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2011年03月19日 久米宏と池上彰の「ニュースなんですけど」

[]「久米宏のラジオなんですけど」(TBSラジオ)今週のスポットライト!!ゲスト:池上彰 書き起こし。 「久米宏のラジオなんですけど」(TBSラジオ)今週のスポットライト!!ゲスト:池上彰 書き起こし。を含むブックマーク 「久米宏のラジオなんですけど」(TBSラジオ)今週のスポットライト!!ゲスト:池上彰 書き起こし。のブックマークコメント


毎週土曜日午後1時からTBSラジオで絶賛放送中の「久米宏のラジオなんですけど」の人気コーナー「今週のスポットライト!」のコーナーに、わかりやすいニュース解説で、去年大ブレイクした池上彰さんが登場して、「ニュースステーション」でニュース番組の歴史を変えた久米宏さんと対談しておりまして、大変興味深い内容だったので、全編書き起こしてみました。



池上彰と久米宏、初対面

久米宏:池上さんです。こんにちは。

池上彰:あ、こんにちは。はじめまして。

久米:あ、はじめましてなんですよねー。ほんとに初めてお目にかかって。

池上:ええ。

久米:今日は黒のタートルに紺のスーツで、テレビで見るよりはるかにシックな格好で。

池上:いやいや、久米さんはテレビでしか見たことがなかったもんですから、光栄です。

堀井美香(TBSアナウンサー。番組アシスタント。):ラジオは?

池上:ラジオはひたすら聞く側で、実はデスね、「土曜ワイドラジオTOKYO」(1978〜85 TBSラジオ)というTBSの番組でですね、久米さんがいつも土曜日の午後、いろんな現場から、中継リポートをされてらっしゃいましたよね。

久米:ボク、7年半やってます。

池上:ちょうど大学生のときに、土曜日の午後にひたすらTBSを聞いてたんです。で、久米宏という若い男性アナウンサーが面白いところ行くなあと。ホームレスの格好をしてですね、歩きながら中継するんですよ。

堀井:へえー。

池上:「いま交番の前に来ました、あ、交番のおまわりさんがこっちをにらんでます!」て実況中継するんですよ。おんもしろいひとだなー、と聞いてたら、テレビに出てきて、「あ、この人なんだー」と思ってたら、あれよあれよってことでしたね。

久米:えへへへ(苦笑)。・・・で、さっきも言いましたけど、今月いっぱいでテレビすべて降板なさって、という話を聞いて、すぐに出演をご依頼して、まさか3月の最終の近いところに生放送だし、とてもご出演いただけないと思っていたら、意外や意外、来ていただいて・・・ありがとう。よく時間とれましたね。

池上:いえいえ、とにかく放送の世界から姿消す前に、一度お会いしたかったので。

久米:今一瞬、姿消すの、ボクかなー、なんて。

池上:いやいやいやいや(笑)。・・・(落ち着いて)主語が、ちがいますよー!

テレビ降板の真相とは

久米:難しい話かもしれないけど、気になさってる方がいっぱいいると思うんで。あれだけいっぱいテレビもラジオもやってて、いきなり今月いっぱいで全部やめちゃう理由って、なんなんですか?

池上:あ、あのー私、活字の人間なんですよ。ま、NHKで記者をやってましたから、原稿を書くわけですね。私はNHKにいる時代、アナウンサーが読む原稿を書く仕事をしていたわけですね。ですから、文章を書くのが私の本業で、それがいつの間にかテレビに出てたのは、「なんか違うな」という思いがあって。

久米:それはNHKをやめてフリーになるとき、えー、2005年だったですかね。

池上:ちょうど6年前ですね。

久米:(さっき言った理由と)同じようなことおっしゃってませんでした?

