2011年1月29日 13時11分 更新:1月29日 14時1分
中学校を併設する東京都内の私立高校が募集を取りやめるケースが相次いでいる。中学からの募集だけにして中高一貫体制を整えるためだ。今春は海城高(新宿区)など3校が入試をやめ、全233校の約2割に当たる45校で入試が行われない。来春は東京女学館高(渋谷区)が募集しないことを決めている。人気を集める公立の中高一貫教育校や難関大学進学の実績を伸ばす都立の進学指導重点校への対抗意識もあり、公立復権を背景にした“都立校VS私立校”の競争に拍車がかかりそうだ。【遠藤拓】
今春から募集を取りやめるのは、海城高のほか東京純心女子高(八王子市)、富士見高(練馬区)の2校。
難関大への進学実績の高さを誇る海城高は昨年5月、高校の募集を取りやめることを公表した。同校の茂木雅之教頭は「知識を与えるだけでない教育をするためには、中学高校の計6年で生徒を見られる方がいい。20年前から考えてきた」と説明。さらに「都立の進学指導重点校など首都圏の公立校の取り組みも踏まえて総合的に判断した」と公立校への対抗意識も口にする。
東京純心女子高の原田泰宏教頭は「公立校が進学を重視するのは我々にとって脅威」と打ち明ける。また入試の倍率が低下傾向にあったことも一因という。入試問題作りや募集の労力の割に入学者は少なく「メリットは多くなかった」という。
都私学行政課によると、02年度は都内の私立235校のうち募集をしない高校は37校だった。その後増加傾向にあり、11年度は45校。12年度も東京女学館高が決めている。
一方、都教委も私立校を意識し「進学実績での公立復権」を目指す。難関大学合格者を増やすために、01年度以降、日比谷高(千代田区)や西高(杉並区)など7校を進学指導重点校に指定。日比谷高の東京大合格者は、01年度の3人が昨春は37人に伸びた。7校全体でも49人から83人と実績を上げている。
さらに公立の中高一貫校も次々設置され、10年度は17校。うち10校の今春入試の応募倍率は平均7・46倍(一般枠)と人気は高い。
中学受験に詳しい森上教育研究所の森上展安所長は「公立の進学指導重点校や中高一貫校で進学指導に力を入れれば、保護者の公立校への期待が膨らむ。公立校にとって確実に追い風だ。対抗する私学が『中高一貫』を徹底するのは経営戦略上、当然の動き。しばらくはこうした傾向が続くのでは」と話す。