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県民の安全確保 根本から対策見直すべき

(2011年3月18日午前7時14分)

 東京電力福島第1原発がコントロールできない状況に陥っている。県内に集中立地する原発はこうした巨大地震や大津波に耐えられるのか。西川知事は国に安全確保を求め緊急要請を行った。県民は立地以来、40年以上も不安を抱えてきた。対策を根本から見直す必要がある。

 福島第1原発は頼みの多重防護が破壊され、安全三原則は、かろうじて「止める」機能が維持されただけだ。県の緊急要請はまず、地震振動と津波による影響を検証するよう求めた。

 要請は、県原子力安全専門委員会が示した提言に基づいている。原因究明とともに、迅速な情報公開や防災対策の充実、耐震安全性の向上を求めた。原発の安全確保は国が一元的に責任を有するのは当然だが、県民の安全を守るのは自治体の義務である。「最後の砦(とりで)」は県であることを肝に銘じてほしい。

 今回の深刻な状況をみれば、国・政府の危機管理や迅速な対応力、電力側の当事者意識がいかに希薄かが明らかになった。たとえ自然災害であれ、その後の対応を間違えれば、「人災」になってしまうのだ。

 同委員会の中川英之委員長は事故後、日本原電敦賀原発1号機を視察した。福島第1原発1号機と同様、運転歴40年の古い炉型だが、非常用発電機の待機状態や津波対策などを評価。関西電力美浜原発も視察し、「耐震設計は最高レベル。想定外なことが起きても大丈夫」とお墨付きを与えた。しかし、本当にそう断じてよいのだろうか。

 県内の3事業者は2007年の新潟県中越沖地震で耐震安全性の再評価を迫られた。今回の巨大地震で施設やシステムにどんな影響が出ているのか、詳細検証はまだ手つかずだ。断層などの地下構造や過去の津波データからの判断だろうが、どういう事態が発生するのか、「想定外」を前提に再評価すべきではないか。地震リスクの大きい中部電力浜岡原発は8メートルの津波想定に対し、12メートルの防波壁を設置する計画を明らかにしている。

 県民の安心へ「原発は危険」というデータは少しでも持ちたくない。だがドミノ倒しのように多重防護が崩壊している。運転マニュアルや技術継承を含め、ハード、ソフトの両面から死角をなくしてほしい。

 事故発生時、住民の安全確保は最大の課題だ。放射性物質が200キロ以上離れた所で検出され、避難現象も起きている。大事故を前にして、これまでの原子力防災計画は無力に近い。県では国に防災指針の課題明示と新たな対策も求めた。今回、政府は避難区域を半径20キロ、さらに20〜30キロ圏を屋内退避と設定した。国指針に基づく県の10キロ避難想定はもはや実効性を持たなくなった。

 福島県では避難弱者が多数出ている。国が速やかに避難指示しても、誘導すべき災害現場の自治体職員数が足りず、避難道路、輸送手段も確保できない所が多い。行き場のない住民であふれ、しかも長期化することを覚悟しなければならない。

 多重防護は原発システムだけでなく、住民の安全確保にも求められる。国の避難指示にいくつもの疑問が出ている。県のモニタリングシステムを充実、強化し、正確な情報で、いち早い避難態勢を取る必要がある。

 原子力行政、安全対策に「大丈夫」という抽象的な言説が説得力を持たなくなった。本県は原発増設や長寿命化、リプレース(置き換え)、プルサーマル計画、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開など、多くの課題を抱えている。県民が納得するか厳しい環境になっている。

 原発事故の被害は必ず立地自治体に降り掛かる。苦しい風評被害にも襲われる。国の緩慢な対応に厳しい注文をつけ、住民の安全を第一にした対策を再構築すべきである。

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