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エダヒロ×TEPCO 対談 前編

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東京電力株式会社

TEPCO 環境部長 影山 嘉宏氏 × エダヒロ 対談 前編

「私の森.jp」がスタートして早2年。創設以来ファウンディング・スポンサーとして「私の森.jp」を支えていただいている東京電力様をお訪ねし、影山嘉宏環境部長に枝廣淳子がお話をうかがいました。長年にわたって電力会社が日本の森林再生に深く関わってきた理由とは何なのでしょうか?

どうして電力会社が森づくりをするの?

枝廣 いつも「私の森.jp」をサポートしていただいてありがとうございます。おかげさまで「私の森」のほうも順調に。

影山 だいぶ増えてきました?

枝廣 そうですね。ネットワークが少しずつ広がっていることや、これまで森や環境についてアピールできていなかった人たちにもつながってきたな、という実感があって、ほんとに嬉しく思っています。今日は主に東京電力さんの森関係への取り組みについていろいろ教えていただこうと思います。

影山 はい、ぜひお願いいたします。

枝廣 まず、初歩的な質問ですが、電力会社が自然学校とか、森に力を入れていらっしゃるというのは、もともとはどういうところから始まったんですか?

影山 電力会社は、事業の特性上かなり大規模に森を所有しています。例えば水力発電所ですと、水源涵養林(すいげんかんようりん)ということで山を持っていて、もともと森を持っているんです。それから、発電所の広大な敷地にも結構大きな森林の部分があります。地域の人たちに親しんでもらう場所として発電所の周りにそれ相応の森なり芝生なり、緑をつくって管理するというのは、会社の中の一つの大きなテーマだったんです。ですから、かなり早くから森づくりに取り組んでおります。

もう一つは、もともと発電所を造ることで国土に負荷を与えているということ、例えば火力発電所ですと大気汚染物質を出したりして事業をやらせていただいているというところから、やはり自然に何か返すものがなきゃいけないんじゃないかという、そういう思想が会社の中にあります。

大規模な森林を自分で持っているということと、自然に対して何がしか貢献をしないといけないという会社としての思いと、両方が重なりあって森への取り組みになっているんだと思います。

枝廣 今でこそ、温暖化や生物多様性など、森への注目を集めるような時代になってきましたけど、もともと東電の森への取り組みというと、どこまでさかのぼることになるんでしょう?

影山 一つ大きな柱として尾瀬という存在があります。尾瀬の特別保護区の7割、全体からしても4割ぐらいを東京電力が持っています。尾瀬の管理をどうするかということが半世紀近く会社としての課題ですので、そういう面からも森に会社が深く関わってきたということかなと思います。

発電所の森づくりですと本格的に実施したのは、袖ケ浦火力発電所という所が最初です。風の強い地域ですので、種からではなかなか育たないので、ある程度育てたポット苗木を植えて、森に仕上げていくということをやっています。専門家の先生の指導を受けながら、埋め立て地にはどういう木がいいのか、地域に昔からあるような木を選んだり、スギなど針葉樹の単一樹種でなくて、広葉樹を中心に植えていくとう、そういうことも20〜30年ぐらい前から手掛けてきてきました。そういう面では、かなり古くからやってきたということですかね。いろんなことを試行錯誤しながらやっていくという状態です。今もその途中にあると思うんですけれども。

枝廣 発電所の森には何が植わっているんですか?

影山 シイとかタブとかシャリンバイというような木とか、ほとんどが常緑広葉樹ですね。

枝廣 なるほど。いわゆるスギ・ヒノキの単相林じゃなくて、豊かな緑という……。

影山 というのを狙っているんですけど。

袖ケ浦火力発電所 植栽後約30年

発電所:エコロジー緑化手法による環境保全林の形成

東京電力は「緑の資産」を持っている!

