「電気自動車」市場を狙い急加速する日本の部品・材料開発

第1回:部品や材料の小型化目指す

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2011/03/07 00:00
近岡 裕,高田 憲一,池松 由香=日経ものづくり
出典:日経ものづくり,2010年8月 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

電気自動車を照準に、日本の部品メーカーや材料メーカーが動き始めた。その状況を端的に表していたのが、2010年6月と7月に相次いで催された2つの展示会「次世代自動車産業展 A-NEXT2010」と「電気自動車開発技術展 EVEX2010」だ。共に「電気自動車元年」ともいわれる2010年に初めて開催されたもの。展示会の規模はまだ小さいが、電気自動車市場のビジネスチャンスを虎視眈々と狙う部品・材料メーカーがブースを構えていた。

 電気自動車に関する報道は増えているし、日産自動車が2010年末に発売する「リーフ」に対する世間の期待も大きいようだ。だが、電気自動車の普及台数は圧倒的に少なく、足元では利益を生むビジネスとは言い難い。

 にもかかわらず、部品・材料メーカーを電気自動車向けの技術開発に突き動かす大きな理由の1つは、危機感だ。例えば、NOKの社員はこう語る。「当社は自動車のエンジン向けに大量のシール材を生産・販売している。もしも電気自動車の時代が来たら、売り上げが大きく減る可能性がある。今から開発を始めておかなければ、手遅れになる」。

 まずは「転ばぬ先のつえ」として開発を進め、行く行くは新たな収益源に育てたい。そんな思いが各社の部品や材料に込められているようだ。

航続距離を延ばすために…

 今の電気自動車は、普及する上でさまざまな課題を抱えている。電気自動車を構成する部品や材料に求められるのは、そうした課題を解決、もしくは軽減するための技術だ。まず、現在の電気自動車はエネルギ密度が低い2次電池を使わざるを得ないことから、航続距離に制限がある。これを少しでも延ばすためには、部品や材料の軽量・小型化が必要だ。

 木型製作や電気自動車の開発などを手掛けるTakayanagi(本社浜松市)は、2011年の春に630万円(税込み)で発売する予定の高級小型電気自動車「miluira(ミルイラ)」の内部構造を公開した(p.52の右下の写真)。完成車はもちろん、車体を構成する部品(ユニット部品)の販売を狙うが故の試みだ。この中でひときわ目立っていたのが、軽量化を図ったモータである(図1)。筐体に炭素繊維強化樹脂(CFRP)を採用。筐体の質量を、現行のアルミニウム合金製筐体に対して1/5に、同じく鋼製筐体に対しては1/9に軽くした。

図1●軽量にしたモータ筐体(Takayanagi)
材料にCFRPを採用し、木型を使って成形した。質量は、アルミ合金製筐体の1/5と軽い。
[画像のクリックで拡大表示]

 このCFRP製筐体は3層構造となっており、間に磁性体を挟み、その内側と外側を円筒形のCFRPシートで包んでいる。加工法は、木型を使ったプレス成形。「抜きこう配を設けずに、円筒形状にする木型の技術を生かした」(同社代表取締役で木型一級技能士の髙柳力也氏)。なお、磁性体を挟んだのは、ステータの外側(筐体側)に磁気回路を形成し、磁束を有効活用するためと思われる。

 通常、モータの筐体には鋼やアルミ合金など金属を使うが、軽量化のために代替材料の採用を検討した。その中で、通常の樹脂では耐熱性や強度が不足することからCFRPに着目した。

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