2011年3月19日23時7分
倒閣の動きを見せていた民主党の小沢一郎元代表が19日、菅直人首相と首相官邸で会談し、東日本大震災の対応で菅政権への協力を約束した。地元の岩手県を襲った大震災の後、小沢氏はほとんど東京都内の自宅にこもっており、公の場に姿を見せたのは初めて。
小沢氏は午前11時、スーツ姿で官邸を訪れ、鳩山由紀夫前首相らと被災状況の説明を受けた。首相との会談は「政治とカネ」の問題で離党を勧められた2月10日以来。小沢氏は約40分間の会談で「日々ご苦労さまです。総力を挙げて頑張ってもらいたい」と述べ、会談後、記者団の質問には答えなかった。
小沢氏は震災後の地元入りは警備の都合で見送り、党災害対策本部の総会も、被災地の統一地方選を延期する臨時特例法案を審議した17日の衆院本会議も欠席した。発信は、震災から6日後にホームページを更新しただけだ。「この度の災害は、戦後の荒廃期に匹敵するほどの危機的状況。今こそ、勇気と英知を結集して、危機を乗り切らなければならない」
野党でさえ震災対策を優先して首相退陣や衆院解散の主張を封印する今、首相を引きずりおろす環境ではない。ホームページでは原発事故に触れつつ、「政府、東京電力には、正しい情報を迅速に公表することを強く求める」と菅政権への注文の形で辛うじて不満をにじませた。
小沢氏の地元の衆院岩手4区は内陸部だが、津波で壊滅的打撃を受けた陸前高田市などは中選挙区時代の地盤で支持者も多い。なのに小沢氏の発信が少ないのはなぜか。
小沢氏周辺は、達増拓也知事や業界団体、旧知の官僚らと連絡を取り、「後方支援」に回っていると説明している。政治とカネの問題で党員資格を停止され、パフォーマンスと受け取られる言動を控えている側面もあるようだ。
小沢氏支持の議員には、震災対策の前面に小沢氏を立て復権を目指す動きもある。17日、小沢氏に近い議員十数人が国会内で集まった時は「地元を知る小沢氏が復興を担当するべきだ」「小沢氏を震災担当相に」との待望論が続出。小沢氏も周辺に「自分から申し出るわけにいかない」と、要請があれば受ける姿勢をのぞかせたという。
だが、首相は自民党の谷垣禎一総裁に入閣を要請する一方、「脱小沢」路線を修正する考えはなさそうだ。19日の会談でも、小沢氏を要職に起用するそぶりはまったく見せなかった。(蔵前勝久)