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経済

道内経済に不透明感 輸出に悪影響必至 観光客減少に拍車も

(03/19 08:00)

 東日本大震災や福島原発事故で動揺する道内経済の先行きは、この一両日の為替レートの乱高下も重なり、さらに視界不良となってきた。国内の生産活動や消費に急ブレーキがかかる中、現在の円高基調が続けば、輸出企業の業績悪化や、外国人観光客のさらなる減少につながりかねない。ただ、一方では、大打撃を受けた東北地方の復興に向け、道内企業への期待も高まっている。

 円相場は17日、一時1ドル=76円25銭の戦後最高値をつけた。18日の協調介入によって急落したが、介入後も円高基調は変わっておらず、北海道銀行の松本則栄経済産業調査部長は「震災被害も含め、北海道の主産業である漁業などへの影響が大きい」と指摘する。

 常呂漁協(北見)は年間約4万トンのホタテを水揚げし、その約半分を輸出している。主な輸出先は干し貝柱が香港、冷凍貝柱が北米だ。同漁協の吉田恭総務部長は「夏から秋にかけて輸出が始まるので、それまでに円高が落ち着いてほしい」と懸念する。

 製品出荷額の約6割が輸出の日本製鋼所室蘭製作所は「今は様子を見るしかない」(総務グループ)。同製作所は原発用製品が好調で、今年までの5カ年で総額800億円の設備投資を実施。福島原発事故で新興国の原発建設計画にブレーキがかかり、業績に跳ね返ることを警戒する。

 旭川の家具メーカー、カンディハウスは「円高で欧米市場での競争力がそがれる。さらに進めば、厳しさが増す」と心配顔だ。

 「観光客の来道数が落ち込むなど、観光関係への打撃がすでに出ており、今後も心配だ」と話すのは、北海道二十一世紀総合研究所の斉藤正広調査部長。

 有珠山噴火(2000年3月末)が起きた2000年度、道外から道内への観光客数は前年度より6%減少した。今回の震災でも台湾や香港、韓国などからの観光客のキャンセルが増えている。斉藤部長は「原発事故が長引くほど、道内経済への影響が大きくなってしまう」と指摘、円高が続けば震災、原発事故による不安感に追い打ちをかけると見る。

 ただ、関東地方が電力不安を抱える中、震災復興には被災地に近い道内企業への期待が高まることは確実だ。東京商工リサーチ北海道支社の立花克則情報部長は「道内企業の多くは1ドル=80円台前半までは一定程度、織り込み済みのはず」とした上で、「復興需要の高まりとともに、建設資材や工事の人材需要が出てくる。積極的に対応していくことが重要だ」と話している。

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