東日本を襲った巨大地震は、連絡が取れず安否不明の住民が数万人に上るなど想像を絶する被害をもたらしている。
「何かできることはないか」-。
遠く離れた九州に住む私たちも、切なる思いを抱いている。親族や知人が被災地に住んでいる人も少なくない。
ましてや現地では、水や食料、医薬品の不足などが伝えられている。一刻も早く救援物資を送り、ボランティア活動もしたいと思うのが人情だろう。
だが、冷静になり考えてほしい。今回は、阪神大震災と比べても被災規模は桁違いに大きい。被災地の交通網は寸断され、物流システムはまひしている。支援物資を集めても、現時点では個人レベルで現地に送る方法がないのが実情だ。
福岡市では会社経営者がインターネットで支援物資提供を呼び掛けたところ、物品を持参した市民が殺到して受け入れ態勢が追いつかず周囲が大混雑した。
呼び掛けがチェーンメールなどで一気に拡大したためだが、同じようなことはほかでも発生しているという。せっかくの善意もこれでは混乱を招くだけだ。
福岡県では、こうした事態を避けるため、まずは支援物資の提供希望者から事前に電話で申し込みを受け、後日、現地の態勢が整った時点で物品を受け入れることにしている。最寄りの自治体など公的機関に問い合わせてほしい。
ボランティア活動も同じである。余震の危険もあり現場に近づくことさえ困難を極める。福島県では原子力発電所の放射能漏れも発生した。ボランティアに回す水や物資もないのが現状であろう。
過去の震災では、現地組織が個人ボランティアの受け入れに忙殺され、結果的に活動の調整に手間取って何もできない人が少なくなかったという。個人の気持ちだけで現地に行っても、逆に被災地に迷惑をかけることになりかねない。
防災の専門家は、ボランティアの重要性を認めたうえで「単独行動では十分に役割を果たせない。自治体を中心にした支援態勢づくりも不可欠だ。団体行動を基本に、食事や宿泊施設も自ら整える自己完結型が望ましい」と言う。
いずれにせよ、効果的な支援をするには、自治体を中心にした情報収集や人材確保、必要な物資の調査など事前の準備は欠かせない。ならば、いまできる最も有効な支援策は何か。やはり、募金活動だろう。九州の自治体などでは、義援金の受け付けも始めている。
震災による原発停止などで被災地では電力不足の不安が高まっているが、ネット上では「直接効果は薄くても被災者の思いを共有する意味で(九州でも)節電し、その分を義援金にしよう」という声も高まっている。こうした助け合いの気持ちを、広げていきたい。
=2011/03/15付 西日本新聞朝刊=