日本の大震災と津波の影響で、空気量を測定する小型電子部品から車のエンジンに至るまで、自動車業界は大きな懸念を抱えている。
今回の震災で日本中の自動車工場、自動車部品工場が操業停止を余儀なくされている。ゼネラル・モーターズ(GM)をはじめ、トヨタ自動車、PSAプジョー・シトロエンは、日本で生産される基幹部品の不足が懸念されることを理由に、米欧での生産台数を数千台規模ですでに削減、もしくは削減する計画を立てている。
トヨタは23日、日本からの部品調達難を理由に、米国とカナダでの生産が一部停止する見込みだと従業員に明らかにした。同社は、従業員への通達で「生産を停止する時間があるのは明白」だとしたうえで、「生産停止の規模は未定」だと述べた。
注目が高まっている部品のひとつに、マスエアフロー・センサーがある。この部品は、日立製作所の子会社、日立オートモティブシステムズが被災で操業停止を余儀なくされている北関東の工場で生産しているもので、多くの自動車メーカーに採用されている。
日立オートモティブシステムズは、エアフロー・センサーで60%の世界シェアを持つ。同社は26日までには操業を再開させたいとしているが、どの程度生産能力が戻るかはわからないという。工場の地域は水と電力の不足に悩まされている。
このセンサーの流通価格は約90ドル。ドイツのシーメンスAGやロバート・ボッシュGmbHもエアフロー・センサーを生産しているものの、一部の自動車メーカーは、供給停止の可能性も視野に入れ、減産に動いている。
GMは、日立オートモティブシステムズのエアフロー・センサーを複数の車種で使用しており、ルイジアナ州シュリーブポート工場で小型ピックアップ・トラックの生産を停止している。先月の同工場でのピックアップ・トラックの生産台数は約4100台だった。GMは21日、ドイツのアイゼナハ、スペインのサラゴサの2工場についても、センサーの供給不足を理由に一部生産を停止した。
日立オートモティブシステムズの米国法人(ケンタッキー州ハロズバーグ)の人事部シニアマネジャー、デビッド・エドワーズ氏は、「サプライチェーンに問題が生じており、われわれは今、日米双方で協力して部品の確保にあたっている。具体的なところまで話すことはできない」と述べた。
フランスでは、プジョー・シトロエンが、エアフロー・センサーの不足を理由に、23日から大半の欧州工場の減産を予定している。「プジョー207」、「シトロエンC3」などの生産が影響を受ける見込みだ。
プジョーの広報担当者によると、同部品は日本から空輸されており、通常、10日程度の在庫しか持たないという。
プジョーは、スペインのマドリッドとビゴ工場、フランスのポアシーとオルネー工場、スロバキアのトルナバ工場の稼働率を40~50%まで落としている。ソショー、ミュルーズといった仏国内の工場の稼働率は75%となっている。
プジョーの広報担当者によると、中国と中南米の工場は、異なるエンジンとセンサーを使っているため、影響は出ていない。
日立オートモティブシステムズの佐和事業所(茨城県ひたちなか市)は、3月11日の震災以降、操業を停止している。同工場では、センサー、エンジン制御・管理部品を生産している。
日立オートモティブシステムズは、GMとプジョーのほかにも、フォード、ルノー、日産自動車、トヨタ、フォルクスワーゲンなどの自動車メーカーにも部品を生産している。
事情に詳しいある関係者が23日明らかにしたところによると、フォードも、センサー部品の供給を「1時間ごとに」チェックする、といった状況になっている。フォードは、震災を受けた工場の操業停止には踏み切っていないものの、米欧では供給不足感が強いという。
調査会社IHSオートモーティブのシニアアナリスト、マイケル・ロビネット氏は、「われわれが今、目にしているのは氷山の一角に過ぎない。4月半ばから第3週にかけて、影響が最も強まると予想している。4月半ばまで自動車メーカーがこの影響を免れるのは困難だろう」と述べた。
シリコンウエハー、液晶ディスプレー(LCD)スクリーン、半導体、高強度鋼、化学品などが震災で供給不足となっており、自動車業界に影響を及ぼすことが予想されるとロビネット氏は指摘した。
自動車メーカーにより部品の供給レベルは異なるが、日本で供給の中断があった場合、海上輸送される部品の影響が米国の生産工場に及ぶには3、4週間かかる可能性がある、とIHSオートモーティブで自動車部品会社の調査を行うマイク・ウォール氏は指摘する。震災前に最後に出荷された積荷が届くのは来週になるはずだという。
日立オートモティブシステムズの広報担当者は、佐和事業所に加え、同事業所以外の場所でエアフロー・センサーを生産するかどうかについて、コメントを拒否した。
自動車メーカーが懸念する部品は、エアフロー・センサーだけではない。日本は、カーナビゲーション・システムに使われるLCDや、燃料の流れやエンジンの状態を監視するために使われるマイクロチップも生産している。しかし、現段階では、自動車メーカーが日本以外の工場の生産縮小の理由に挙げるのは、エアフロー・センサーにとどまっている。
自動車生産は地域密着型の産業で、メーカーは、日本の工場が操業停止になっても影響を受けない部分もある。たとえば、北米で販売される車の大半は、多くの部品と同様、北米でも生産されている。欧州についても同じことが言える。
日本の自動車メーカーがいかに震災に対応しているかを示す例のひとつとして、日産自動車の対応が注目される。日産の広報担当者、デービッド・ロイター氏は、同社が、テネシー州デチャード工場からV型6気筒(V6)エンジンの日本への輸出増加を検討していることを明らかにした。日産のいわきエンジン工場はまだ操業が停止しており、同社の事業所のなかでも被害が大きい方だという。
ロイター氏は、エアフロー・センサーの供給が北米事業にとって問題となっているかどうかについて、コメントを拒否した。
ディーラーによれば、日産自動車は現在、米国で販売奨励金(インセンティブ)による新車販売キャンペーンを行っている。このキャンペーンでは、ディーラーは、日産が設定した販売目標に到達すれば、1台あたり400ドルから800ドルのリベートの上乗せを受けられるという。
ロイター氏は、キャンペーンの具体的な内容には言及しなかったものの、日産は、在庫を維持する必要から販売奨励金を撤回する計画はないことを明らかにした。「競争力を維持する必要があるし、現在の在庫にも満足している」とロイター氏は述べた。