社説

2011年03月25日

防災対策を論じ合う選挙に

 東日本大震災と福島第1原発事故という非常事態の中で、統一地方選前半戦の幕開けとなる12都道県知事選が告示された。27日に政令市長選、4月1日に道府県議選・政令市議選が相次いで告示され、同月10日に投開票される。

 昨年7月の参院選以来の大型選挙であり、震災対応を含めて菅政権に対する審判の意味もある。地方自治の在り方とともに、地域の防災対策、災害に強い町づくりをしっかり論じ合ってほしい。

■特例法で58件延期に■

 原発を抱えた地域では安全管理や防災計画の見直しが争点に急浮上した。

 震災被害が大きい岩手、宮城、福島の3県では岩手県知事選を含む計58件が特例法により延期された。4月24日投開票の後半戦を含め、選挙の管理業務と運動が正常に行われないと自治体が判断すれば、追加で延期を認めるべきだろう。

 知事選ハイライトは首都決戦だ。22日に出馬表明した本県前知事の東国原英夫氏、4選を目指す現職の石原慎太郎氏、ワタミ前会長渡辺美樹氏、共産党元参院議員小池晃氏らによって争われる。

 民主党は菅直人首相の膝元というのに独自候補を擁立できなかった。独自候補は北海道と三重県だけ。神奈川など6県では自民党などと事実上の相乗りだ。知事選と政令市長選は自民党との相乗り禁止という原則はどうしたのか。

 昨年の参院選で大敗して以来、民主党は地方選も大きく負けが込んでいる。今回の統一地方選では地方の基盤強化を目指していたが、県・市議選でも候補者擁立が思うに任せない。現有議席を大きく割り込むようだと首相の政権運営は一層厳しくなる。

■街頭第一声取りやめ■

 知事選告示日は大震災を踏まえ各地で自粛ムードが広がった。ほとんどの政党が恒例の党首級による街頭での第一声を取りやめ、静かな選挙戦のスタートとなった。候補者も期間中、街宣車による連呼などの運動は控えめにせざるを得ない。

 景気回復が遅れている地域では雇用や経済活性化、地場産業育成策などが問われる。加えて、防災と減災は喫緊の課題となった。

 政治、行政、経済の中枢機能が集中する東京の大規模地震対策と危機管理は重要政策であり、知事候補はともに力説した。全国どこでも学校などの耐震化、軟弱な地盤の補強、一般家庭における災害への備えなど有権者が一緒になって考えることは多い。

 原発を抱える地域では福島第1原発事故は人ごとではない。

 放射性物質を含んだ農産物の出荷停止、水道水からの放射性物質の検出と影響は日ごとに広がっている。原発依存体質からの脱却や安全基準見直しなどは論戦の焦点だ。

 災害からどのように地域と身の安全を守るかを考える選挙にしたい。


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