東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の前代未聞の事故に、志賀原発を抱える県内でも「大丈夫か」と疑問視する声が相次いだ。市民グループは「脱原発」を訴える声明を発表。一方、義援金も集まり始め、能登半島地震を経験した輪島市では、被災地への物資輸送を準備している。【近藤希実、松井豊、宮嶋梓帆】
志賀町役場の3階にある生活安全課ではこの日、普段は会議室に置いてあるテレビを課のフロアに持ち込み、職員が朝からテレビニュースに見入った。福島原発の予想もできない大事故が次々と報じられると、一斉にざわつき、緊張感が走ったという。
「ひとごとじゃない」と漏らす男性職員も。職場には「志賀原発は大丈夫なのか」との問い合わせの電話がひっきりなしに鳴り続け、職員は終日、対応に追われたという。
市民グループ「命のネットワーク」事務局長の堂下健一さんと「原発震災を案じる県民」世話人の中垣たか子さんは15日、連名で脱原発政策への転換を国に迫る緊急声明を発表した。
声明では、福島第1原発の事故や、多数の住民が被ばくしたことを憂慮。「まさに原発震災が現実のものとなった」「明らかに人災」と訴えている。そのうえで「この危機的な状況に直面して、国の『エネルギー政策の転換』は喫緊の課題」で「今後、志賀原発1号機で始まったプルサーマル計画の断念を求めるだけでなく、一日でも早く脱原発を実現するための取り組みを、あらためて強めていく」としている。
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県内では志賀原発の周辺など10カ所で放射線を観測。県原子力安全対策室のホームページ(http://atom.pref.ishikawa.lg.jp)で10分おきに公表している。15日はいずれも0・04~0・06マイクロシーベルト程度で「通常レベル」(同室)という。
毎日新聞 2011年3月16日 地方版