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バーレーン:怒る市民「弾圧、米がゴーサイン」 サウジ軍の介入黙認、疑念強まる

 【マナマ鵜塚健】ペルシャ湾岸、バーレーンの首都マナマで22日、治安部隊から狙撃されて死亡した女性の葬儀があり、葬儀後に数千人の参列者が王室解体などを求める抗議デモに発展した。3月中旬以降、同国内ではサウジアラビア軍も加わった治安部隊による、イスラム教シーア派住民への弾圧が続く。市民の間ではスンニ派主導の政府・王室への反発だけでなく、サウジ軍介入を「黙認」する米国への不信が強まっている。

 「ハリファ王室に死を」「サウジ軍は撤退しろ」。マナマ市中心部のモスク(イスラム礼拝所)であった主婦バヒア・アラディさん(51)の葬儀の後、参列者の怒りの声が周辺に響きわたった。

 地元紙によると、デモに関連した死者は21人目。親族らによると、アラディさんは15日夜、マナマ市内で買い物のため車を運転中、頭と肩を警戒中の治安部隊に銃で撃ち抜かれた。21日に搬送先の病院で死亡したが、家族には直前まで何も知らされず、遺体の引き取りの際には「死因は交通事故」と書かれた文書に署名をさせられたという。

 葬儀に参列した友人女性のバグナムさん(46)は「デモと関係ない彼女がなぜ撃たれたのか」と語り、サウジ兵の関与を疑った。ゲーツ米国防長官が12日、バーレーンでハマド国王と会談してまもなく、サウジ軍介入と市民弾圧が始まったため、「弾圧にゴーサインを出したのは米国だ」と語気を強めた。

 バーレーンに米海軍第5艦隊司令部を持つ米国は、バーレーン政府に市民との対話の必要性を説く一方、混乱の背景にシーア派が多数を占めるイランの介入を指摘する。アラディさんの親類で雑貨商の男性(37)は「米国はいつもイランを敵国に仕立て、政府やサウジを擁護する。しかし、一般のシーア派住民とイランは全く関係ない。なぜ住民を見捨てるのか」と怒りを込めた。

 リビア空爆を前に、クリントン米国務長官は19日、パリでの会合で、周辺の湾岸諸国の支持を取りつけた。これに先立ちサウジ軍介入があり、バーレーン国内では「(空爆への了解がほしい)米国と(バーレーン介入の容認を求める)サウジなど湾岸諸国の間で取引があったのでは」との疑念が強まっている。

毎日新聞 2011年3月23日 東京夕刊

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