エジプト:ムバラク大統領が演説 全閣僚更迭、退陣は拒否

2011年1月29日 11時28分 更新:1月29日 12時7分

エジプト国営テレビで緊急演説するムバラク大統領=2011年1月29日、ロイター
エジプト国営テレビで緊急演説するムバラク大統領=2011年1月29日、ロイター

 【カイロ和田浩明】反政府デモや騒乱で混迷しているエジプトのムバラク大統領(82)は29日未明(日本時間同日早朝)、国営テレビで緊急演説を行い、29日に全閣僚を更迭すると発表した。しかし、デモの参加者たちが求める自身の退陣は事実上拒否し、政治、経済改革を推進する方針を表明することで政権維持への強い意欲を示した。騒乱は「多くの国民に恐怖を与えており許容できない」とし、デモの拡大を抑え込む姿勢を強調した。25日に騒乱が始まって以来、大統領が公に発言するのは初めて。

 しかし、約30年に及ぶ強権支配に怒りを爆発させた国民を納得させられるかは不透明。28日にはデモ参加者の一部が政権与党本部を襲撃し、略奪も始めた。大統領は演説に先立ち、カイロなど3都市で発した夜間外出禁止令を全土に拡大、軍を投入した。AFP通信によると、28日までのデモの死者は少なくとも27人、負傷者数百人。

 演説は約12分間で、現内閣の総辞職と新内閣発足を表明。デモを「正当な表現の自由」と肯定しつつ、「法の範囲内で行われなければならない」と語り、「エジプトの治安の安定を守る」「必要な手段を取ることを躊躇(ちゅうちょ)しない」と強調した。

 国民が要求する民主化や雇用創出、貧困の改善や腐敗解消については、積極的な取り組みを約束。しかし、「問題は暴力や混乱ではなく、国民的対話でなければ解決できない」と語り、まず過激な抗議行動をやめるよう要求。騒乱の中心になっている若年層を「エジプトの最も価値ある存在」と持ち上げた。

 演説は、ナジフ首相ら政府幹部が表明してきた内容を基本的に踏襲したもの。改革内容は具体策が含まれておらず、政権の人権侵害の象徴として内外の批判の的になっている非常事態令への言及もなかった。

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