旧北アメリカニューヨークシティ。
今尚、世界経済の枢軸を担うこの地にて、第7回を数える装剣アーツ世界大会が開催される。
装剣アーツ。
本来デモンを排除する為に発明された装剣を纏ってポイント制の試合をすると言う何とも罰当たりなスポーツであるが、その競技人口は多い。
無論、装剣の使用は免許制である為、誰でも参加が可能なスポーツではない。
それでも世界中で数十万と言う愛好家を抱えるこのスポーツは、テレビというメディアが衰退した現在、ライブ性が高い娯楽としても、多くの観客を惹きつけて止まない。
っていうか、ぶっちゃけ女性の競技人口が多く(全対の7割は女性)、かつ魅力的な女性ほど神通力が高い傾向がある為にトップ選手ほど美人でスタイルがよく、そして露出度が高い装剣を纏っている場合が多い。
俺からしたらヨダレ物の素晴らしいスポーツなのである。
…もちろん、外から見ている限りは、であるが。
「武村さん、あんまりきょろきょろしないで頂けますか?我々の全体の品位が疑われますわ」
そう言って俺をこすっても落ちない茶渋でも見るような目でさげずんでいるのはチームメイトのリリー・マルレーンである。
ぶっちゃけ敵選手の方が遥かにましだろう悪待遇である。
スポーツマンシップは俺限定で発動しないらしい。
「まったく、人数あわせと言う自覚がおありなのかしら?」
うわぁ、ぶっちゃけー。
何なんだ。
何で俺はこんなに嫌われてるんだ?
俺何か悪いことした?
こっそり並乳とか言ったのがそんなに気に入らなかったのだろうか。
その点に関しては、まぁ謝る気はないが。
「ほら、皆整列しろ」
「はい社長」
おそろいのユニフォーム(青いジャージ)を着た俺たちはそう言うアヤ姉の後ろの居並んだ。
周囲を何百と言う選手が取り囲んでいる。
『え、ではこれより、第7回、装剣アーツ世界大会を開催いたします。開催に先立ちまして会長のアーノルド・シュナイゼルからご挨拶を…』
壇上にえらそうなおっさんが上がる。
多分このおっさんもおっぱいが見たい一身でこの大会を開いたのだと思う。
装剣アーツ世界大会。
巨大な屋内ドームの中で開催されるその開会式に、我々はのぞんでいたのだった。
第24話 装剣アーツ世界大会
『それでは予選を勝ち抜かれました、出場チームをご紹介いたします』
観客席から絶叫が聞こえる。
今日この日を一年間待ちわびたという人も多いだろう。
…長かった。
特に偉そうなおっさんの話が。
要約すると「俺はおっぱいが好きだ」という一言で表されるだろうに、世界情勢がうんちゃらかんちゃら、装剣の社会的意義がなんちゃらかんちゃら、この間生まれた孫娘が世界で一番かわいいんぢゃね?など、9割9部9厘がいらない話だった。残りの1厘は最初に発した「お早うございます」の一言だけである。
『それではまず、列の右手から。ファントムリーグ(社会人リーグ)から本年で7回連続の出場となる無冠の王者、アリシア・レオパルド率いるチーム「クイーン オブ
シヴァ」。トップクラスの神通値を誇りながら苦杯を嘗めた昨年までを挽回できるのか?』
壇上の後ろ。
盛り上がる観客席の中央にしつらえられた巨大なエキシビジョンテレビに、プラチナブロンの白人女性率いる強豪チームが映し出される。
5人の代表者にはエクトガンで測定されたそれぞれの現在の神通値が表示されている。
装剣を纏っていない状態にも関わらず、筆頭のアリシアが28,000、副将の女性以下でも10,000越えと、これで優勝できないのが本当におかしいほどの面子が揃っている。
ちなみにアリシアは推定Fカップ、と言った所か。他の面子もD~じ、Gとなかなか素晴らしいと思う。
早く装剣を纏ってほしいものである。
俺?非戦闘時で2,000くらい。瞬間最大神通値でも5,000行ったことないけど何か?いやこいつらがおかしいんだって。
『同じくファントムリーグから本年初登場!平均年齢18歳という最年少チーム、「フェアリーランド」!主将のアンリエッタ・リリーは何と大会最年少の16歳ですが、母親はあの伝説の三冠女王、ルーシア・リリーだぁ!』
アナウンサーの紹介に会場が盛り上がる。
エキシビジョンテレビに映るのはピンクの髪を揺らしてぴょんぴょんはねて自分をアピールする、ツルペタ少女である。
胸の薄さならうちのエルピスとも十分に競える。
だが、エクトガンが表示するアンリエッタの神通値は25,000。
さっきの
しかしこれがあの『女王』の娘ねぇ。
テレビは次に観客席を移し、微笑みながら手を振る美しい女性を写した。
ルーシアだ。
もう30代後半のはずだが、ぜんっぜんいい。
寧ろにじみ出る色気が増していて、たけちゃん大興奮である。
この人と子供作った男なんて死んでしまえばいいのに。
そのまま何グループが紹介が続き、美人だったり巨乳だったりかわいかったりロリだったりする面々が次々にテレビに映し出されていく。
どうしよう。
ちょっと楽しみになってきた。
だってあれと試合するんでしょ?