枝廣 ずっと、いわゆる森づくりをされてきたのが、最近、そのハードを活かしつつ、たとえば自然学校を開いたり、社員も地域の人やNGOと一緒に活動したりというソフトとしての森林活用に、だんだん移行されてきたような感じがするのですが、最近の東電さんの森への関わりや、森の位置づけについてお聞かせください。

影山 東京電力自然学校を立ち上げたのが平成20年4月ですが、その前から、森づくり以外にも、ビオトープづくりやバードバスなど、多様性の保全を考えたような場づくりをやってきています。そこに発電所の近くの方をお呼びして、観察会を開いたりしていました。昔は、「ペアウォッチング」というような名称で呼んでいたんですけれども、お二人で来ていただいて、見ていただいて、感想をお聞きするというようなものを、随分長いことやってきました。

それが最近の動きで、われわれもこれだけの緑の資産を持っていると。それからやはり、自然に返さないといけないという思いが重なったところで、自然学校というものを立ち上げました。皆様に自然の素晴らしさとか不思議さを知っていただいて、そこから環境意識を高めてもらうとか、そういう取り組みというのをやっていこうじゃないかということですね。

枝廣 「緑の資産」とおっしゃいましたが、すごくすてきな言葉ですね。それは東京電力の考え方として、森を緑の資産として考えるという考え方があるんですか?

影山 はい。自然学校を立ち上げる前に、われわれは尾瀬を初めとして、これだけの緑を持っていて、この緑をうまく活用しているだろうか。あるいはほかの人たちに、それを見ていただいているんだろうかということを、私の2代前ぐらいの部長が考え出したあたりからでしょうか。

枝廣 緑の資産というのは、たとえば会社のバランスシートには出てこないと思うのですが、そういう考え方、すごく大事ですよね。普通の会社のバランスシートとか、いわゆるアナリストが見る数値とは違う評価方法が生まれそうです。東京電力は緑の資産をこれだけ持っていて、過去何年間にこういう努力でこういうふうに大きくしてきて、今後何年間にこういうことをやって、それをリンクしていくものとして、自然学校が位置づけられるんだという、多分そういうことですよね。

影山 そうですね。ただ、最初から将来の計画性とか趣旨みたいなものを考えたわけではなかったですね。たとえば、発電所の緑、尾瀬の緑以外に、新潟県十日町の当間(あてま)高原に、われわれの子会社が持っているリゾートホテルがあります。その周りに非常に広大な自然がありまして、ここは国立公園の尾瀬とは違って、われわれが手を入れることができるんです。林道を造ることもできるので、自然を理解しやすいように手を加えらえるボリュームが大きな森があったわけです。ここで何ができるんだろうというところから始めて、環境教育が一番いいし、その題材もあるよねというところで、昔から何気なしにやってきたことを集大成すれば、割としっかりしたものができるのかなという。最初のきっかけはそんな感じでした。
 

枝廣 現場からの声とか、いろいろ試行錯誤で自然に生まれて来たものに、世の中がやっと付いて来たということですよね。いまはこういう活動に対して、森林の吸収源としての意義とか、生物多様性とか、指標化できるようになってきたので、緑の資産ということで、環境報告書の一つに位置づけていかれると面白いですね。

影山 そうかもしれないですね。

尾瀬から始まる社会貢献事業

枝廣 電力会社さんが、これだけ緑の資産を持っていらして、それを自分たちにとっても大事だと思って、これだけ手を入れて、お金をかけて、いろいろなことをされているというのは、まだまだ知らない人が多いですよね。尾瀬にしても、地元の人は知っていると思うんですけど……。

影山 そうでしょうね。知らない方が多いですね。

枝廣 あえてあまりPRしないんですか?

