2011年1月29日 21時1分 更新:1月29日 21時10分
【ダボス(スイス東部)青木純】菅直人首相は29日、ダボスで開催中の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「開国と絆」をテーマに特別講演を行った。各国との経済連携を進める「第3の開国」の必要性を強調した一方、その過程で生じる格差への対処法として、不幸な人を社会全体で包み込む「新しい絆」の創造を訴えた。
首相の出席は09年の麻生太郎首相以来2年ぶり。約25分の講演は日本語で行った。
菅首相は日本の現状を「国民が内向きになっている」「この10年、経済連携で足踏み状態にある」と分析し「自由貿易こそ世界と繁栄を共有する最良の手段」と主張。日本と欧州連合(EU)の間で「今年こそEPA(経済連携協定)交渉を立ち上げたい」と呼び掛け、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は「6月をめどに交渉参加の結論を出す」と説明した。
国内農業への打撃を懸念する声には「日本の食文化の魅力が世界に広がることで農業は成長産業として再生できる」と強調した。
外交・安全保障分野では日米同盟を基軸にする考えを改めて表明。中国とあらゆる分野で協力関係を強化する考えも示した。
また、首相は持論の「最小不幸社会」に言及し、働くことで社会とつながる「居場所と出番を得られる。この絆を復活させる」と指摘した。
講演の結びでは、昨年、ノーベル化学賞を受賞した日本人2人に触れ、異なる物質を触媒で結ぶ「クロスカップリング」の技術を説明。「新たな絆で(社会を)つなぎ直す。私は日本、世界をクロスカップリングしていく」と表明した。