池上:その通りです!(きっぱり)

久米:(笑)

池上:で、NHKをやめて、執筆に専念しようと。ですから、その後テレビのいろんなところからのお話、レギュラーは全部お断りしてたんですよ。時々ならいいですよ、ということでやってたらですね、「学べる!!ニュースショー!」(テレビ朝日)という、今私がやってる「学べるニュース」の前身の番組なんですが、コメンテーターとしてちょっと出て下さい、と。で、海外に取材に行くときはいつ休んで下さっても結構です、と。大変楽なオファーがあったもんですから。「んー、じゃあ、まあいいか。」と。ちょっとやって、ニュースを解説してたら、やめられなくなっちゃったー、というのがあって。気がついたら、「あれ?おれは何をやってるんだ?」と思ったんですね。ここで初心に返らなきゃ、というので、ちょうど3月がキリがいいかな、と。

久米:だけどまあ、次から次へと、番組をいっぱい抱えてらっしゃって、よく倒れないで生きてきたな−!、とボクは思って見てたんですけど。

池上:そんなことないですー。

(中略)

久米:でも辞めるときには大変だったでしょう。視聴率はいいし。

池上:んー。まあ、テレビ局さんによっては、なかなか大変でしたね。

久米:番組やめるのが大変だというのは、よくわかってるんですけど。よくぞいっぺんにおやめになれましたよね。全部。

池上:辞めるならいっぺんに辞めるしかないな、ということですね。いろんな局は、「あーあちらの局(の番組)もおやめになるんなら、しょうがないですね、いいですよ。」となってくれるわけですね。ひとつだけなかなか、どうしても「うん」と言ってくれない局がありまして、往生したんですが。

久米:ぼくも、1985年の3月に、番組全部降りたんですが、そん時もまー、大変でしたけどねー。

池上:はい。

久米:で、2004年に、また番組降りたんですけど、こんときもまた大変で。番組を始めて成功させるのもえんらい大変ですけど、やめるのって、もー、往生しますよね。

池上:そうですね、不思議ですね。数字が取れないから番組が打ち切り、ってのは向こうからすぐ言ってくるんですが、出演した側が「やめよう」というと、「えー!それはないよ!」って言われちゃうんですね。これ、不思議なもんですね。

NHKに入ったいきさつと、入って良かったこと。

久米:NHK時代はずいぶん長かったんですけど、地方局を当たり前ですけど異動してて。で、慶応のご出身なんですけど、NHKと朝日新聞の入社試験をお受けになった。

池上:いや、両方(同時には)受けられなかったんです。当時は試験日が一緒だったんです。学科試験が同じで。

久米:そっか!同じ日だったんだ。

池上:7月1日だったんです。

久米:うん。

池上:朝日、毎日、読売、NHK、共同通信が7月1日だったんです。で、7月2日が、えー、産経新聞と日経新聞と時事通信だったんですね。

久米:よっくおぼえてますね、つまらないことを(笑)。

池上;はい、よーくおぼえてるんです(笑)

久米:やっぱ記憶力の問題ですかね。全然記憶力がないんで。うん、それで?

池上:それで、7月1日にどうしようかなと思って、朝日新聞とNHKの両方に願書を出しておいて、ギリギリまで迷って、ま、NHKを受けに行った、ということですね。

久米:はあー。どっちがよかったですかね?

池上:どっちでしょうねえ・・・。・・・ああ!でも!おかげさで、こういう仕事(テレビの仕事?)やってたおかげで、朝日新聞にコラムを持つことが出来ましてね。朝日新聞の記者がコラムを持つって、大変なことなんですよ。よっぽど文章がうまくないと、朝日新聞記者がコラム持てないんですね。私、朝日新聞に入らなかったおかげで、朝日新聞にコラムを持つことができまして。

久米:入らなかったからこそ、両方制覇出来たと(笑)。

池上:そういうことですね(笑)。

「週刊こどもニュース」と「ニュースステーション」の意外な因縁

久米:さっきスタッフと話してたんですけど、あのー、「週刊こどもニュース」でブレイクなさったわけですけど、あんなかで、番組にはプロデューサーがいて、ディレクターがいて、他にもスタッフが大勢いて、セットを作ったり模型をつくったり、そういうことに関して普通はディレクターが全部模型を美術の人と相談してやって、ってことになるんですけど、あの、池上さんの意志で「ああいう模型にしよう」「こういう模型にしよう」って出演者のお一人なのに、なんで、NHKのなかでああいうことが出来るのは奇跡だ、って話をしてたんです。

