東京電力福島第1原発の危機が収まらず、周辺住人は想像を絶する辛苦をなめている。特に「屋内退避」を指示された20−30キロ圏内の住人は、目に見えない放射能の恐怖とともに、風評被害で救援物資が届かない。この圏内にかかる福島県いわき市出身で、自らトラックに乗って物資を届けている自民党の森雅子参院議員(46)=福島選挙区=が、現地の窮状を緊急リポートした。
森氏は11日に大震災が起きてから、作業服を着込み、毎日のように現地入りしている。その様子を次のように語った。
「ガソリンがないため移動ができない。屋内に退避していても、どんどん水や食料が尽きていく。物資を運ぶ人が圏内に入るのを恐れてこないから、届かない。この不安は想像を絶するもので、住民にとっては地獄のような毎日です」
こんなことがあった。20−30キロ圏内の南相馬市やいわき市に来るはずだったガソリンのタンクローリーの運転手が、原発から約60キロ離れた郡山市で降りてしまった。放射能を恐れてのことだ。
そこで、南相馬、いわきの両市は半日かけて市内からタンクローリーを運転する資格を持った人を探し出し、緊急車両などに残されていた少ないガソリンを乗用車に給油して取りに行ったという。
森氏は「いわき市で計った放射線量は1マイクロシーベルトなどで、それほど高くない。でも、取材陣はなかなか入らず、テレビはあまり報じないから、どんどん孤立する。政府は物資の輸送体制を整えてほしい」と話した。
こうした状況と自らの輸送活動をツイッターで訴えたところ、森氏の事務所は「届けてほしい」という救援物資であふれ返り、輸送役を買って出る有志も現れた。
さらに、立ち入り禁止となっている20キロ圏内の信じがたい惨状。
「遺体が運び出せないのです。自衛隊の任務は、遺体を運ぶことではなく、生存者を発見救出して避難させること。遺体を発見すると旗を立てて警察に連絡します。しかし、警察は『立ち入り禁止』を理由に入らない。多くの遺体が冷たい雨のなか、雨ざらしになっている。そこで、家族が被爆の危険を冒して20キロ圏内に入り、警察に電話して初めて遺体を引き取りにきてもらったこともあった」
22日の参院予算委員会。森氏はこうした惨状を切々と訴え、対応を求めたが、政府からは具体的な方策は示されなかった。森氏はいう。
「福島は『地震』『津波』『原発』という三重苦だけでなく、農産物の出荷停止や、関係ないシルク(絹製品)まで返品が相次ぐなどの『風評被害』も加わった四重苦を受けている。原発と風評被害は人災。政府は十分な補償をすべきです」
菅直人首相の目や耳は動いているのか。