は何とか防げる。
あの手この手で水を注入し、核燃料が安全な温度になるまで時間を稼ぐことができるかどうか。危険を背負った手探りの作業が続く。(編集委員・竹内敬二 )
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