神力学的作用によってぽろりも当然期待されるわけで。
『…続いて今回初登場!特別枠で参加のパンドラグループが、何と美貌の総帥直々のご出陣だ!その力は正に未知数。一体どんな活躍を見せるのか!』
ついに我々が紹介される。
うわぁ。
正直エクトガンを向けるのはやめてほしい。
『その名もチーム「パンドラ」はメンバーに男性を起用している珍しいチームです』
うるせー。
チームメイトからも数合わせと言われましたが何か?
『ちなみにそれぞれの選手の神通値は…、え?』
がやがやがや。
場内が一斉にさざめく。
エキシビジョンテレビには大きな胸を張って堂々と画面に微笑むアヤ姉の姿が映し出されている。
表示された神通値は…。
『じゅ、十万二千!こ、これは非武装時としては大会記録ではないでしょうか?恐るべき、恐るべきパンドラグループ総帥!』
だからエクトガンを向けるのは止めろというのに。
そう思いながら俺は得意げな表情を隠しきれない。
見たかこのチートを。
これで文武両道でおっぱいおっきくて大会社の社長なんだぜ。
肉じゃがとカレーしか作れないのは愛嬌だと思ってください。
そうしてしばらく大会出場者がアナウンスされ続けたが、十数分後、再び場内がわぁっと荒れた。
『もう一人!もう一人十万台が出ました!神通値十万一千!しかも彼女も今回初登場。チーム「ツリーベル」を率いる鈴木レイコ。旧日本地区で攻務店を経営する最前線の現役中の現役だ!』
画面の中ではにんまりと笑うよく知った巨乳の美人。
「あ、あの女…!」
ん?
アヤ姉が画面をにらんでわなわなと震えている。
面識、あったかなぁ、この二人。
しかし強い強いとは思っていたが、まさかアヤ姉に迫る神通値とは。
あなどれないなぁ、鈴木社長。
「相変わらずだな。鈴木の所の小娘は」
「うわっ。ちょ、な、なんであなたがこんなところにっ!?」
「いっ、石川!」
「よぉ。元気そうだな。二人とも」
いつの間に俺の隣に現れたのか。
そこにいたのは厳しい自称ダンディーなおっさん。
世界トップの装剣メーカー。
カグヅチの石川社長であった。
「し、しかしなんで、ここに?」
「そ、そうだ、石川!いくらお前でも選手でもないくせに…」
「仕方ないんだな、これが。うちにはしゃべることの出来る選手がいないんでな?」
「は?」
「どういう…?」
『さてここで最後に今回の初の試み!装剣メーカー、カグヅチの新発表作品!自律自動装剣、「ガヨーマルド」の登場です!』
「自律…自動……?」
「装剣ッ!」
画面に映ったのは、5機のロボット!二本の脚で器用に経って、モノアイの光で画面を見ている。
両手に当たる二本の末肢の先には鋭い刃が光っている。
…確かに、誰かが遠隔で操作している雰囲気ではない。
本当に自律…しているのか。
『大会運営本部は今大会特別シードとしてこのガヨーマルドの参加を認めました!世界初の無人戦闘機との戦闘、楽しみにお待ちください』
わぁっと会場が沸く。
おいおい、こりゃあ飛んでもないものを持ってきやがった。
「…商売上手だな、石川ッ」
アヤ姉が唾棄するようにそう言う。
「いずれ、人がデモンと戦う必要はなくなる。装剣はただのスポーツとなる、のかもな?」
そう言って、おっさんはにやりと笑った。
その3へ続く
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24話をお送りしました。
次回から久しぶりにバトルを書きます。
やっぱり装剣での戦闘描写が好きなんだ。
大体5話くらい掛けて終わらせようと考えています。
その先はまだ考えておりませんが、ここら辺が潮時かなぁ、などと思っていたり。
…LOSを今更更新して読んでもらえるのか、という問題がありますが。
肉屋2とか?
うーん。
とにかく今は本作を一生懸命完結させます。
最後まで何卒よろしくお願いいたします。