米軍や海外からの緊急援助チームが被災地に入り、懸命に活動してくれている。福島第1原発で消防、警察、自衛隊員、東京電力職員らが命懸けで原発災害を防ごうと闘っている。その献身は称賛に値する。
深刻な事態にあった同原発3号機への放水任務を終えて東京に戻った東京消防庁の緊急消防援助隊。19日夜に記者会見した幹部の一人が「隊員の家族に申し訳なかった」と声を詰まらせた様子から、彼らがさらされた危険の重大さをあらためて思い知らされた。
原発への出動をメールで妻に知らせた同隊の佐藤康雄総隊長は、「日本の救世主になってください」と一行の返信を受けたという。家族も重い覚悟を強いられただろう。
ニュースが刻々と伝える原発事故の状況はここ数日、膠着(こうちゃく)状態が続いていた。その膠着こそが、放射能汚染が拡散する原発災害をぎりぎりのところで食い止めている作業の結果であることを再認識させられる。
作業員の安全を守りながら、一日も早く危機的な事態が回避されることを祈ってやまない。
20日には宮城県石巻市で大震災発生から217時間ぶりに80歳の祖母と16歳の孫が倒壊したがれきの中から救出された。被災地に一筋の光が差すようなニュースだ。
被災現場での捜索や避難所での支援など、災害の最前線で体を張る職業人たちがいる。死者・行方不明者が2万人を超え、現地の惨状は想像を絶するだろう。
先週末にトルコ、南アフリカ共和国から救助隊が到着した。ロシアも第1陣に続き、第2陣を派遣した。19日までに16カ国・地域の救助隊が日本に入った。
米軍は「トモダチ」の作戦名で約6000人を投入、大規模な救援活動を実施している。在沖海兵隊もヘリ部隊を緊急派遣したほか、強襲揚陸艦が秋田沖を拠点に自衛隊の求めに応じながら補給支援に当たっている。
同盟国ばかりでなく、隣国の中国、ロシア、遠い欧州、南アフリカなど世界中から寄せられる支援と善意に感謝したい。国の別なく災害の最前線で使命感を胸に活動する救助隊員、兵士、民間ボランティアら全ての人に敬意を表したい。
ただ在沖米海兵隊が「普天間飛行場の死活的重要性が証明された」とアピールしているのは理解に苦しむ。災害支援を理由に現施設規模を維持する必要性を主張する。
普天間移設問題が日米間の重要な懸案であることを承知しながら、米軍当局が震災の政治利用を画策しているのなら、文民統制の観点から見逃せない。
それとこれとは別である。
ごちゃ混ぜにすると、災害の一線で使命感を持って「トモダチ作戦」に従事する兵士らに失礼だ。火事場泥棒に似た行為に兵士を巻き込むことになるからだ。
基地問題と絡める救援を被災者はどう受け止めるだろうか。震災の政治利用は厳に慎むべきだ。