福島第1原発が電源を失う原因となった津波による浸水について、東電以外の全電力会社が所有する原発でも、津波による浸水を想定していなかったことが毎日新聞の調査で分かった。専門家は「津波に対する想定が甘い」と指摘している。【日野行介、平野光芳】
福島第1は、想定(5メートル)を超える推定14メートルの津波で被災。非常用発電機などの重要機器のほとんどが浸水で使えなくなり、原子炉の冷却が遅れて深刻な事故に発展した。
調査は震災後、東電を除く全国の9電力会社に対し、所有する14原発の津波対策について尋ねた。電力各社は、過去の地震記録なども併せて津波の高さを想定、対策を取ってきた。
東北電力の女川(おながわ)原発は最高9.1メートルの津波を想定。これに対し敷地は海面から14.8メートルの高さにあるため、陸上構造物に被害はないと想定してきた。今回の地震で同原発が受けた津波の高さは不明だが、同じ宮城県女川町の女川漁港には15メートル近い津波が襲来した。
中部電力は震災後の22日、浜岡原発の敷地内の高台に非常用ディーゼル発電機を設置する方針を表明。中国電力も24日、島根原発の非常用発電機を海面から約40メートルの高台に新設する計画を報告した。
地震や津波で原発が機能不全に陥る「原発震災」を警告してきた石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)は「電力会社は津波を甘く見ている。日本で原発建設が本格化した60年代には、原発の立地条件で津波の影響はほとんど考慮されず、後付けで電力会社に都合よく津波が想定されてきた。地震と津波のリスクを予想することは難しい。それを考えれば、日本列島で原発を推進するのは危険だ」と指摘する。
毎日新聞 2011年3月26日 2時30分