講談社BOOK倶楽部
講談社創業100周年記念出版「書き下ろし100冊」

  

ホワイトハート新人賞2010年下期 選考結果・好評 95作品の応募作のうち最終選考に残った6作品を部員全員で選考、以下の結果となりました。
  受賞作
講評
『太陽と月の邂逅 ハプスブルグ夢譚』槻宮 和祈
 歴史的事実をしっかり調べ、そこに架空のオリジナルの登場人物を入れることで、実在した歴史上の人物のキャラクターを、評価に沿って発展させたり逆の面を導き出したりしながら、ワクワクする物語を作り出していくという、ある種の小説の基本を理解し書かれた、良くできた、おもしろい物語だった。
 ただ、せっかく登場させたオリジナルのキャラクターが少し弱かった気がする。愛憎の変化が読者には納得しにくい部分もあった。
 ストーリーも整理し、改稿の必要もあるだろうが、直せば非常に良くなる作品で、刊行が楽しみである。
『あやめも知らぬ』暁 美耶子
 古い小説という雰囲気を漂わせながら、静かに展開していく人間の愛憎劇は見事だった。文章もしっかりしているし、構成も良く考えられていた。
 ずいぶん前にこういう小説はよく書かれたという意見もあったが、作者の年齢を考えれば、そういう小説を読んできて、若い自分たちの感性を入れた物語を書いているのだし、たとえば戦争中のことも、今の人たちからすれば江戸時代と同じくらい知らない過去の話なのだろうから、そこを自分の目でしっかり見つめてさえくれれば問題はない。
 ただ、今の若い作家だからこそ書ける何かを見つけ、それを織り込んでいくことは非常に大切なので、これから改稿していく中で加えていってほしい。
『奥様は貴腐人 旦那様はボイスマイスター』森 美紗乃
 一番おもしろく、すらすらと読むことができた。BL小説ではないが、BLや声優が人気の現在、そういう文化に囲まれて生きている普通のおたくたち(仕事もまじめに良くできる!)を主人公に、感動できる物語に仕上げている。
 病院内の出来事や声優の録音風景など、細かな蘊蓄や描写をさりげなく、かつしっかり書き込んでいて、そういう場面でも読者を楽しませてくれる。
 今までのホワイトハートにはない作品で、どちらかというとマンガ原作に近い印象もあったが、新しい読者を引き連れてきてくれる新しい作品とはそういうものだ。そういう意味でも新人らしい新人の登場で、非常にうれしい。


●最終選考分の作品の講評は、タイトルをクリックしてください。

「マホロバ・バベル」「四丁目の鬼神」「妖刀異聞 〜鬼の刀〜」「ダイアモンドリング」「拾遺・わざうた外法師」
「陽のあたる王国」「七英雄と永遠の誓い」「王様と黒い獣」「流水葉」「Green Inferno」「The Dark Side Of The Moon」
「水無月奇譚」「君だけの絵」「女神の墓標」「海と空の間で」「徒花は虹を仰ぐ」「ブラッディムーン」
「今でも貴方を」「初恋指南書」「悲しき団塊日記」「ミルフィーユ効果 〜兆し・或いは星めぐりの歌〜」
「女神の車輪」「砂の大陸」「隣の家の魔法人」「アンジェリカ」「永久回廊」
「輪廻」「いちばん強い魔符術」「月精華生」「アイビシーズの紋様」「蒼穹遥かなり」
「五番目の娘 〜揺籃の大地 ファルサ〜」「デナールの抗争」「真秀路場奇譚」「オンライン小説埋葬方法」
「ドクターというものは」「暁の竜を駆る騎士」「本の世界からの依頼」「太陽と月の邂逅 ハプスブルク夢譚」
「碧ノ京記」「神無の雨」「青い僕ら」「ミッション・パート2」「刻をつなぐ物語」
「あやめも知らぬ」「星に偶う日」「楽園の扉」「朱色の糸」「カンパネルラは微笑んだ」「ハヤセリヒメ 」
「双つ国」「ヨーロピアン・ダーク」「大切なもの」「主夜」「白い光に一点の闇」「不眠のためのあやつり」「半透明の美しき世界」
「真摯に女神と名を叫べ」「ファイティング・サンタクロース」「雷鳴の空に泳ぐ」「金色の聖女」「羽舞う夏の物語」
「ペンタグラムの遥かなる祈り」「アル=カレイオスの戦巫女」「残酷なまでに美しい世界」「双王愛姫」「トーキョー速射砲」
「星合草紙」「天使の秘薬」「風の羅針盤」「奥様は貴腐人 旦那様はボイスマイスター」
「或る歌姫の、物語 〜仮初めの王国〜」「水先案内鏡」「これは夢。夢なんだ。」「古い家 あるいは僕と魔法の生活」
「ソウルキャリアーに告ぐ!」「彩逢使 〜想い伝えし者〜」「羽根の栽培」「Brother Moon」「戀に落ちた人形遣い」
「風の民の伝説  〜いしをつぐ二人のあおの物語〜」「メルヘンジャック・エキストラ」
「紙飛行機の行方」「トッカイ」「しあわせおばけ」「D・H・G 〜禍罪の星を打ち砕け〜」「一色」
「紅海に君は沈む」「雪月花―建昌八年冠州花榜」「輝ける死者達の宴」
「十三月の終わりに醒める」「軽犯罪」「砂の帝国」「カロリエ」「薬術士ファン 〜眠れぬ公女と夕陽花〜」
以上、到着順。