池上:ああ、そうですか。私、あの番組の編集責任者だったんですよ。

堀井:ふうううううん。

池上:週刊誌でいうところの編集長だったんですね。はい。で、来週、どんなことを取り上げようか、というテーマは私が決めるわけですね。で、一緒にやってるスタッフは、教育テレビの子ども向け番組を作ってるスタッフなんですよ。だからニュースのことには詳しくないわけです。そうすると、どのニュースを取り上げるかという判断は、報道にいるわたしが決めざるを得ませんよね。

久米:うん。

池上:それからニュースのことをよく知っていないと、どんな模型にするかってことを、考えられないわけですよ。ですから、「こういう模型にしようよ、ね。」と案を出して、で、その時にスタッフは子ども向け番組のプロですから、じゃあ子ども向けにするには「こうしたらどうですか?」というアイデアを出してくれて、一緒に作っていった。で、基本的な模型の設計は私がしてた、ということですね。

久米:あの番組は「ニュースステーション」が始まってしばらくしてから始まったんですけど。

池上:はい。

久米:とにかく「ニュースステーション」のスタッフには全員に、「あの番組は見ろ!」・・・ということだったんですよ。

池上:・・ということが内部情報で漏れてきました。

久米:(爆笑)。

池上:ええ、「ニュースステーション」はそう言ってるよ、という話が伝わってきまして。

久米:もう全員必見だ!ということだったんですけど。模型なんかにしても・・・・結構難しいんですよね。模型ってね!

池上:難しいですね。

久米:どういう模型を作るかって、その、カメラで撮った時、それからどういう見せ方をするかってとこまで考えて、縮尺の大きさはどうするかってことまで、どう考えてるのかって。とても難しくて。模型ほど難しい話じゃなくても、フリップっていうやつがあるんですけどね。

池上:はい。

久米:フリップ1枚いくら、ってのがかかるんですけど、ボクはね、フリップなんてものは、カメラで寄れば、如何ような大きさでも精密に出来ていれば、そんな大きなものを作る必要はない。ちっちゃくたって寄ればいいじゃないか。ちっちゃくてコンパクトにした方がと、机の上が整理しやすいんですね。

池上:(感心しながら)はいはいはい。

久米:そういうことで、昔からの習慣で、フリップはこの大きさ(おそらく身振りで示していると思われる)って決めちゃってるんですよ。

池上:わかります。

久米:あれを半分にしてくれると、ニュースやってる司会者の机の上は整理整頓ができる。そういうことも言わないと気付かないんですよね。昔からの習慣でやってるから。模型もそうで。

池上:だから、「ニュースステーション」がどんな模型を作るのかってのはこちらも、大変参考にしててですね。ある時ですね、ある金融危機の時ですね、もし銀行が倒産してしまったら、その後、そこからお金を借りてる人に対してどう、継承する銀行を作るか。ブリッジバンクというのを作ろう、という話があってですね。「こどもニュース」で一生懸命ね、「橋が銀行になる」って模型を考えついて作ったんですよ。

久米:ブリッジ(橋)バンクですからね。

池上:で、一週間後、なにげなく「ニュースステーション」を見てたらですね、橋が銀行になる模型が出てきましてですね。

堀井:あら!?

久米:ええ、全員(「こどもニュース」を)見てますからね!