影山 枝廣さんに尾瀬を回っていただいた際にご一緒した、尾瀬保護担当の竹内純子が尾瀬と東京電力のつながりを、少しずつ皆さんに知ってもらおうと始めたのがPRの最初ですね。その前までは、やはり国立公園ということもありまして、そんなにPRする必要はないだろうと。出すことは控えておいたほうがいいんじゃないかということで、非常に消極的な広報をやっていました。

枝廣 なるほどね。

影山 歴史をさかのぼると、明治のころですか、尾瀬ケ原も国策として水力発電所を作って埋めてしまおうという計画があったんです。東京電力の前身の前身ぐらいにあたる当時の電力会社がその一帯を所有して、引き継がれて、引き継がれて、昭和26年から東京電力の所有となりました。そのうちあの有名な歌で……

枝廣 「夏の思い出」。

影山 はい。非常に多くの人が尾瀬の中に入りました。それで、湿原がめちゃめちゃになってしまったんです。会社の中で議論もあったようですけど、やはりわれわれが持っている大事な場所なので、自分たちのお金で保全しようじゃないかと、当時の経営層が決めたわけです。木道の設置や、湿原回復の事業をして、それからずっとやってきているわけです。

枝廣 これがNGOだったら、そこでお話が終わりだと思うんですけど、東京電力さんは営利企業としてやっていらして、通常ならコストと売り上げなど、何らかのベネフィットとの釣合いを見ますよね。でも、尾瀬もそうだし、ほかの自然学校とか森もそうかもしれないですけど、そういう事業単位では収支を見ないという仕組みになっているということですか?

影山 東京電力が尾瀬を保全しているということを皆さんにもわかっていただきたいということでPRは始めましたが、基本的にはわれわれの社会貢献事業ということで位置づけています。

尾瀬の木道

新しいパートナー、小菅村の登場

枝廣 今、自然学校として使われているフィールドは何カ所あるんですか?

小菅村 間伐ボランティア体験

影山 大々的にやっているのは、尾瀬と当間、それから発電所では横浜と千葉と品川の個所が中心です。それから、当社の施設ではないですけれども、多摩川の源流の小菅村という山梨県の村とも縁があって、自然学校の開催を予定しています。この村は、われわれのエコサポートプランで実施している森づくりの取り組みにおいて、縁があって知り合いました。

産官学のいろいろな方が小菅村の森林再生を検討する仲間に加えていただいて、林内作業のための路網づくりをしたり、針葉樹の単相林を混交林に変えるための広葉樹の苗を差し上げたりしてお手伝いしています。東京電力の社員を連れていって、自然学校の間伐ボランティア体験も開催しました。

枝廣 小菅村の木が中流や下流の小学校の腰板などに使われたというニュースを新聞で読みました。小菅村の話でいいなと思うのは、単に「森を守りましょう」だけではなくて、使うというところまで含めての循環をやって、つくられていることです。尾瀬のように手を付けないのも大事な森の守り方ですけど、日本の多くの森林は小菅と同じで、林業で手を入れてあげないと回らない人工林の森なんですよね。小菅村では使うとこまで含めてパイオニア的に取り組んでいらっしゃるのは、すごくすてきだなと思います。

影山 そうですね。フィールドとしても魅力的な村で、みなさん非常に活発な、明るいいい人たちですし、人口八百人ぐらいの村ですが、神楽などの伝統芸能が残っていまして、ずっと引き継がれていて、これが見るとなかなか面白い。小菅村もぜひ、日本として大事にしたい所かなというのもあって、ぜひ皆さんに知っていただきたいなと考えています。

枝廣 ところで、その5つのフィールド、プラス小菅と6つですよね。スタンプラリーみたいなの、やっているんですか?

影山 やってないですね。

枝廣 そういうのが好きな人、結構いると思いますよ。東京電力さんがやっていらっしゃるいろいろな自然学校に参加してもらって。5つや6つ回る人って、相当好きな方だろうし、いろいろな意見も言ってもらえるだろうし、そうやって、一見さんのお客さんじゃなくて、ファンというか、親善大使をつくるというか、そういうことをやっていかれてもいいかもしれないですね。

影山 親善大使ですか、それは非常にいいですね。ぜひそれはやってみたいです。

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