【ワシントン共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は19日、福島第1原発事故の状況に精通した複数の関係者の話として、東京電力が廃炉を懸念したため原子炉への海水注入が遅れたと報じた。政府側の受け身の姿勢も事故対応の遅れにつながったと指摘している。
同紙によると、東京電力は地震発生の翌日となる12日朝、原子炉を冷やすために海水を注入することを検討した。しかし、実際に1号機に注入したのは、爆発があった後の同日夜だった。他の原子炉への注入を開始したのは13日以降だった。
事故対応に当たった複数の関係者によると、東電が海水注入をためらったのは長年の投資が無駄になることを心配したためだという。海水を入れることで、原子炉が再び使える可能性はほぼなくなる。
これに対して、東電の広報担当者は同紙に「施設全体の安全を考えて、海水を注入する適切なタイミングを見計らっていた」とコメント。一方で政府関係者の「この災害は60%が人災だ」との発言も紹介している。
また、1~4号機で原子炉や使用済み燃料プールが破損した後の16日になるまで、自衛隊は本格的な活動に参加せず、政府の対応も後手に回ったとしている。防衛省の広報担当者によると、東電側から支援の要請がなかったことが理由だとしている。