池上:たまげましたね。「ニュースステーション」の方が模型の完成度は高かったですけど。

久米:だから模型をやって、

久米宏が語る「週刊こどもニュース」のすごさ。

久米;・・・・ただね、ここで「ニュースステーション」と「こどもニュース」を比べてもしょうがないんですけど、「週刊こどもニュース」は「徹底的にわからせよう」という姿勢は、尊敬していたんです。とても。

池上:はい。

久米:「ニュースステーション」はね、今だからこそ言うんですけど、「分かった気にさせる」だけなんです。

池上:いえ、そんなことないですよ。

久米:テレビ見てたひとが「あ、わかった!」という風に、錯覚してくれれば十分だったんです。それ以上、本当にわからせるのは不可能だって、ぼく、思ってましたから。ニュースってものはあまりにも深くて。すべてのニュースはあまりにも深い。だから根本まで説明しない!1日かかっちゃうから!不可能だから!そういう場合はテレビ見てる人に、「分かった!」って一種のカタルシスをね、伝えられれば十分だと思ってたんです。

池上:ええ。はい。

久米:「こどもニュース」はちがったんです。根本的な「言葉」の問題から始まる。そのことは、一体どういうことなの?そんなことやってたら時間がいくらあっても足らないんですよ、オトナの番組では。

堀井:やさしく伝える方が難しいですもんねー。

久米:やさしく伝えるほうが難しい。みんなわかってんだ。言葉の問題は、池上さんはこだわってらっしゃいますけど。みんな「わかっちゃった」ふりをしてる人も多いけど、そんな根本を考えてないんです、言葉なんて。

池上:はい。そうですよね。

久米:さあーっと使ってますよね、毎日。

ニュース原稿とアナウンサーが相乗して生み出すニュースの「わかりづらさ」

池上:でもね、「日銀が「量的緩和」をしました。」ってーと、何となく分かった気になってね、でもオトナのニュースでは資金をジャブジャブと提供してますと。資金を供給してます。・・・え?どうやって?って思うわけですよ。そこで、そもそも日銀がどうやって資金を供給するのか、ってところから調べて、子どもが分かるように考えるわけですね。そうすると発行済みの国債を、民間の銀行が持ってる。日銀がその国債を買い上げれば、その時日銀がお札を印刷して、銀行に渡すことができるんですね。この時、一般的に日銀券が外にでていくんですよ。これがジャブジャブと資金を供給することだよ、ということを説明すれば、量的緩和という意味が分かっていただけるかな、ってなことを毎週毎週、考えていたんですね。

久米:あのー、まあ、NHKのテレビのニュースってのは、ラジオのニュースの原稿そのまま使ってたってのを池上さんの話で始めて知ったんですけど、それじゃあニュースは分かりづらくなりますわねえ。

池上:そうですね。

久米:ニュース原稿ってのは、ラジオ聞いてる人にこんな話してもしょうがないですけど、長いんですよ、ワンセンテンス(句点によって分けられた一つづきの言葉)が!

堀井:はいー。

久米:やたら。

池上:はい。

久米:原稿用紙一枚でセンテンスが終わらないケースさえあるくらいで、お前これ異常だろう!って。で、文章は短くしたほうが伝わるんですけど、今度は短くすると、全体の総量が増えちゃうんです。どういうわけか、日本語って。

池上:はい。そうですね。

久米:2行くらいの積み重ねにすると、紙が倍くらいになっちゃうんですよ。だけど、そうなった場合にはいらないところを削って、文章は短くしようという運動をやるためには、5年くらいかかりましたからね。文章を短くする、それだけでも変わらない(変えられない)ですからね、記者の方たちって。

池上:そうですね。で、「こどもニュース」をやる前に、首都圏のニュースのキャスターをやってですね、その時に初めて、他の記者が書いた原稿を読む立場になったわけですね。そこで初めて、久米さんが感じられたことと同じ事を考えたんですね。「なんで一つの文章が長いんだろう」と。で、アナウンサーは偉大だって思いましたね。「アナウンサーは、これ、読んじゃうんだ。」。で、NHKのニュース原稿の、一番いけないところは、アナウンサーの読みが上手すぎることなんですよ。

堀井:うーん。

久米:そうですね。

池上:アナウンサーが見事に読んでみせちゃうもんですから、記者のへたくそな原稿が上手に聞こえるんですね。だから、自分は上手な原稿を書いているんだ、って誤解するんですよ。

