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【静岡】

「津波は来ない」断言 浜松市、避難所指定せず

2011年3月20日

静岡、沼津は対策進む

舞阪中の屋上から見た住宅地。高台や3階以上の建物がほとんどない。左奥に見えるビル群が弁天島のホテルやマンション=浜松市西区舞阪町で

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 「いったいどこに逃げれば」。津波の脅威をまざまざとみせつけた東日本大震災を受け、静岡県沿岸部で周りに高台や高い建物がない地域の住民が不安に襲われている。東海地震の津波は10メートル級。しかし対津波の避難所整備は自治体ごとにまちまちで、浜松市は避難所の指定すらしていない。これではいくら住民の防災意識が増しても、多くの命が犠牲になりかねない。 (報道部・原田遼)

 浜松市西区舞阪町は南に遠州灘、北と西に浜名湖が広がる。海岸から約300メートルの距離にある鉄筋3階建て(高さ11・5メートル)の舞阪中学校の屋上に上った。

 「東海地震がきたらこの一帯は波にのまれてしまう。この屋上は詰めても500人。他の住人はどうしたらいいのか…」と外山昭博教頭は顔を曇らせる。

 北は見渡す限り住宅地が広がり、3階以上の建物はほとんどない。北西約2キロ先に弁天島のホテル群が見えるが、浜名湖にかかる橋を渡るため、避難には危険が伴う。

 舞阪町には合併前の旧舞阪町が指定した津波避難施設が13カ所あるが、基準は鉄筋2階以上で、10メートル級の津波には耐えられない。理髪店の店主(37)は「海から逃げても、浜名湖側から津波が来る。みんなあきらめているよ」と苦笑いだ。

 だが舞阪町より東の浜松市沿岸になると、津波の避難所すらない。浜松市の伊藤一彦・危機管理課長は、東海地震による市内の津波想定が5メートルであることを根拠に「天竜川から舞阪まで5メートルの防潮堤があるから、市内に津波は来ない」と断言。だから「(合併前に指定された場所を除き)市は対津波の避難所を指定していない」と説明する。

 避難所がある舞阪町の東側に位置する馬郡町や坪井町(旧浜松市内)。舞阪町と同じような立地だが、住人に安全な場所は示されていない。坪井町の女性会社員(62)は「震災後すぐに防災リュックを作り、家族で避難計画を練った。でもどこに逃げればいいのか、今も結論が出ない」と嘆く。

10メートル規模の津波を想定して設けられた避難用タワー=沼津市内浦重須で

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 一方、最大7・2メートルの津波が想定される静岡市は「津波避難ビル」として、市内で56(公営22、民間34)施設の73棟を指定。看板も出し、市民の目に付くようにしている。津波の危険度が低い地区を除き、原則鉄筋3階建て以上。外の階段が上れるなど、24時間利用を条件としている。

 沼津市は津波想定が10メートルを超えるため、沿岸部の静浦地区や西浦地区を中心に整備が進む。山の斜面を切り崩してコンクリートで整備した「避難マウント」(高さ12メートル、300人収容)、鉄筋の階段と台座を設置した「津波避難タワー」(津波想定より2メートル高、収容80人)が、それぞれ3カ所。静岡市の「津波避難ビル」に相当する「津波避難協力所」(鉄筋3階建て以上)は465カ所指定している。

 東日本大震災では4階まで津波が達した場所があり、東海地震が自治体の想定を上回る可能性もある。名古屋大大学院の水谷法美教授は「東日本大震災の断層の割れが東海地震を早めたという説がある。行政は早急に津波に対して弱い地区を特定すべきだ」と語気を強めた。

 

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