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東日本大震災:仮設住宅、課題は山積 建設用地の確保困難

日が暮れても急ピッチで仮設住宅の建設作業をする作業員=岩手県陸前高田市で2011年3月22日午後6時14分、宮間俊樹撮影
日が暮れても急ピッチで仮設住宅の建設作業をする作業員=岩手県陸前高田市で2011年3月22日午後6時14分、宮間俊樹撮影

 東日本大震災の被災地では、仮設住宅の建設が始まった。国は2カ月間で3万戸の仮設住宅を建設できるよう業界団体に要請している。だが、建設用地の確保が難しく、資材や人材の入手なども順調とは言えない。仮設住宅を出た後の恒久的な街や住まいの復興へ向けた検討も始まっているが、道のりは遠い。

 約8000世帯のうち7割以上が津波被害に遭ったとされる岩手県陸前高田市。市立第一中学校のグラウンドでは19日から、仮設住宅の建設が進む。県は約200戸を建設することを決め、まず36戸の建設に着手。1戸約30平方メートルで、入居は4月上旬になる。

 仮設住宅については各都道府県と業界団体のプレハブ建築協会が協定を交わしており、岩手県から8800戸▽宮城県から1万戸▽福島県から1万4000戸の建設要請があった。国土交通省によると、さらに栃木県から145戸、千葉県から230戸の要請が来たという。国交省は「阪神大震災(約5万戸)を上回る建設戸数となる」との見通しを示す。

 課題は山積している。宮城県住宅課の担当者は「建設に必要なあらゆる物が足りていない」。作業員の食料が不足し、宿泊施設も確保できず、着工のめどが立たない。村井嘉浩知事は22日、「2万戸以上が必要になる。建設場所や資材調達などの問題から、全被災者が入居するまでは半年から1年以上はかかるだろう」と説明した。

 岩手県は、なるべくコミュニティーを維持できるように県内で仮設住宅を建設する方針だ。それでも、建設に適した平地が少なく、建設計画の策定に苦労している。同県建築住宅課は「津波被害の跡地を除くと、広い土地は限られる。元の居住地から近い場所に建ててあげたいが、難しいケースも出てくるかもしれない」と話す。福島県は、原発問題が落ち着くまでは、県も被災者も、どう取り組めばいいかつかみかねているのが現状だ。

 プレハブ住宅のメーカーは、鉄骨や断熱材などの資材調達を急いでいる。だが、資材は不足気味だ。大和ハウスグループ(大阪市)は、宮城県大崎市の工場が被災して使えず、茨城県などの工場も燃料不足などでフル稼働できない。広報担当者は「当面の資材は確保できそうだが、建設戸数が増えた場合は、期日に間に合わない恐れもある」と話す。

 公共工事削減による建設業者の減少で、作業員や重機の不足も懸念されている。燃料不足も深刻で、プレハブ建築協会の担当者は「燃料不足にびくびくしながらやらないといけない」と話す。

 仮設住宅着工と同時並行で、「仮設後」の恒久的な住まい整備の検討も始まった。公営団地の建設などが考えられるが、公営住宅の建設は国と被災自治体とでつくる復興計画の中で位置づけられる。計画策定は復興後の街づくりとの兼ね合いや用地問題をクリアしながらとなり、阪神大震災でも仮設住宅の住民が復興住宅に移るまで5年を要した。

 国は「被災者はみな住んでいた場所に戻りたいはず。なるべくそうしてあげたい」と説明する。だが、「被災地は行政機能が壊滅的な被害を受け、仮設後の話を本格的に考えられる段階ではない」(国交省幹部)との指摘もある。【石原聖、樋岡徹也、福永方人】

 ◇避難住民、思い複雑

 復興を目指す自治体の実情はどうなのか。

 福島第1原発の事故を受け、全町民の約2割の約1200人とともに、町役場ごとさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)に疎開した福島県双葉町。井戸川克隆町長は「みんなで町に帰りたい。それが町民が共有している思い」と話す。

 31日に同アリーナの使用期限が切れた後は、埼玉県加須市の廃校に移る。だが、「その後」については、原発事故の行方が不透明なこともあり、対応を決めかねている。

 井戸川町長は「国が安全宣言し、自分たちでも安全を確認できた段階で考えたい。仮設住宅も検討する必要があるが、福島県内で確保するかも、まだ考えていない」と話す。

 避難した住民たちの思いも複雑だ。

 同町の農業、荒木信行さん(61)は自宅が津波にのみ込まれた。集落で残ったのは1戸だけ。「思い出もすべて流されてしまった」と肩を落とす。

 気がかりなのは放射性物質の影響だ。「家もトラクターも何もない。稲を植えても風評で売れないかもしれない。それなら双葉はもう捨てるしかない」。今後、横浜で暮らす長男(34)の元へ夫婦で移り住む予定だ。

 別の男性(60)は町に戻るか決めかねている。約30年間、福島原発の敷地で芝生刈りなどの仕事をしてきた。「原発がなくなれば仕事を失い、町を出ざるを得ない人が自分も含めたくさんいる。町は復興できるのか」。千葉にいる妹の元に身を寄せることも考えているが、仕事が見つかる保証はない。「どんな形でもいい。やっぱり地元に戻りてえ」【堀智行】

毎日新聞 2011年3月22日 19時58分(最終更新 3月22日 23時08分)

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