久米:また、NHKのアナウンサーたちは上手いから、きれいに立て板に水で文章を読むから、ますます聞いてるとわからないです、なに言ってるか(笑)。

池上:ああー。そうなんですよ。

久米:いいんですか、そんなこと言っちゃって(笑)。

池上:いいですよ(笑)。

久米:(笑)

池上:私はプロじゃない。アナウンサーじゃないわけですよ。アナウンスの研修を一切受けたことがない。自己流ですから。記者として読もうとすると、長い文章が・・・読めないんです。

久米:読めないですよ−。

池上:そこで、私はデスクだったので、記者の原稿を直す権限が与えられていたものですから、じゃあ、私が息が継ぐところで、文章を切ってしまおうって。どんどん短い文章の積み重ねに変えていったんですよ。そしたら「あ、どんどんわかりやすくなる」。あるいは、文章を切っていくと論理的につながらないところが出てくるんですね。論理的につながらないものも、文章にするとつながっているようにカンチガイされるんですね。切っていくと論理的につながってるかどうかがわかる。つながらないところは切っていく。「大変わかりやすくなる」と。

久米:そうなんですよねえ。あれ、短くするとニュース原稿ってわかりやすくなるんですけど、もう、むかーーしから、愛宕山時代(注:かつてNHKは愛宕山に放送局があった)から変わらないですから。そう簡単には。

池上:(爆笑)

久米:日本人って不思議なもんで、文章って、読んで、じゃなくて、目で見た字面で「名文だ!」って錯覚しちゃったりするんですね。特に字がきれいな記者なんかってのはね、名文のように見えちゃうんですけど、全然中身がなかったりするんです。それが音声になってみたり、テレビに映ってみたりすると、本当のことがわかっちゃって、「実にわかりにくい」ということがわかったりするんですよね。お疲れでしたよね。長い間。

池上:いえいえいえ(笑)。・・・目で見てわかってても、声に出すととんでもないことになる、という一例がありましてね。

久米:ええ。

池上:首都圏のニュースをやってるころに「コレラ患者が各地に出た」ってのがありましてね。で、原稿を読んだら、「これらのコレラ患者は〜」って出てくるわけですよ。書いてると、なんの違和感もなく(「これらのコレラ患者は」と)書きますよね。だけど声に出すと・・・「お前、ダジャレ言ってる場合か!」って話になっちゃいますね。

久米:池上さんはダジャレ好きですけどね。(笑)。

池上:いえいえいえ(笑)。それは置いといてですね。まるで私が深刻なニュースでダジャレを受け取られると困っちゃうわけですけれども。やっぱり、声に出すことによって「伝わる/伝わらない」、あるいはとんでもない原稿かどうかってことがわかりますよね。

池上彰が還暦を迎えて見た震災

久米:あのー、がらっと話は変わるんですけど。去年の夏は猛烈に暑かったんですけど、その暑い最中、還暦をお迎えになったわけですね。

池上:?・・・ああ、そうですね。

久米:長野の松本で生まれて60年生きてきて、今、東京でお暮らしですけど。60年の人生はいかがなもんでしたか?

池上:(笑)。な・・なんで突然そんなことを?

久米:いやー、誰にも聞かれたことないこと聞こうかなー、って考えていたんです。どんなもんでしたか?いままで生きてきた60年の人生って。

池上:まあ、あっという間ですよね。で、子どもの頃は、還暦ってとてつもない年寄りだと思ってたんですね。「60歳って・・・うわー!考えられないジジイだ!」って思っていたら。自分がそうなってみると「あれ?まだまだ若いな。」と。あるいは、「まだまだ成熟してないな」と思いますよね。

久米:ぼく、小学校2年生のころ、自分が小学6年生になるのが不可能だと思ってましたもんね、あまりに先が長いもんで。

池上:(笑)わかります。

久米:だってね!小学校2年生のとき、6年生が校庭にいるじゃない!?朝礼の時なんか。「ボクがあの6年生になるなんて」って不可能なくらい遠かったんですよ。

堀井:大きく見えますもんねー(笑)。

久米:それが今、66(歳)ですからね−。6年生が二つならんじゃった(笑)。

堀井:日が経ちすぎですよー(笑)。

久米:60年生きてきてあっという間だってことだったんですけど。それで、今回の大震災ですけどね。これ、60年生きてきた日本人から見て、戦後(の中でも特に)大ピンチが今、日本を襲っていると考えて間違いないと思うんですけど。

池上:そうですね。

久米:池上さんはどうごらんになってますか?

