2011年1月28日 1時46分 更新:1月28日 11時34分
【ブリュッセル福島良典】北アフリカ・チュニジアの政変でサウジアラビアに事実上、亡命したベンアリ前大統領(74)と家族、側近らに対して、欧州連合(EU)が制裁措置を導入する方針を固めた。複数の欧州外交筋が毎日新聞に明らかにした。旧宗主国フランスをはじめとする欧州諸国は政変前までベンアリ政権を支えてきたが、民衆蜂起を受け方針を転換して民主化支援の姿勢を打ち出す。
31日にブリュッセルで開かれるEU外相会議で正式に決定される。制裁措置は、ベンアリ前大統領ら旧政権関係者がEU域内に保有している資産の凍結など。制裁対象者のリストなどの詳細は今後、詰める見通し。
欧州では既にスイスがベンアリ前大統領と家族の銀行口座などの資産の即時凍結を発表し、フランスもチュニジア関連の不自然な資産移動を監視。EUとしての決定が下されれば制裁措置が加盟27カ国に拡大される。
EUは、北アフリカなど近隣諸国の経済発展を支援する政策の一環として、チュニジアとの間で不法移民摘発やテロ対策、自由貿易などの協力を推進してきた。事実上、ベンアリ前大統領の抑圧政治に目をつむっていたことから、「欧州の沈黙」(ドミニク・モイジ仏国際関係研究所特別顧問)との批判を浴びた。
31日のEU外相会議に先立ち、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(EU外相)は民主化支援のメッセージを伝達するため、欧州対外活動庁(EU外務省)の担当局長をチュニジアに派遣した。