2011年1月27日 23時51分 更新:1月28日 9時3分
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債格下げに踏み切った背景には、菅直人政権が目指す税制抜本改革の実現性に対する強い不信感がある。
格下げの発表された27日夕、政府関係者は「民間の会社の評価なので(直接の)コメントは控える」(野田佳彦財務相)と平静を装ってみせた。国債の95%が国内で購入されていることから、政府内には「ただちに国債急落(長期金利は上昇)することはない」との見方も根強い。
だが、今回の格下げでS&Pは、民主党政権が昨年6月に打ち出した「20年度までに基礎的財政収支を黒字化する」との財政健全化目標や、11年度内の法案提出を目指している「税と社会保障の一体改革」の実現性に疑問符を突きつけた。参院で与野党が逆転する「ねじれ国会」下、消費税増税を含む財政再建に向けた超党派の合意を取り付けるめどが立っていないためだ。
一方、与謝野馨経済財政担当相は27日夜、BSフジの番組で「格下げは(消費税増税を)早くやりなさいという催促だ」と指摘。S&Pによる「外圧」を、消費税率引き上げの必要性を訴える材料にしたい考えも示した。
ただ、今回の格下げが、税と社会保障を巡る与野党協議を始めるきっかけになるとの見方は少ない。財政再建への取り組みが停滞し続ければ、ムーディーズなどほかの格付け会社にも格下げの動きが広がり、国債の信認は大きく揺らぐことになる。【坂井隆之】