池上:あのねー。「第2の焼け跡からの出発」じゃないかとおもうわけですよ。

久米:うん。

池上:特に三陸のあそこ(震災跡)を見ると、何にも残ってませんよね。

久米:ないです。ええ。

池上:で、阪神大震災の場合はまだ、ビルが壊れましたけど、残ってました。今度(今回の震災)は跡形もなく何にもないわけですね。これ、1945年の、終戦直後の、全国の街なんですよ。何にも残ってない。そっから私たち・・・じゃないな、私たちの親世代、あるいは祖父母世代が、見事に立ち直らせてきたわけですよ。

久米:ボクはね、子どもの時に、一日に何回も停電するという記憶がかなりはっきりあります。

池上:私もありました。小学生の時は東京にいましたけど、しょっちゅう停電してましたね。「あー、また停電した。」って。常にろうそくと懐中電灯必須でしたね。

久米:しかも予告なしですからね。今の(計画)停電とちがってね。

堀井:へえー。

久米:いきなり切れるんですよ。北朝鮮でもよくありましたけどね。いきなり「ぺっ」って消えるんです。

池上:それだけ安定してなかったんですよ。電力供給が。

堀井:電車の中も暗かったんですか?今みたいに。

池上:電車・・・ってぼくあんまり乗ったことないですねえ。

堀井:ああ、そうですか?

池上:電車が走ってるのは都会だけでしたしね。だって、千葉に海水浴に行くときは蒸気機関車でしたよ?

堀井:(笑)

久米:・・・ちょっと待って下さいよ?1950年生まれですよね?

池上:そうですよ。

久米:ボク、44年生まれなんですよ。

池上:だから1960年くらい、内房線、外房線は蒸気機関車が走ってましたよ。

久米:当然電化されてるわけないし、ディーゼルがあるわけないから、機関車以外考えられないですよね?

池上:そうです。

久米:・・・そうなんだー。

池上:松本に里帰りするときは、もうトンネルに入るときは、もう大変ですね。みんなで協力し合って窓を閉めるわけですよ。

久米:閉めても窓から入ってくるから、煙が!

堀井:えー!?(笑)

池上:蒸気機関車の煙が全部車内に入ってくるわけですよ。

久米:丹那トンネル通るときなんか大変でねー。どうしても入ってきちゃうんです。見えるんです。煙がぴゅーっと。

池上:顔がすすだらけになっちゃう。

堀井:40年前ってそんなだったんですねえ。

池上:それを思えばですね。ま、東北の人たちにとっては大変なんですけれども、(戦後の日本人は)そこから立ち上がってきたわけですよ。それを改めて考えなければいけないんだ、ということが一つと。これだけ東京電力管内で停電が続きますと、今度はね、東京電力管内での産業の空洞化が起きてくるな、という恐れを持ってましてね。

久米;結構経済的にも、会社経営的にも厳しいところ、増えてきましたね。

池上:ええ。これから夏にかけて、電力不足になりますね。そうなりますと、「大口の需要者」いわゆる「大企業の工場」ですよね。工場に「一週間操業をやめてくれませんか」ってお願いがいくに決まってるんですね。

久米:うん。

池上:そうなると、「やってられないよ!」と言って東京電力管内から他に逃げていくんじゃないか、という心配がありますし、原子力発電に頼っていられない生活をしなければいけない。まったく発想を大転換することを、しなければいけない。でも私たちが暮らしている今の電力の使用量って、東京電力管内で言うと、1980年代くらいの量にすれば、今の供給量で間に合うんですよ。だから、暮らしを30年前に戻せば、やってけるんですね。

「安全」という「言霊」が生み出す「緩み」

久米:あのー。原子力の事故についてはどうお考えですか?

