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[緊急寄稿・東北関東大震災] 福島第一 燃料棒、密封性は確保(2)

2011/03/18

石川 迪夫氏 (日本原子力技術協会最高顧問)

 

この状況に変化が起きるのが、炉心に水を追加した瞬間である。酸化被膜は温度が下がると脆くなる。加えて冷えて被膜が収縮するので、燃料棒はペレットとペレットの境界で分断され、落下崩壊(溶融ではない)し、おもちゃ箱をひっくり返したような状態で水中に堆積する。水中に堆積できるのは、水面下の燃料棒が健全であるからである。以上がTMI事故で起きた事故時の炉心状況である。

ここで断っておくと、崩壊落下した燃料棒は水に浸されている限り冷却されていた。これは、小さく分断された燃料棒の間を縫って流れる水の冷却効果(コミュニケーションパスと言う)があるからである。この結果燃料は溶融することなく、デブリ(瓦礫)状態を保って残っていた。

まとめると、水面上に出た炉心上部は水素を発生して崩落したが、溶融することなく冷却され、その結果ペレットの放射能保持効果は保たれた。

問題は水面下にあった燃料である。燃料を冷却した水は蒸気となるが、蒸気の流れが上に乗っかったデブリで閉塞されて上に抜け切れず、横方向に流れたことである。言わばデブリの直下に蒸気ゾーンが出来たわけで、先程述べた水面上での燃料と同じ状態が、水中に出現した。この部分の排熱状況は水面上とは較べものにならないくらい悪い。このため被覆管の酸化熱は蓄積して燃料棒を溶融させた。炉心溶融の発生である。ただし溶融温度は一般的に言われる二酸化ウランの融点セ氏2800度ではなく、ウラン、ジルコニウム、酸素の三元合金の融点、セ氏2300度付近といわれる。この温度ではコンクリートは溶かせないからチャイナシンドロームは起きない。

溶融炉心の下面は冷却水に接触しているので、鋳鉄を思わせるような、硬いクラスト状態になっていた。だがその上では溶融した燃料が横方向に流れて、薄いステンレス鋼製の炉心シュラウドと接触して穴を開け、そこから落下した溶融燃料は、直径15~20センチくらいのボール状に固まったのが、炉心底部で多数発見されている。

以上がTMI事故での炉心溶融挙動だ。福島原発事故での炉心挙動もこれに類似している。その一つが、水位の低下によって炉心の上部2メートルほどが、水面上に長時間露出していた状況だ。セシウムなどの核分裂放射能が出てきたのは、海水の注入によって燃料が分断された結果だ。また水素の発生が爆発に繋がったのは周知の通りだ。TMI炉心は、1週間後安定冷却に成功した。福島も成功する。

TMIと福島の相違点は、一つは、福島はBWRであるため炉心上部に汽水分離器という構造物があることだ。この構造が、炉心の蒸気を圧力容器上部に抜け出すうえでの抵抗として働き、蒸気を炉心に留めるので海水が入り難くなる。TMIに較べて、BWRは溶融炉心を冷却しにくい面がある。 (次ページへ続く)

緊急寄稿・東北関東大震災

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