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社説:危機管理と内閣 与野党総力態勢を築け

 東日本大震災発生から8日を経て、政府・与党に態勢強化を探る動きが浮上した。菅直人首相は谷垣禎一自民党総裁に副総理兼震災担当相として入閣を要請したが、自民党はこれを拒否した。

 原発事故への対処、被災地での救援活動に加え復旧・復興行政に政治が総力を結集する局面だ。通常の「大連立」と異なる危機管理として野党議員が時限的に入閣する方法などについて、与野党は引き続き接点を探るべきである。

 大震災以前、菅内閣は政権の存続すら危ぶまれていた。未曽有の災害を経て政治休戦に入り、与野党がおおむね協調をこころがけている点は評価できる。

 ただ、現在の国会は衆参両院の「ねじれ」状況を抱える。今回のような事態に際し、国会の構図が迅速な政策決定を妨げることは回避しなければならない。

 こうした状況を受け、首相は谷垣氏に入閣を要請した。2大政党による事実上の大連立体制を構築することでねじれ状態を解消し、安定した体制で緊急の事態に対処する狙いからとみられる。岡田克也幹事長は閣僚を増員する法改正について野党に協力を求めていた。

 議院内閣制の下で国会議員が政府に参加する場合、政党間の政策協定による連立合意が前提となる。自民党が谷垣氏入閣に難色を示すのもこうした理由からだろう。

 だが、国の存亡にかかわる重大局面では強力な政策遂行能力が必要だ。時限的な危機管理としてであれば、柔軟に対処すべきではないか。

 非常事態の際、最も重要なのは人材である。民主党は09年から政権を担うが、その運営に熟達しているとは言い難い。与党経験を持つ自民、公明などの議員をより積極活用すべきだ。首相が思いつきでなく真剣に態勢強化を考えているのなら、党首合意に基づき特例として野党議員が入閣する方法も探ってはどうか。

 今後は大型補正予算案の編成も課題となる。国家百年の計となる復興プランを与野党一体で策定しなければならない。幅広い合意を踏まえた政策立案のため、震災復興に向けた正式な与野党協議機関の発足を急がねばならない。

 一方で首相は19日、民主党の小沢一郎元代表ら代表経験者にも協力を要請した。この期に及んで党内で内輪もめをする愚を決して演じてはならないことは当然だ。

 国会では来年度予算と関連法案の処理を急ぐ与党と「子ども手当」などに反対する自民党の対立がなお解けていない。それぞれの主張にこだわるあまり危機管理に支障を来してはならない。与野党が力を合わせる環境を早急に整備すべきである。

毎日新聞 2011年3月20日 2時30分

 

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