池上:色んな思いがありますが、ひとつ。「言霊(ことだま)」という言葉がありますね。言葉自体が、魂というか霊を持ってる、それ自体がチカラを持っている、というのがありまして、「原子力発電所は『 安 全 』だ」と建設する時に言ってました。

久米:うん。

池上:「 安 全 だ 」というとね、「じゃあ事故が起こったときにどうしよう」ということになると、「いや、『 安 全 』だから、事故が起きた時のことは想定しなくていいですよ。」という論理が、どこかで忍び寄ってくるわけですね。

久米:うん。

池上:海外ですと、「原子力発電は『安全』 だ け れ ど も 、もし何かがあったときの為に周辺の住民の避難訓練をやりましょう」ということをやっているわけです。日本ですと、「避難訓練をやりましょう。」って言っても、「え ? 『 安 全 』 な ん で し ょ ? 避難訓練が必要なモノは作らないでくれ!」という話になるもんですから、結局、電力会社の関係会社の人たちが、住民の役をして、避難訓練をするということになったり、「 『 安 全 』 な ん だ か ら 、二重三重四重の安全対策は必要ないよね?」というある種の「言霊」にとらわれて現実を見ない。その結果、このような、「無様」な結果になっているんだな、という思いはしてますね。

久米:ボクもあれは「ぞっ」としたんですけど、あのー、水蒸気を抜いて圧力を下げる弁がありましたけど、あの弁はもともと付いてなかったんですってね?日本の原子炉には。「そういうこと」(事故)は起こらないから付ける必要はない!って付けてなかったんですけど、海外で付け始めたんで、「それじゃあ付けるか」ってんで、付けて助かったんですよ。危ないところだったって聞いてぞっとしましたけど。

池上:はい。

久米宏がこだわるニュースのスケール感

久米:二三日前の「スペシャル」も拝見してたんですけど、さっきも前山という科学者に言ってたんですけど、どこの局も同じような原子炉の図を出すんですけど、なんで寸法を入れてくれないんだって言ってたんです。燃料棒が4メーターちょい、くらいしかわからないから、原子炉が立地しているところは、広大な海岸なんで、絶対的な大きさが分からないんですよ。

池上:確かにそうですね。

久米:どれほどの、いかような大きさのものなのか、使用済み燃料棒を入れる水が千㌧以上も入るプールだと聞いてますます大きさがわからなくなって。どうしてフリップに寸法を入れてくれないんだろうと、ずーっと思ってたんです。

お願いしますよ(笑)。

池上:わかりました(笑)。高さ12メートルだということをちゃんと言わなきゃいけないですね。

久米:全体の高さが12メートルなんですか?

池上:ええ。そうですね。

久米:初めてわかった。それは一号炉ですか?

池上:え、あの問題になってる三号炉ですね。はい。

久米:あれは出力が75万くらいあるやつですよね。

池上:はい、そうですね。

久米:高さが15メーター。三階建て?

池上:ええまあ、だから、12メートルですね。いわゆる貯水プールの方です。使用済み核燃料が入っているプールの高さが12メートル。

久米:燃料棒の高さの3倍あるんですよね?建屋が飛んで、原子炉の本体ってのは地下の方にずーっと入っているかどうかも疑問なんですよ。あのドーナツ状の。あれが地下の方にずーっと入っていってるのか、建屋の上に乗っかるくらいの大きさなのか、その辺のスケール感がわからないんですね。

池上:なるほどねー。「ニュースステーション」はこういう発想で作られているのかって、今わかりましたね。常にいろんなスケールの中で、スケールがわかるような模型をいつも作ってたのは、久米さんがこういうことを指摘していたからんだな、と今、わかりましたけどね。

