2011年3月25日5時12分
経済産業省は、東京電力管内で予想される夏の電力不足対策として、企業に夏休みの分散化を要請する方針を固めた。1年で最も高くなる夏場の電力需要のピークを抑え、電力の供給量を上回って起きる大規模停電を避けるのが狙いだ。批判の多い計画停電(輪番停電)の軽減も見込む。
経産省や東電によると、東電管内の通常の夏の電力需要は、最大で6千万キロワット前後。これに対し、今夏の供給能力は、福島第一原子力発電所などが使えないため、最大でも5千万キロワット程度にとどまる。
例年、需要のピークは、企業が一斉に夏休みに入る盆休みを挟んだ7月末〜8月上旬か8月下旬の昼間になる。工場が操業しているほか、家庭やオフィスビルの冷房使用も重なる時間帯だ。
そこで、経済団体や各企業に(1)夏休みを盆休みに集中させない(2)日数そのものを長くする、といった対応を要請する。具体的には自動車、家電など業界ごとに日程調整する案が有力だ。
電力需要の内訳は家庭が5割で工場などの産業用が3割、ビルや商業施設などの業務用が2割。家庭での節電呼びかけも必須だが、産業・業務用の電力使用時期を分散すれば、需要のピーク値を確実に引き下げられると見込む。
休暇日程は各企業の労使協議で決まるため、労組側への要請も必要になる。大手企業が日程をずらせば、下請け企業も同様に生産態勢を変えなければならず、実施に向けては曲折も予想される。
電力需給対策を巡っては、第一次石油危機当時の1974年、火力発電所の燃料を節約するため、政府は電気事業法に基づいて大手企業などに電力使用を制限した。今回は「電力使用の『総量規制』より、休暇分散などで電力使用の集中を防ぐ『ピークカット』の方が有効」(資源エネルギー庁幹部)としている。(小暮哲夫)