2011年3月17日
震災救援活動/強力な「司令塔」再構築せよ
東日本大震災の被害が依然として広がっている。津波被災地では救援物資が届かず、東京電力福島第1原発では事故が相次ぎ危機的状態が続いている。一刻も早く事態を改善させねばならない。にもかかわらず、政府の対応は後手続きだ。救援活動の向上に強力な「司令塔」を再構築すべきだ。
一元化されない情報
危機管理は司令塔が最も重要だ。情報を一元化し、全体像をつかんで、高所から的確な方針を出し、危険度の高い問題から解決していく。そうでなければ、危機とりわけ複合的な危機に対処できず、人材をいくら投入しても烏合の衆になりかねない。それで司令塔をどう構築するかが危機管理の行方を左右するとされている。
ところが今回、その司令塔が見えてこない。被災地では自衛隊、警察、消防、医療関係者、地域住民らが総力を挙げて救援活動に当たっている。だが、食料や水、燃料、医薬品などが底をつき、低体温症で命の危機にさらされている人々も出ている。どの地域で何が不足しており、どんな救援が必要なのか、情報が一元化されていない。いったい誰が指揮を執っているのか、被災地の人々は不安を抱き続けている。
一方、福島原発事故では情報が錯綜している。官邸、保安院、東電がそれぞれ記者会見し、情報も二転三転した。1号機の爆発事故ではテレビ放映後、1時間も官邸に情報が届かなかった。1次情報を持っているのは民間企業の東電だ。国難の時に政府が民間企業に依存しているのは異様と言うほかない。ようやく政府と東電が一体で危機に対応する「事故対策本部」を設置したが、地震発生から実に4日後のことだ。あまりにも遅すぎると言うほかない。
1995年の阪神大震災では政府の初動が遅れた。これを教訓に自衛隊の自主的出動を可能にするなど法整備を図り、2004年の新潟県中越地震では初動は迅速だった。だが、救援・復旧で「震災関連死」が相次いだほか、仮設住宅の設置が遅れた。これは現地に司令塔が存在せず、対応が一元化しなかったからだ。
参考にしたいのは米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)だ。FEMAは緊急事態が発生すると、現地で司令塔を担う。大統領から出動命令が出ると、その地域一帯を“支配下”に置き、人命救助や避難所の設置、2次災害の防止など、あらゆる面で現地を仕切り、即決・即断で措置する。必要な資金を持参し、その場で支払って対応するほど迅速性に優れている。
今からでも遅くない。FEMAを見習って強力な司令塔を現地に立ち上げるべきだ。自民党は震災担当特命相の任命や官邸の指揮命令系統を原発対策と津波・震災対策の2系統に分離することを提言している。菅直人首相はこうした野党の声にも耳を傾けるべきだ。
首脳級の布陣で克服を
本来、非常事態宣言を発してしかるべき事態だ。地震発生から今まで防災大臣の影は限りなく薄い。首脳級の強力な布陣で指揮命令系統を再構築しなければ国難を克服できない。