久米:つまり原子炉が、思ったよりも小さいと、安心・・・じゃないんですけどね、「あ、意外に小さいんだな」という感覚と、「想像を絶する巨大な施設」だった場合の恐怖感て、ちょっと違ってくるようなきがするんですよね。

池上:そうですね。

久米宏と池上彰が、一視聴者として見た地震報道

池上:それともうひとつ、今回の報道を見ていてですね、一視聴者として見てた部分があるんですが、そうすると非常にもどかしいんですね。つまり、専門家の方が、専門用語を言いますね。ところが、それを伝えているニュースのアナウンサーやキャスターが、今のことはどういうことか、ということをわからない。本当はそこで、非常に素朴に「それなんですか?」って聞いてくれればいいんだけど、プライドが許さないのか、何を聞いていいのかわからないのかはわからないですが、聞かないんですね。その結果、専門家の話がそのまんま出て、何事もなかったように次へ行く。結果的に見ている人が「今の話、なんだったの?」→「わけわからない」。これが心配しないといけないことなのか、安心できる話なのかわからないまま次へ行く、わからないから不安になっていく、ということが積み重なってきたな、って思うんですよ。

久米:テレビ見てる人はいろんなことを感じちゃったりするもんで、例えば、東電という企業があまりに巨大なもんですから、もしかしたら東電に関して政府もちょっときづかいをしすぎているのではあるまいか、あるいは、東電が昔(江戸時代)の前田家のように巨大な藩で、何十万石か知りませんけど、あまりに巨大な王国なもんですから、東電自体が、自分たちの意識が「東電王国の住人」であって、よそさまからは口出しできないような状況の企業なのか、で、科学者は東電のお世話になっていて、研究費ももらっているだろうし、原子炉の人たちは政府から援助金ももらっているから、かなり遠慮してしゃべっているんじゃないだろうか、もしかしたら、NHK自体も、政府に遠慮した報道をしようと思っているんじゃなかろうか、ってことまで考えて、テレビを見ていると思うんです、国民は。

池上:そうだとおもいます。

久米:そのへんは池上さんはどう思います。

池上:まずNHKの話で言えば、そういうきづかいは一切ないですね。これは断言できます。で、今あそこで解説しているのが、私の後輩ですからよく知ってますけれども、数日前は東京電力の発表があまりに酷いと放送中に怒ってましたね。人間的な反応を見せてましたが、基本的に、事実を淡々と伝える。判断するのは視聴者だよ、というのがあり、とにかく、過度の不安を煽りたてるようなことはしないでおこうと。不安をあおり立てると視聴率は上がるんですが、そういうことをしてはいけないよ、ということでやっているんです。やっているが故に、淡々とやるもんですから、見ている側が欲求不満が出てくるわけですよ。「これは何かを隠しているんじゃないか?」と思ってしまう。隠しているなんてことはまったくないし、でてきたものは全部伝えているんですが、とにかく落ち着いて淡々と伝えようとやることによって、視聴者が不満を持つのがあるのかな、というのはあります。ただ、その一方で、東京電力という組織自体は巨大な組織ですし、日本の場合は「九電力体制」と言って、北海道は北海道電力、東北は東北電力、というカタチで、いくつもの電力会社を分けてたのはいいんですけど、ひとつの地域は「地域独占」ですよね。ライバルはいないんですね。その結果、お客様のために、という発想がどっか行っちゃうんですね。ライバルがいると随分変わります。例えばいい例は、かつての電電公社です。電電公社は電話、電報を1社で独占してましたから、殿様商法でした。それが民間になり、様々なauとか、ソフトバンクとか、ライバル会社が出てきた途端に、みるみる便利になっていったんですね。そういう仕組みがないと、本当に殿様商法で、「下々のものは聞いておればいいんだ」という体質が残っているなと思いますね。

久米:えー・・・45分までお時間があるそうなので、お茶でも飲んでいってください。

池上:ありがとうございます。

松本松本 2011/03/24 10:14 やはりニュース最前線にいた人奥が深い。TVニュース番組継続お願いします。

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