テレビの震災報道で不思議なのが、地震発生から10日も経つのに被災地でいまだに「物資不足」が続いていることだ。現地の役所や体育館に山積みされた物資はなぜ、行き渡らないのか。
「最大の理由は、1次集積地から運ぶ手段がないからです。道路がガレキの山にジャマされ、寸断され水につかっている箇所もある。自衛隊は行方不明者の救出作業に力を入れているから復旧作業も進まず、役所は被災者の確認やライフラインの確保に忙殺されていて人手不足。ガソリンがないから集積地に車で取りに行くこともできない。避難場所ごとのキメ細かな物資運送は超困難なのです」(福島県の物資ボランティア)
こうなればミニバイクや自転車運送など人海戦術も考えた方がいいのだが、物資が届かない理由はこれだけじゃなかった。岩手県で取材中の防災システム研究所の山村武彦所長はこう言う。
「現場で供給を抑えているケースがあるのです。ある被災地で聞くと、供給側が『次の物資が届くかどうかが不安』といった理由で水を配るのを控えたため、被災者はカップめんも食べられなかったという。政府が物資補給の具体的な見通しを示さないため、皆、疑心暗鬼になって抱え込んでいるのです。政府が物資配給で安心できる強力な方針を示さない限り、このまま不足の事態は続くと思います」
極限状態の被災者の怒りは菅政権に向かって爆発を始めている。
(日刊ゲンダイ2011年3月22日掲載)