トリプル世界戦も神戸に退避！…両国から前例なき変更

長谷川（右）と真正ジムの山下会長

会場変更で戸惑いの表情を見せる西岡（左）と粟生（中央は帝拳ジムの浜田代表）

　４月８日のプロボクシングＷＢＣトリプル世界戦（報知新聞社後援）の会場が、東京・両国国技館から兵庫・神戸ワールド記念ホールに変更されることが２４日、主催する帝拳、真正両ジムから発表された。東日本大震災の影響による節電や余震が続いている現状をあらためて考慮した。チケットは東京開催分は無効となり、３１日から各購入場所で払い戻しに対応。神戸開催分は３０日から販売を開始する。

　やむを得ないことだった。前例のない２週間前の会場変更。興行が丸ごと、両国国技館から西へ４３２キロの神戸ワールド記念ホールに“退避”することになった。

　帝拳、真正両ジムはそれぞれ都内と神戸で日本人世界王者３選手を伴い緊急会見。長谷川は「選手は影響がないけど、東京で楽しみにしていた人たちや被災地から来る予定だった人もいたかもしれない」とファンを思いやった。

　苦渋の決断だった。福島第１原子力発電所の事故は一時の危機的状況を脱し、首都圏の計画停電の対策として自家発電機を配置して試合会場の電力を独自でまかなう見通しが立つなど、予定通り開催する方向だった。

　だが、放射能汚染が水や食物へ広がり、いまだに強い余震が頻発。外国人選手は地震に慣れておらず、体調にも影響を与えかねないため、方針修正を余儀なくされた。帝拳ジムの浜田剛史代表は「予断を許さない状況が続いている。選手や関係者、観客の安全を最優先に考えた上の判断」と語った。

　日本初の日本人世界王者３選手によるトリプル防衛戦の興行とあり、チケットは約１万枚を売り上げていたが、３１日から払い戻しに応じることが決定。一方で、神戸開催のチケットを３０日に販売開始。主催者側は急な対応に追われている。

　土壇場で混乱は起きたが、「場所は神戸に変わったけど、思いは同じ」と長谷川。王者たちは地震で傷ついた人たちにエネルギーを与えるための準備を整えていく。

　長谷川穂積「一人でも多くの人に戦う気持ち、あきらめない気持ちを見てもらえたらうれしい。自分が被災した阪神大震災とは比べものにならないけど、前を見てやっていれば復興できると思う。そういう姿勢を見せられたら」

　粟生隆寛「前は多少落ち込んだけど、気持ちを切り替え、４月８日に照準を合わせて練習してきた。神戸では２度、試合をやったことがあるし、験もいい。被災された人たちに少しでも元気になってくれるよう全力を尽くす」

　西岡利晃「震災で気持ちが乗らない面があったが、今は大丈夫。試合があると想定して調整してきた。２度目の防衛戦を海外で行ったこともあるし、試合会場がどこに変わっても全く動揺はない。今は前に進むだけ。試合に集中する」

　◆パッキャオ、グラブなど慈善オークション　〇…トリプル世界戦は「復興支援チャリティーマッチ」と銘打って収益金の一部も寄付する。会場内では元６階級王者のデラホーヤ氏やＷＢＣのスレイマン会長から寄せられたビデオレターを公開。同時に実施するチャリティーオークションでは、６階級王者パッキャオ（フィリピン）の直筆サイン入りのグラブを始め、世界各国の新旧王者のグッズなどが数多く出品される予定だ。

　◆チケットメモ
  ▽払い戻し　両国国技館開催分についての問い合わせは、購入した発売所へ。払い戻し期間は３１日～４月３０日。神戸開催分の券との交換には応じない。観戦には新規購入が必要。
  ▽発売　３０日から開始。席はリングサイドＡ（３万円）から２階指定席Ｃ（５０００円）まで計８種類。問い合わせは帝拳ジム（（電）０３・３９１１・５２２２）、真正ジム（（電）０７８・３３５・５１４７）、ＷＯＷＯＷ（（電）０５７０・０２・９５２７）、チケットぴあ（（電）０５７０・０２・９９９９）。