2011年1月31日 20時4分 更新:2月1日 0時11分
小沢一郎・民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る政治資金規正法違反事件で、検察官役の指定弁護士は31日、東京第5検察審査会の起訴議決(昨年9月14日付、10月4日公表)に基づき、小沢元代表を同法違反(虚偽記載)で起訴した。09年5月の改正検察審査会法施行後、政治家が市民の判断で強制起訴されたのは初めて。小沢被告側は全面的に無罪主張する方針。
今後は通常の刑事事件と同じ手続きで進められる。争点を絞り込むための公判前整理手続きが行われる見通しで、初公判は早くても夏前後とみられる。
元代表を起訴した大室俊三弁護士ら3人の指定弁護士(いずれも第二東京弁護士会所属)は会見し「可能な範囲で必要な捜査は尽くした。元代表側の防御態勢が整えば、迅速に裁判を進めたい」と話した。一方、小沢元代表の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は「早期に完全な無罪判決を得るため最大限の努力を払う」と語った。
事件を巡っては、東京地検特捜部が昨年2月、衆院議員、石川知裕被告(37)ら元秘書3人を起訴する一方、小沢元代表については「虚偽記載の意思や共謀関係を立証するだけの証拠はない」として容疑不十分で不起訴とした。これに対し、第5審査会は元代表の関与を認めたとされる石川議員の供述の信用性を認め、元代表が土地購入の原資として提供した4億円を隠すため、土地購入時に銀行から同額の融資を受け「偽装工作」を行ったと指摘。4億円の不記載も「犯罪事実」に含めて起訴議決をした。
4億円不記載は告発内容や1回目の議決の「容疑事実の要旨」には含まれていなかったことから、元代表の弁護団は「2回の議決を経ていない」と違法性を主張しているが、指定弁護士は起訴議決を尊重すべきだと判断して起訴内容に含めた。
指定弁護士は昨年10月22日、東京地裁に選任され補充捜査を実施したが、元秘書3人や小沢元代表への事情聴取要請は拒否された。1月中旬までに起訴の準備をほぼ終え、その後は公判に備えた作業も進めていた。
強制起訴は兵庫県明石市の歩道橋事故などに続き、全国4例目。裁判の行方は、検察の起訴の判断や制度の在り方を巡る議論にも影響を与える可能性がある。【和田武士】
小沢一郎被告は(1)元公設第1秘書の大久保隆規被告や元秘書の石川知裕被告と共謀、04年10月12日ごろ陸山会が小沢被告から提供された4億円で東京都世田谷区の土地を約3億5200万円で同29日に購入しながら、小沢被告の資金提供や土地購入の事実を同年分の政治資金収支報告書に記載せず、05年3月31日ごろ東京都選挙管理委員会を経て総務相に提出(2)大久保被告や元秘書の池田光智被告と共謀、土地購入を05年1月7日と偽って05年分の報告書に記載し、06年3月28日ごろ同様に提出した。
【ことば】陸山会事件 小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」が04、05年分の政治資金収支報告書に虚偽記載し、07年分でも元代表への4億円返済を記載しなかったなどとされる事件。東京地検特捜部は昨年2月に石川知裕衆院議員ら元秘書3人を政治資金規正法違反で起訴、元代表を容疑不十分で不起訴(ただし07年分だけ後日に不起訴)とした。東京第5検察審査会は04、05年分について元代表を「起訴すべきだ」と2度議決し、元代表の強制起訴が決定。一方、07年分は東京第1検察審査会が「不起訴不当」と議決後、特捜部が再び不起訴とし審査を終えた。