ウランちゃんのなるほどアトム教室

原子力発電所では、大きな地震や津波に対してどのような対策がとられていますか。


アンサー
日本は世界でも有数の地震国です。そのため、原子力発電所の建設や運転に際しては、地震や津波に対して十分な対策が必要です。

まず、原子力発電所を建設する場合は、建設予定地やその周辺地域において、過去に大きな地震がなかったかなど地震歴を十分に調べ、さらに徹底した地質調査等を行い、地震の原因となる活断層を避けて建設予定地を決めなければなりません。

また、津波や台風による波浪や高潮に対しても同様に、建設予定地等の過去の観測記録を調査して、予測できる最大の津波でも発電所に影響がないように、海面から十分な高さをとって建てること、波浪についても防波堤を造ることなど、設計についても安全面に十分配慮する必要があります。

それでは、実際、どのような場所に原子力発電所が建設されるのでしょうか。

※施設の設計は、一般の建設物に必要とされる耐震基準の3倍となっています。

原子炉建屋は、かたい岩盤の上に直接建てられます。また、敷地の地盤は、満潮時の水位や津波の最高水位を考慮し、海面からの十分な高さを確保することが必要となります。

では、どうして、直接かたい岩盤の上に建てるのでしょうか。
それは、土などの地表部分に建てるより、地面を掘り起こして直接かたい岩盤に建てた方が、地震が起きても揺れにくいからです。さらに、設計段階でも、将来起こりうる最強の地震を想定し、これに耐えられるような設計をするなどの配慮が必要です。

また、運転中に発電所内の地震検知器が大きな揺れを感知した場合、原子炉を安全に自動停止するような仕組みが設置されていますが、そのひとつにトラブルが生じても支障がないように、複数設置されるなどの措置が講じられています。

津波対策について、もう少し考えてみましょう。
原子力発電所の運転には、蒸気タービンを回した蒸気を水に戻すための大量の冷却水を必要とするなど、大量の海水を使用していますが、津波が起きた場合は一時的に潮が引くため、海面の水位が下がり、結果として冷却水が送れなくなることも考えられます。運転中の原子力発電所に冷却水が送れないと、原子炉が冷やされないままとなり、安全をおびやかす要因となることがあります。

このため、津波の影響による引き潮の水位を考慮して設計され、津波の引き潮などで水位が低くなった場合でも、冷却水が確保できるよう取水口が十分に低い位置に設置されていますが、万一、取水口を下回る水位になった場合には、運転停止等の措置を講じることとされています。

原子力発電所の地震対策や津波対策については、新たな知見や技術、経験の蓄積を踏まえ、必要に応じて見直すなど、安全確保のさらなる充実・強化が図られる必要があります。


出典
原子力発電所の耐震安全性(独立行政法人 原子力安全基盤機構)
原子力図書館げんしろう(独立行政法人 科学技術振興機構)
原子力テレフォン質問箱Q&A(財団法人 原子力発電技術機構)